中村亨のビジネスEYE

不動産価格の市況予想

BUSINESS EYE

国土交通省は2020年3月18日に公示価格を発表しました。
商業・工業・住宅の全用途平均が1.4%のプラスと5年連続で上昇しています。

公示価格が上昇した要因には、低金利による住宅購入者の増加やインバウンド効果によるホテル開発、オフィス・商業施設の開発が進んだことなどが挙げられるでしょう。

発表された公示価格には、新型コロナウイルス感染拡大の影響は加味されていません。
ですが、感染拡大の終息時期が見えず、またオリンピックの延期が決まった今後は、不動産市況の変動は避けられません。

今回のビジネスEYEでは、今後の不動産価格の市況予想と対策について考えたいと思います。

■公示価格とは?

公示価格とは、地価公示法に基づいて国土交通省の土地鑑定委員会が毎年公示する1月1日時点の1㎡当たりの標準地の価格のことです。

この価格は一般の土地の取引価格に活用されるほか、金融機関の担保評価、企業が保有する土地の時価評価の基準としても活用されます。

世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染拡大を受け、緊急事態宣言を発表したのが1月31日です。日本にウイルスの影響が出始めたのは2月頃ですので、今回の公示価格に反映されませんでした。

■不動産価格の今後の推移は?

結論から述べますと、不動産価格は下落傾向に進むと思われます。

理由の一つ目は、不動産需要の低下です。
ホテル、交通インフラ、アミューズメントパーク、百貨店など、インバウンド効果の恩恵を受けていた業界が、今後の不動産市況に影響を及ぼすことが考えられます。訪日外国人の増加により、ホテル開発や商業施設の投資が盛んであった状況から一転し、急激な訪日外国人の減少で、倒産に追い込まれる企業が増加することが予想されています。

事業や雇用が不安定になると、住宅購入者は減少し企業は投資を抑制します。そうなると不動産価格は購入検討者の枠を広げる為に価格を下げて公募することとなり、この状況が長続きすると不動産価格は下落傾向に進むと思われます。

二つ目の理由は、企業による投資の抑制です。
これまではインバウンドの効果によって、土地が高値で取引されていました。その主導権を握っていたのがホテル業界ですが、新型コロナウイルスの影響で今後は業績不振や事業計画が見直され、不動産購入に抑止が掛かると思われます。

結果としてこれまで上がり続けた価格が抑制され、2016年前後の高騰前の価格まで下がってくるのではないでしょうか。

■リーマンショックと比較すると?

今回と似た状況で2008年にリーマンショック(金融危機)がありましたが、当時は懸念していたほど価格は下落しませんでした。

その理由は、新築マンションを供給する不動産デベロッパーが、銀行からの資金融資が縮小されたことで相次いで倒産し、新築物件の供給が減少したためです。

ただ、今回の新型コロナウイルスは金融危機という訳ではありません。

リーマンショック時は銀行が貸し渋りを行い、不動産価格が下落しました。
今回の新型コロナウイルスでは、住宅の購入需要の減少と、取引価格を引き上げてきたホテル業界の投資抑制、それらにより不動産価格は下落方向に進むと思われます。

リーマンショック時は金融から、新型コロナウイルスは経済から、それぞれ異なる観点で不動産価格に影響を及ぼします。

■今できる対策とは?

では、今後の不動産価格の下落を予測した上で、今できる対策は何でしょうか。

ご売却を検討されている方は、資産価値を再確認し、過度な値下げをしないことが重要です。新型コロナウイルスの終息時期は不明ですが、不動産価格の下落は緩やかだと思われます。

雇用不安や業績不振により入居者から賃料の値下げ交渉が入る可能性はありますが、賃料交渉を受けて、利回りを良くするために過度な値下げを行って売り急ぐことは、自ら資産価値を低下させる結果となる可能性があります。

ご売却を検討されるのであれば、資産価値を認識したうえで、価格を決定させるのがよろしいかと思います。
 

また、ご購入を検討されている方は、数年前よりも価格が安いからと言って、安易に購入する事はお勧め致しません。優良物件は相場の悪い時には売却されないため、値崩れが始まると本当に価値のある物件は市場に出回りにくくなります。購入時はその不動産の持つ価値や、購入後の活用方法を確認し、慎重に選ぶことが大切です。

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オリンピックが1年延期となり、不動産市況の取り巻く環境もまた少し変化があるかも
しれません。新型コロナウイルスの早期終息によっては好転する可能性も否定できません。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。