中小監査法人の選別進む?
BUSINESS EYE
中村亨の「ビジネスEYE」です。
以前「ビジネスEYE」の中で、監査法人を大手から中小法人へ変更する動きが活発化していることを取り上げました。
※ご興味のある方はバックナンバーを是非ご覧ください。
「シェア2割突破-高まる中小監査法人の存在感(Vol.540)」
一方で、身の丈に合わない量の監査を引き受けるなどずさんな監査体制で行政処分を受ける中小監査法人は少なくありません。
今回のビジネスEYEでは中小監査法人の上場企業の監査の現状と、品質の確保に向けた業界の取り組みを見てみましょう。
(参考:日本経済新聞2022年4月6日)
中小監査法人の役割は増している
上場企業を監査する中小監査法人は約120あり、その中には100人超の規模の法人がある一方、個人事務所を開き共同で監査をするケースもあります。
公認会計士・監査審査会の報告書によれば、監査法人を大手から中小法人へ変更した件数は21年6月まで1年間で前年の2倍以上となり、監査人交代は3年連続で増加しています。
大手監査法人は手数料などのコストが高く、実際に交代理由では「報酬」「監査対応と監査費用の相当性」が全体の半数以上を占めています。
シェアでは大手が7割弱を占めているものの、中小法人のシェアは拡大傾向が続いています。
行政処分が相次ぐ
中小監査法人では、近年行政処分に至る事例が相次いでいます。直近では21年8月に原会計事務所が1ヶ月の業務停止命令、20年11月には大手門会計事務所が5ヶ月の業務停止命令を受けています。
経営陣の意識の問題はもちろんですが、企業との癒着が起きやすい、身の丈に合わない量の監査を引き受けている、といったことも背景にあるようです。
登録制を定め、情報公開の強化へ
金融庁は公認会計士法を改正し、これまで自主規制の枠組みにとどまっていた
登録制を法律で定める方針を打ち出しており、2022年度内の施行を目指しています。さらに情報開示などを強化し、監査の品質向上や透明性の担保の徹底を図る方針です。
登録制が厳格運用されれば中小監査法人の選別は進んでいくことが予想され、企業が自らに適した監査法人を選びやすくなり、財務情報の信頼性も高まります。
ただし、自主規制の枠組みとして登録制を運用している会計士協会が16年度以降に登録を取り消したケースは2件しかなく、実効性には懐疑的な見方もあります。
会計士協会がいかに登録制を厳格に運用できるかが、自浄作用を発揮できるかどうかのカギになるでしょう。