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会計士も絶賛する「会計の必要性」が分かる本 帳簿の世界史

著者:ジェイコブ・ソール
出版社:文藝春秋 (2015/4/8)

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こんな人、こんなシーンにおすすめ

  • 会計記録を付けるのが面倒になっている不動産投資家
  • 将来自分で起業したいと思っている人
  • 確定申告を自分でやることに興味がある人

世界史興亡の裏には常に「会計」があった?

ビジネスだけでなく、国家ですら「会計」がその栄枯盛衰の重要な要素だったーー。
中世イタリアの大富豪ダティーニやフランス・ブルボン王朝の栄華の裏には、綿密に記録された「会計帳簿」の存在があったのです。
特にフランス・ブルボン王朝はその厳格な会計システムを維持しているうちは栄えたものの、その後は「面倒くささ」から会計記録を大幅に簡素化しました。その結果、国家財政は破綻し国民に重税を課したあげく、フランス革命により王朝は滅びました。
その他、新興国家アメリカや日本がどうして急速に列強諸国に追いつけたかの理由として、会計の存在に言及しています。

鬱陶しいが役に立つ、ビジネスにおける「苦い薬」が会計

正直、この本は少し難しいです。
ただ少しでも会計をかじったことがある人が読めば、非常に興味深い良書だと思います。実際私の周りの同業者である会計士たちはこぞってこの本を絶賛していました。
フランス・ブルボン王朝にはコルベールという複式簿記を完璧にマスターした有能な会計顧問がいました。彼は時には国王が耳をふさぎたくなるような会計報告も即座に冷酷に行ったため国王はイライラしていましたが、彼の存命中ブルボン王朝は最盛期を迎えます。そして彼の死後、ようやくこの「苦い薬」から解放された国王は、国家財政を無視した政策を次々打ち出して滅亡に向かうのです。
これは会社経営にも通じるものがあります。率直に言うと、会社において「経理」は嫌われ者です。 営業が必死でとってきた契約についてその現金回収のタイミングの遅さをネチネチ何度も聞いたり、汗だくになりながらの外回りでかかった経費を申請しても「本当にこれは必要だったのか?」と厭味ったらしく聞いたりと損な役回りになります。
ただ先述のブルボン王朝のように「経理」なき会社は暴走により滅亡するだけなのは明確なので、この「嫌われ役」は会社にとっての必要な「苦い薬」だと言えるのです。
これは不動産投資でも同じ。
帳簿を付けるのは面倒ですが、これをちゃんとタイムリーにつけないと、必要な修繕をいつ行うことがもっとも得なのか、融資を受けるためにはあらかじめどういう備えが必要なのか、などが分からなくなります。
「会計は苦いけど良薬」というビジネスの常識を事例を持って改めて痛感させてくれる良書なので、会計士という立場からもぜひ多くの人にに読んで欲しいと思います。

書籍の評者



野瀬 大樹
公認会計士・税理士

大手監査法人にて、株式公開支援業務や法定監査業務などに関わった後に独立。会計や税務に関するセミナーを多数行うほか、日本企業のインド進出を支援する法人を設立し代表も務める。

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野瀬 大樹