中村亨のビジネスEYE

不動産の名義変更制度が変わる-相続登記の義務化について

BUSINESS EYE

相続に関するお問い合わせの中でも、土地の名義変更のお悩みは特に多く頂いています。
相続登記には期限がないことから、過去何代にわたって登記の変更がされておらず所有者がすぐには分からない「所有者不明土地」が実は多く存在しているのです。

この所有者不明土地は、将来の国土問題にまで発展する大きな課題を抱えており、相続登記制度が義務化される改正が行われることが決定しています。

今回のビジネスEYEでは、相続登記の義務化についてそのポイントを解説します。

■「相続登記」の現状

土地や建物といった不動産には必ず「不動産登記簿」が存在し、地目や地積、所有者の情報や持分、抵当権に至るまで様々な情報が登録されています。その中でも所有者の方が亡くなったため、その方の持分が相続人へ移った事を証するために名義を書き換えることを「相続登記」と言います。

しかし現行の法律ですと相続登記は義務ではないため、手間や登記費用等を惜しんで多くの方が手続を行わず、「所有者不明土地」が増え続けてしまっているのが現状です。

■「所有者不明土地」の増加が起こす問題

所有者不明土地について、国や自治体目線で考えると、
・【公共用地として取得したい】が、所有者が分からず国土としての利用ができない
・【災害対策の工事が必要】だが、所有者が分からないため工事が進められない
このような問題が実際に起こっています。

また一般の個人同士でも、例えば
・【空家を売却】したい
・公共事業のために【土地を有効活用】したい
・【建物の経年劣化】が進み倒壊の危険がある
・【草木が生い茂って近隣住民に迷惑】が掛かっている
このような場合に、所有者が確定できないため手続や対処ができず、また無断で立ち入る事もできないので結局はそのまま放置される、というケースが存在します。

さらに深刻なケースとしては、数代に渡って相続登記がされていない場合、被相続人となる方が不動産の持分を仮に有していたとしても、登記簿謄本にて持分を確認することができませんし、そもそも持分を有していたのかどうかさえ分かりません。そうなると正しい相続ができなくなり、後々の相続税申告にも影響を及ぼしてしまいます。

■「相続登記の義務化」のポイント

国土交通省の調査では、日本全国に存在する所有者不明土地の総面積は410万ヘクタール、なんと九州を上回る面積と報告されています。

「所在者不明土地」の問題は国や自治体だけではなく、個人にも悪影響が広まり、経済や国土維持などの方面への影響が危惧されているのが現状ですが、今後も増加し続けることが懸念されることから、「相続登記の義務化」が2021年2月10日の法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議において決定されました。政府は2024年までに施行する方針を示しています。

今回の改正で大きく変わるポイントは下記の通りです。

①相続等で不動産を取得することを知った日から3年以内に相続登記の手続を行うこと
②3年以内に手続を行わなかった場合、10万円以下の過料の対象となる
③遺産分割が纏まらず、3年以内に手続が出来ない場合には、相続人であることを法務局に届出し、仮登記を行わなければならない
④上記仮登記を行った後、遺産分割が成立し不動産の所有権が確定した場合には遺産分割確定日から3年以内に手続を行わなければならない

【相続・贈与問わず、不動産取得の要因を知った日から3年以内に手続をしなければならない】相続登記に期日が課せられます。そして怠った場合は10万円以下の過料を科されてしまいます。

■過去に相続した不動産の手続について

では、過去の相続に関して「相続登記の義務化前に未登記だった場合はどうなるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃると思います。

施行前に未登記であった場合についても義務化の対象となります。「施行日」又は「不動産取得の要因を知った日」のいずれか遅い日から3年以内に手続を行わなければなりません。

また「遺産分割のポイント」で述べているように、遺産分割が纏まらない等の事由によって期限内での手続が困難である場合は、相続人であることを法務局に届出をすれば3年以内の義務を免れる制度も新設されます。

但しこれは一時的に義務を免れる制度です。あくまで「謄本上の所有者が亡くなった」ことを法務局に届け出る手続であり、最終的に相続登記を行う義務自体は無くなりませんので、その後遺産分割が確定した日から3年以内に相続登記を行わなければならないため注意が必要です。

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相続登記は義務化が行われることによって、相続と切っても切れない関係となります。現在、相続登記を放置されている状態でもこの法改正が行われれば、いつかは相続登記を行わなければいけません。期限を過ぎてしまうと最大で10万円の過料も科されることになりますので注意が必要です。

日本クレアス税理士法人では相続税専門チームによる生前の贈与や節税、遺言書作成、相続発生後の申告書作成は勿論のこと、相続登記等のアフターフォローも行っております。まだ施行まで時間はあるものの、先延ばしをしている間にも本来の相続人が亡くなってしまい、実際に手続を行う際にスムーズに進まない可能性もあります。

そういった状況を避ける為にもまずは何をすればいいのか、実際に手続をする際には何が必要なのか等、些細なことでも構いません。ご相談は無料で承っておりますので、
まずはお気軽にお問合せください。

<お問合せ先>
日本クレアス税理士法人
電話:03-3593-3243
お問い合わせフォーム:https://creas-souzoku.com/free-consultation-form/

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。


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