
学生時代の生活というのは、小さな湖で手こぎボートに乗っていたようなもの。何もせず優雅に漂っていても、あまり波風が立たない湖面ではまったく問題ありませんでした。
しかし卒業後は、社会という大海原に出ることになります。
社会人になるまでは、周りに境遇や価値観が似ていた人が多かったかもしれませんが、これからみなさんは、学生時代に比べて交友関係が広がります。そこでは、本当にさまざまな生き方や考え方を持った人たちと出会うことになります。
何の前知識もないまま社会に出るというのは、波が強く潮の流れも速い「外洋」に手こぎボートで挑むようなものかもしれません。
そんな状況ではいつ波に飲まれて、溺れてしまってもおかしくないでしょう。
社会という名の外洋でも強く生き抜くためには、どんなあやしい商法やトラブルがあるかを知ることや、それらにどう対処していったらいいかを学ぶことです。
そうすれば、あなたの手こぎボートは、大きくて安全なエンジン付きの船へと進化するのです。
法律で規制されている6つのあやしい商法
商品やサービスを販売する方法には、お店での販売や通信販売のほかに、家庭を訪問して販売する「訪問販売」、電話で勧誘する「電話勧誘販売」など、多様な種類があります。
その中には怪しいもの、明らかな詐欺もあり、それぞれの販売方法をよく理解して消費者として適切な行動を取る必要があるでしょう。
訪問販売やマルチ販売などの商取引を規制するための法律が「特定商取引法」です。同法では「訪問販売」「通信販売」「電話勧誘販売」「連鎖販売取引」「特定継続的役務提供」「業務提供誘引販売取引」の6つが規制の対象とされています。
特定商取引の6形態の
トラブル例と解決法
■ 訪問販売
【トラブル例】
・「無料で水道の点検をする」と言って、点検後に料金を請求する
・デートに誘うようなふりをして、高額な商品を買わせようとする
【解決法】
・あいまいな返事はせず、きっぱり断る
・契約してしまったらクーリングオフ(中途解約や返品)をする
(違約金が決められていても、実際にサービスを受けた分以外は全額返金を受けられる)
■ 通信販売(インターネットショッピングを含む)
【トラブル例】
・出会い系サイトで「無料登録」と書いてあるのに、実際に登録したら料金を請求された
・ネットオークションで商品を落札したが、届いてみたら説明とは大きく違う商品だった
【解決法】
・迷惑メールや架空請求はとにかく無視する
・心配な場合は、消費生活センターに相談する
■ 電話勧誘販売
【トラブル例】
・電話で通信講座などを勧誘し、「過去に受講した講座が終わっていない」などと、契約しなければならないと勘違いさせるような勧誘をしてくる
・電話で断っているのにしつこく勧誘を続ける
【解決法】
・あいまいな返事はせず、きっぱり断る
・「非通知設定」などにして電話を受けない
・契約してしまったらクーリングオフをする
■ 連鎖販売取引(マルチ商法、ネットワークビジネスなど)
【トラブル例】
・友人から「儲かるビジネスがある」と誘われ高い入会金を払って入会したが、まったく儲からない
・知人に化粧品を勧められ契約した後、やはり断ろうと思ったが、何時間も説得されて断れなかった
【解決法】
・勧誘を目的にファミリーレストランなどに誘い出すことは「違法行為」なので、きっぱり断る
・クーリングオフをする
・消費生活センターに相談する
■ 特定継続的役務提供(語学教室、エステティックサロンなど)
【トラブル例】
・エステで無料体験を受けた後、長時間勧誘され、契約後、中途解約を申し出たら、違約金を要求された
・英会話教室に入会したが、当初の説明と実際の授業内容が大きく違った
【解決法】
・クーリングオフをする
・契約するつもりがなければきっぱりと断る
■ 業務提供誘引販売取引(内職商法など)
【トラブル例】
・「自宅で簡単にできる仕事」に申し込んだが、事前に料金を払って資格を取得する必要があり、実際には仕事もほとんどなかった
・「モデルになれる」と勧誘され、登録料やレッスン代などを要求されたが、実際に仕事はもらえなかった
【解決法】
・契約してしまった場合でもクーリングオフをする
ここで出てきたクーリングオフなどの消費者を守る制度については、この後詳しく説明していきたいと思います。
また、人間には欲があるので、儲けたいという思いが強すぎると話のあやしさに目をつぶってしまうこともあります。自分の欲望をコントロールし、確かな目でものごとを見分けることが肝心です。
入社1年目でも「知りませんでした」は通用しない
社会人なのに知っておくべき常識を知らないまま過ごすのはリスクが高いといえます。誰かに言われなくても、自分で勉強しましょう。