中村亨のビジネスEYE

マイカー通勤とマイカーの業務上使用に関する注意点

BUSINESS EYE

中村亨の「ビジネスEYE」です。

新型コロナウィルス感染防止のため、マイカーによる通勤を認めることとしたという声を人事担当者の方から伺うことがあります。

マイカー通勤は感染リスクを低減できる反面、企業にとっては管理を怠ると法的リスクが発生します。

今回のビジネスEYEでは、マイカー通勤とマイカーの業務上使用に関する注意点について見てみましょう。

マイカー通勤中の事故における会社の責任

マイカー通勤中の事故については会社に責任はないと思われがちですが、従業員の不注意による事故であっても、場合によっては
民法715条「使用者責任」と自動車損害賠償法第3条「運行供用者責任」を根拠に損害賠償請求をされ、人身事故等の重大事故では高額となることもあります。

裁判例ではこれらの責任の有無を、主にマイカーを業務に使用することを会社は認めていたか、マイカーをどの程度業務にて使用していたか等により判断しています。

  • マイカーの業務上使用を禁止し、通勤以外には使用していない場合
     ┗「原則として、会社の責任は問われない。
  • マイカーの業務上使用を認めており、実際に業務にて使用していた場合
     ┗「原則として、会社も一定の責任を負う。
  • マイカーの業務上使用について特に定めていない場合
     ┗「マイカーの業務使用の継続性・頻度」
     ┗「会社がマイカーを業務にて使用していたことを知っていたか(黙認を含む)」
     ┗「ガソリン代・駐車場などを供与していたか」等により総合的に責任の有無を判断。

そのため、マイカー通勤を認める場合には、交通事故が発生する可能性があることを前提に、損害賠償リスクを減らすための労務管理を行う必要があります。

マイカー使用に関する労務管理

マイカー使用に関する労務管理のポイントは、ルールづくりとそれに基づき適切に運用することです。

マイカー使用に関するルールは、「車両管理規程」「マイカー通勤規程」等の規程にて主に次の内容を定めます。

  • 許可要件
     ┗会社が定める対人・対物の補償基準を満たした「任意保険」への加入義務
  • 申請書類と手順
     ┗「運転免許証」「自動車検査証」「自賠責保険・「任意保険の保険証書」
      の提出(年1回など定期的に確認が必要)
  • 使用範囲の明確化
     ┗業務での使用許可の有無
  • 事故時の対応手順
     ┗救護、110番通報、会社への報告等
  • 遵守事項
     ┗交通法規遵守、運転中のスマホ使用の禁止、
      飲酒運転禁止のほか運転に支障のある服薬時の運転禁止等
  • 手当の支給、費用負担
     ┗通勤手当、ガソリン代、駐車場等の費用負担
  • 責任範囲
     ┗事故やトラブル発生時の会社の責任範囲

通勤や業務で使用する車両に関する安全運転管理者等の選任

法的リスク軽減のための規程作成以外に、会社に対する法的義務として安全運転管理者の選任があります。

道路交通法では自動車を5台以上(乗車定員11名以上のものは1台以上)使用している事業所は、安全運転管理者を選任し、公安委員会へ届け出ることが定められています。

安全運転管理者の選任対象となる車両とは、会社所有のものだけではなく、業務上使用するリース車両や私有車も含まれるため、マイカー通勤を認められている従業員の車両を通勤のみでなく業務上使用している場合は注意が必要です。

なお、安全運転管理者の業務内容は、道路交通法施行規則により次のとおり定められています。

  1. 運転者の適正等の把握
  2. 運行計画の作成
  3. 交替運転者の配置
  4. 異常気象時等の措置
  5. 点呼と日常点検
  6. 運転日誌の備付け
  7. 安全運転指導
  8. 酒気帯びの有無の確認及び記録の保存(令和4年4月1日施行※
  9. アルコール検知器の使用等(令和4年10月1日施行※

 
※飲酒運転防止対策の強化によるもの

リスク回避型の就業規則の整備は多くの企業にて進められていますが、マイカー通勤に関しては見落しがちです。

マイカー通勤を導入又は検討されている場合には、法的リスクや法的義務を踏まえ、改めて規程の整備や既存規程の内容確認をご検討されてはいかがでしょうか。

<問い合わせ先>
日本クレアス税理士法人
電話:03-3593-3236
お問い合わせフォーム:https://j-creas.com/contact/

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。


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