中村亨のビジネスEYE

路線価上昇時の相続対策

BUSINESS EYE

中村 亨の【ビジネスEYE】です。

2020年7月1日に令和2年分の路線価が発表されました。
国土交通省が今年3月に発表した公示価格の全国平均は5年連続で上昇しており、公示価格の8割程度を目安とする路線価は、その影響で今年も上昇する結果となりました。

上昇率のトップは沖縄の10.5%、次いで東京の5%、宮城、福岡4.8%となっております。今年も路線価の上昇に伴い相続税・贈与税への影響は多大なものであると予想されます。

路線価は公示価格同様に1月1日が評価基準の為、新型コロナウイルスの影響は反映されていません。ですが、国税庁は今秋公表される基準地価において広範な地域で大幅な下落が確認された場合には、20%以上の下落が確認された地域を指定して路線価等を補正する方針であることを明らかにしています。

今回のビジネスEYEは、路線価が上昇した際の贈与・資産の組替えを活用した
相続対策についてお話したいと思います。

■路線価のわずかな上昇も財産へのインパクトは多大

路線価が上昇すると財産にどのようなインパクトがあるのかシミュレーションをしてみます。例えば、路線価が前年比5%増加した場合(都内)では…

昨年:相続税評価額 40万円×200㎡=8,000万円
             ↓ 
今年:相続税評価額 42万円×200㎡=8,400万円

上記のように相続財産が400万円増加する結果となります。わずか5%の上昇ですが、評価すべき財産が多いと、そのインパクトも多大なものとなってきます。

ただ、路線価上昇=デメリットのイメージをお持ちになるかも知れませんが、取引市場では同時に、公示価格・取引金額も上昇しているケースもあります。この際に収益性の低い不動産を売却し、資産の組み換えや現金化を図る事は今後の事業改善、納税対策、承継対策を行う上で有効的な相続対策の一つです。

■路線価上昇に備えた相続対策

相続税は亡くなった時点での所有財産の合計に対して課税されます。プラスの財産が多ければ相続税の負担も大きくなりますので、負担の軽減を望む場合には、相続を迎える前までにそのプラスの財産を小さくする必要があります。

この効果を生かすための生前贈与と、資産の組替えを活用した相続対策をご紹介致します。

◆①暦年贈与を活用する◆

贈与には1人当たり年間110万円までは贈与税が掛からない非課税の枠があります。これを上手く利用することで相続財産を減らし、また、贈与税を回避した財産移転を行うことが出来ます。仮に親族5人それぞれに現金110万円を贈与したとすれば年間550万円分財産を移転する事が出来ます。

生前贈与による節税効果を確認します。

相続税は財産が多くなるほど税率が高くなる累進課税の仕組みを採用しています。税率は10%から最高55%まで段階的に上昇します。シミュレーションの結果、相続税の税率が50%だった場合、その税率の範囲内で贈与を行うことで効果的に財産を移転することが出来ます。

例えば現金500万円を贈与した場合の贈与税は、約48.5万円です。

500万円-110万円(非課税の枠)=390万円
390万円×15%(贈与税の特例税率)-10万円(控除額)=48.5万円

複数人に贈与を行うことで低い税率で多くの財産移転が可能となります。

【暦年贈与の注意点】
・3年以内に贈与者が亡くなった場合、相続税の対象になる。
・同じ時期、同じ金額を数年贈与した場合、定期贈与と判断され贈与税の対象となる。

◆②相続時精算課税制度を利用する◆

この制度は60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子又は孫に対し、2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができる制度です。ただし2,500万円を超えた部分に対しては、一律20%の税率で贈与税が掛かります。区画整理前の土地や駅前の商業用地のような路線価が上昇する可能性が高い土地を、この制度を活用し生前贈与する事で、路線価が上昇した場合でも対応する事が可能です。

【精算課税制度の注意点】
・暦年贈与に戻すことができない。
・この制度を活用すると贈与税の申告が必要になる。
・贈与者が死亡した際は贈与時の価格で相続税の対象となる。
・小規模宅地等の特例が使えない。

◆③資産組替えを活用した相続対策◆

自宅の土地は諸条件が整っている場合、小規模宅地等の特例を活用する事で、大きな評価軽減を受けることができますが、活用ができない場合には評価を下げる術がありません。

ご自宅の土地が広ければ広いほど、相続税を上げる要因になるケースがあります。そこで、現在住んでいる自宅を売却し、駅前近くなどの分譲マンションに住み変える事で、相続税を低く抑える事が出来ます。

 
<現在住んでいる自宅を売却し分譲マンションに住み替えるケース>
分譲マンションは一軒家と違い、広くて大きな土地・建物を、多くの居住者と持ち合う為、1人当たりの持分が少量になります。

ここで、一軒家と分譲マンションの相続税評価を比べてみます。

条件:土地100㎡、建物評価1,000万円 路線価40万円、分譲マンションの世帯は10世帯とします。

【一軒家の場合】
100㎡×40万円=4,000万円(土地評価)
4,000万円+1,000万円=5,000万円(相続評価)

【分譲マンションの場合】
100㎡×40万円÷10(世帯数)=400万円(土地評価)
1,000万円÷10(世帯数)=100万円(建物評価)
40万円+100万円=500万円(相続評価)

上記の様に同じ条件であっても所有者が多くなる事で評価額には大きな差が生まれます。
ご自宅を売却する際に多額の現金を取得したとしても、大きな乖離が生じる為、相続税は下がり、代わりに現金が手元に残るケースもあります。残った現預金については納税資金や分割の資金として活用する事も可能でしょう。

上記の例は戸建てを分譲マンションへ組み替える内容ですが、収益性が悪いアパート・マンションを売却し、分譲マンションへ組み替える方法も可能です。

加えて手元に残った現預金は生命保険を活用し相続人一人当たり500万円まで非課税枠を利用して納税資金対策を検討する、受取人を指定して遺留分対策へ活用する事も有効な手段です。

◇◇‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

贈与や資産組替えを行っているお客様はここ数年で多く見受けられます。
新型コロナウイルスの影響で路線価がどの様になるか不透明ですが、相続税対策と納税対策を合わせて検討する事は不可欠ではないでしょうか。まずはこの機会に現状の相続税を把握されることをお勧めいたします。

路線価改定があった月はこのようなシミュレーション依頼が増えています。日本クレアスグループは初回無料にて相続に対するご相談を承っております。相続対策でお悩みの方は是非一度ご相談ください。

◆お問合せ先◆
日本クレアス財産サポート
◎電話:03-0393-3263
◎お問合せフォーム:https://creas-zaisan.com/free-consultation-form/

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。


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