中村亨のビジネスEYE

残業時間短縮 アフター5変革

BUSINESS EYE

残業時間の上限規制など働き方改革関連法が施行されてまもなく1年が経とうとしています。

6千万に達する働く人々のワークスタイルの変化は、大きく2つに集約されてきています。

・東京では繁華街に人が流れる時間が早期化
・目減りする残業代を補うため副業サイトへの登録者数は右肩上がり

空いた時間を使い「自分磨き」にいそしむ人も増えているそうです。

今回の【ビジネスEYE】では、データを通して働き方改革の余波を読み解いていきましょう。(参考:日本経済新聞/2019年11月21日)

残業時間短縮で人の流れが変わった?

厚生労働省の「毎月勤労統計」によると、残業にあたる所定外労働時間は2019年8月まで前年同月比で14カ月連続で減ったそうです。
実際の人の流れの変化を、携帯電話の位置情報をもとに推計したデータがあります。

◎平日午前11時台を「100」とした場合の、午後7時台の人口(500メートル四方、居住者を除く)

オフィス街:大手町
・2017年4月 56.4
・2019年4月 55.4(1.0ポイント減)

繁華街:歌舞伎町
・2017年4月 181.5
・2019年4月 184.2(2.7ポイント増)

この集計方法、筆者は大変面白いと思っているのですが、NTTドコモ傘下のドコモ・インサイトマーケティングによる「モバイル空間統計」を使って集計したデータです。オフィス街と繁華街で明暗が分かれていますね。

企業が早帰りを推奨するなか、以前より早い時間帯に帰宅したり、繁華街に流れたりする動きの変化が見て取れます。

一方で、昼はカフェ、夜はアルコールも提供する飲食店では夜のカフェ利用が増えていて、結局業務量は変わっていないのではないかという懸念も指摘されています。

上記の飲食店では今年7~9月の午後6時以降の客数において、前年同期より1%増えたが、アルコールではなくカフェの利用が増えたため「会社帰りに仕事の残りなどを済ませる利用客が増えているのでは」と分析できるためです。

企業が旗を振って働き方改革を推進しても、業務量が減らないという働き手の悩みはまだまだ根強く残っているということではないでしょうか。

残業時間短縮でアフター5に変革のきざし

転職口コミサイトのオープンワークによると、月平均残業時間は2012年の46時間から2018年に28時間に減ったそうです。残業時の時給を1500円として単純計算すると、月の残業代は2万7千円ほど減ったことになります。

大和総研によると、働き方改革の影響で削減される残業代は2019年度に2.1兆円に達すると試算されています。
一方で削減した残業代を社員に還元する企業はまだ少ないため、残業代が減ってしまって生活費が厳しくなる…そう頭を抱えている人もいるでしょう。働き方改革によって柔軟な勤務体系となり、自由な時間ができて喜んでばかりもいられない人もいるということです。
 
懐を温めつつ、新しいキャリア形成にもつながる副業をしようという会社員が増えているのはいい傾向ではないでしょうか。
そんな副業希望者を多く集めているクラウドソーシング大手のクラウドワークス社では、登録会員が2019年に前年比35.8%の増加、2016年からは約3倍となったそうです。

副業だけでなく資格試験や生涯学習へ挑戦する人も増える傾向にあるといいます。
一人ひとりがやりがいを持って働き、生産性を高めることも働き方改革の柱の一つです。空いた時間を前向きなスタンスで使っているとしたら、働き方改革の柱の一つは成功に近づいていると言えるかもしれません。

一経営者としては、社員全員がいきいきとやりがいを持って働ける文化を創り、それに磨きをかけていくために社員とのコミュニケーションにはより関心を寄せていきたいと思っています。社員の強みに気づけるような環境をつくっていきたいですね。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。