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ネット界の怪事件「TikTok」と「快手」の躍進

インターネット業界の成長が鈍化していると言われる中、ショート動画プラットフォームの「TikTok(ティックトック)」と「快手(クアイショウ)」だけは好調に成長を続け、業界の「怪事件」だと言われています。

いずれも中国ショート動画の大手であり、ユニコーン(時価総額1100億円を超える非上場企業)が運営しています。
TikTokを運営するBytedance社が上場目前と報道されており、一歩リードしているようにも見えますが、2社の競争が業界に明るい話題をもたらしていることは明白でしょう。

今回の【ビジネスEYE】では、TikTokと快手の躍進の秘密に迫ってみましょう。(参考:日本経済新聞/2019年6月12日)

(1)TikTokと快手の一騎討ち?

成長が鈍化しているインターネット業界にあって、ここ数年で急速に成長しているのがショート動画アプリです。

中でもBytedance社(北京字節跳動科技)が運営するTikTokは、日本を含めた世界150か国で使用され、中国だけでもダウンロード数は5億人と、中国版Twitter・微博(ウェイボー)に次ぐプラットフォーマーに成長しました。
日本でも、若年層を中心に華やかなダンス動画で視聴数を集めているので、ご存じの方もたくさんいらっしゃることと思います。

TikTokが世界展開や大都市でのユーザー獲得に力を入れているのとは正反対に、快手を運営する北京快手科技は、展開を国内に特化。
国際的な知名度はほとんどないものの、中国国内では先に事業を始め、ダウンロード数は7億人を超えています。
地方都市や農村部を積極的に開拓し、動画を通じた電子商取引でBytedance社を猛追しています。

一見地味とも捉えられる快手ですが、建機操作や農村の暮らしを披露する動画に人気があり、独自のAI(人工知能)が一定の閲覧数に達した動画をあえて目立たなくする手法で、あらゆる動画が均等に目に触れる工夫をしているそうです。これによりユーザー層やトレンドの異なるTikTokとの棲み分けができるため、長期的に共存共栄していける―

というのが、躍進の屋台骨だったというわけですね。
人気のあるものから上位に表示されるのではなく、趣向を凝らしたAIの使い方が功を奏したのでしょう。

(2)シルバー市場開拓という価値

2社の躍進には、新たな市場開拓という価値をもたらしたという功績もあります。

中国の「インターネット視聴発展研究報告」によると、40歳以上のユーザーのショート動画アプリ利用率が2018年6月から12月までの半年間で12%増加し、中高年のネットユーザーが急速に拡大しているそうです。

中国の一人っ子政策時代の父母が老年生活に入り、かつてのシルバー世代の“質素倹約”の消費感や消費習慣が、より個性化、多元化の方向へと変化し、消費自体に積極的になっていることが要因の一つと考えられています。

拡大したユーザーからシルバー世代のインフルエンサーが生まれ、動画を通じた購買行動が盛り上がったこともあり、シルバー市場規模は57兆元(1元=約15円)にも上ります。

2社の存在が、ステレオタイプで保守的といった、シルバー層に対する既成概念を変える新たな潮流となり、市場のポテンシャルを発掘したと言えるのではないでしょうか。

(3)まとめ

中国では、Facebook、Twitter、LINE、InstagramなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やGoogle、YouTubeなども規制によって使用できません。自国のインターネット関連企業育成のために、敢えてのガラパゴス化を選択したと言われています。

その中で成長発展を遂げてきたTikTokと快手の軌跡を見るに、やはりマーケティングにはソーシャルメディアが欠かせないことがわかります。送客という切り口では、2015年からFacebookがGoogleを上回ったという調査結果も出ており、検索エンジン不要論まで囁かれているほどです。

一時期「ネットサーフィン」というワードが流行りましたが、今は興味関心のあるアカウントや友人とつながったソーシャルメディア上にボートを浮かべて寝そべっているだけで、自分にとって面白いと感じるありとあらゆる情報が、向こうからどんどんやって来てくれる時代になったのですね。

情報が自分のほうへ向かってくる世界になっても、こちらが先に興味関心を示さないことには何も得られません。そこはまだ生身の人間の領域であり、人間がAIなどのテクノロジーをコントロールすることの重要性が浮き彫りになったと言えるのではないでしょうか。

中国のインターネット業界の潮流から、学ぶ点は非常に多くあったと感じました。

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著者プロフィール
中村 亨

コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング代表。公認会計士。
監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005 年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング(現日本クレアス税理士法人)を設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。

日本ファイナンシャルアカデミー株式会社監査役、 一般社団法人金融学習協会理事。


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