中村亨のビジネスEYE

『完全子法人から配当を受け取る際の注意点』-税務トピック

BUSINESS EYE

中村亨の「ビジネスEYE」です。

2020年11月11日の日本経済新聞の記事によると、会計検査院が完全子法人から受け取る配当等について源泉所得税の還付額及び還付加算金が多額になっているため財務省に制度の見直しを求めているという報道がありました。

同報道では、会計検査院の2017年~2019年度の調査で上記のような完全子法人株式等にかかる配当を受け取った親法人のうち、実際に支払われた「還付金」は合計で8,898億円にのぼり、これに係る「還付加算金」は3.6億円に達したと伝えています。

今回のビジネスEYEでは、このような完全子法人株式等に係る受取配当等の税務上の取扱いと注意点についてご紹介します。

■配当金に係る源泉徴収制度とは?

100%支配されている完全親子関係にある法人間で、その子法人から親法人に配当金等の支払いがあった場合には、所得税の源泉徴収を行う必要があります。

その源泉所得税の金額が納付する法人税額を超える部分については「還付金」として、申告時に還付請求を行うことになります。この還付金には利息的性格を有する「還付加算金」が還付金本税分と一緒に税務署から入金されることになります。

■会計検査院が求める改善の内容

そもそも完全子法人株式等に係る配当については原則、受取配当等の益金不算入制度から、その配当等の全額が益金不算入の税務調整を行い、この部分については法人税が課税されないものとなっています。

会計検査院はこのような課税対象外となっている配当金に所得税の源泉徴収を行わなければ、前述のような多額の「還付金」や「還付加算金」が発生しないとして、源泉徴収制度の改善を求めたとしています。

■源泉徴収制度の今後の動向

実務上はM&Aなどにより、完全支配の子法人となる株式等を取得し、上記のような受取配当等の非課税、源泉所得税の控除による還付、及び利息的性格の還付加算金を受けることで、税務上の優遇が大きくなっているのも事実であると思われます。

会社規模が大きくなればこれらの金額規模も大きくなるため今後何らかの制限が入る可能性が考えられます。

■完全子法人から配当を受け取る際の税務上の注意点

完全子法人株式等に係る配当等を受ける際には、上述の通り「受取配当等の益金不算入」により、受け取る配当金はその全額が原則益金不算入(非課税)となります。

ただし、配当等の額の計算期間(前回の配当等の額の支払いに係る基準日の翌日から今回の配当等の額の支払いに係る基準日までの期間)の開始日から末日まで継続して親子間に完全支配関係がある場合に限ります。

つまり、期の途中で子会社株式を全株取得に至った場合には、取得1期目にかかる配当については、配当計算期間のすべての期間において継続して完全支配関係にないため、原則の全額益金不算入(非課税)をとることはできず、配当等の金額の一部が益金算入(課税)となることになるため注意が必要です。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。