アラフォーOLが
不動産投資デビュー
してみた。

【Story15】不動産投資の金消契約で初心を思い出す

不動産投資の金消契約の事前準備

年が明けて2019年になった。昨年末にTブラザーズから金融機関のラスボスは「キンショー契約」と聞かされていた。

これは正しくは金消契約のことだ。こう書かれても私は「かねけし・・?金を借りたいのに、なぜに金を消す??」と腑に落ちない気分だった。さらに略さずに言うと「金銭消費貸借契約」という、かなり舌っ足らず泣かせの名称の儀式だ。
これは金融機関と最終的にローン融資を結ぶ契約だ。 自宅の住宅ローンの時の記憶を辿ってもそれほど緊張感が高い儀式とも思えなかった。ネットで色々調べると「金消契約で内容が覆ることはほぼない」らしい。(なかには、「その期間に転職した」や「追加でごっつい車のローンを組んだ」などで頓挫するケースもなくはなかったが)
どちらかというと、ものぐさな私は「当日お持ちいただく書類セット」がかなりプレッシャーだった。例えば「自宅の固定資産税の納税証明書」などだ。
普通の人は納税の際の領収書なども保管しているのだろうが、過去を振り返らないワイルドな私はその手の書類は即ゴミ箱行きだ。また「住民票」「印鑑証明書」などの本人確認系の書類も揃えなくてはならない。

私は重い腰を上げ、少し時間がある時に区役所〜税務署巡りをすることにした。(ちなみに、同じような名称の税金関係の証明書でも「区役所(市役所)」と「税務署」と「都税事務局」など取得先が分かれており、私は大層混乱した。もっと愛らしい名称で覚えやすくしてくれればいいのに。。。)

なお、私はこのような「書類取り寄せツアー」のお供として、ヤフー不動産アプリの「地図から探す」機能を愛用している。
例えば区役所は最寄りの赤坂見附駅に行く。その後、徒歩で麻布にある税務署に行く。その過程で、アプリの地図上に現在売買に出されている物件が表示されるのだ。
単なる「面倒くさい役所への道」が、とたんに「港区ステキ物件ツアー」に早変わりする自分なりの工夫だ。
場所柄、買えるあてもないのだが「なるほど、2億と5億の物件はこんな感じで外観の格が違うのか」や「港区で2000万以下のワンルームはここまでくたびれた感じなのか」など、見る目を養う練習にはなる。また、飲食店などが多いエリアのため「老舗寿司屋◯◯が入っている区分物件」などの商業店舗系物件も多い。居住系のオーナーチェンジではなく、飲食店に貸し出しをしたままのオーナーチェンジだ。
絶対に買えない数億の物件と、絶対に行けない「カウンターに座るだけでウン万円」という寿司屋を見上げながら、「そうか〜、寿司屋も手に入るのか(いや、違う)」と夢を膨らますのもなかなか楽しい。


不動産投資の金消契約当日

さてさて、金消契約はバッチリ書類も揃えて行った。無駄に印象を良くしようと常にアルカイック・スマイルを浮かべつつ、無事に小一時間ほどで儀式は終了した。

初めて借金するゼロの多い契約書を見ながら、ふと「こんな数千万もの大金を私の口座に振り込んで、私が気が変わって宝石とか買いまくったらこの銀行はどうするのだろう」とか心配になった。
が、前回の決済契約を思い出すと買主口座から売主口座への着金は多くの人が見守る中、その場で速やかに執り行われる。私の下心が滑り込む隙間はプロセス上ナッシングだ。「まあそうだよな〜。」と思いつつも、やはりここでも「信頼」に基づいて大きな取引が行われる不動産のレトロな世界を感じるのだった。

既に本部承認も下りているので、先方の担当者と課長も前回会った時より和やかな雰囲気だった。時期的に1月頭だったということもあり、「◯◯県(その地銀の本拠地の県)で初詣で有名な神社はどこなんですか?」など世間話を交えながら、二人との距離を縮めていった。
というのも、今回は仲介のTブラザースの紹介・口聞きでY銀行の融資を受けることができたが、今後はTブラザース以外の案件も持ち込む可能性があるからだ。
場が温まってきた頃合いを見計らい、私は無邪気に「今後も良い物件が見つかったら、直接審査の申込みをしていいか」と尋ねた。お二人は「もちろん」と快いお返事をくれるとともに、「あんまり購入スパンが短いと本部から目をつけられるから、半年は期間を空けた方がいい」などとアドバイスまでくれた。

融資審査を受ける前は初経験ゆえ変に怯えてプルプルしていたが、これは相手にとってもビジネスなのだ。さらに加えて、相手も人間だ。ビジネスとして相手へのメリットを示し、なおかつ人として良好なコミュニケーションを取っていれば、何も恐れることはないのだ、と新入社員のようなことを思った。


過去へのプレイバック

金消契約は夕方付近に設定していたので、銀行の応接を出る頃には私の大好物なトワイライトタイムに空の色は変化していた。

偶然なのだが、銀行の隣のビジネスビルのオフィスに私は社会人1年目〜2年目まで勤務をしていた。営業職だったので、毎日泣きべそをかきながらアポ取りの電話をしたり、飛び込み営業をして獲得した名刺の数が少ないと先輩に叱責された日々を懐かしく思い出した。

あのハナミズ垂らしていた私が20年後に隣のビルで不動産投資の融資を受けることになるとは、到底想像もしていなかった。いや、その頃だけではない。つい最近まで似たようなことを思っていた。
同じ一つの会社にずっと勤めていたため「もっと上のポストに」と自分の見えている視界だけの延長線上にある未来を自然に考えてしまっていた。お恥ずかしながら「不動産投資」はトランプ大統領などの一部の富豪が行うものと思っていたくらいだ。
つくづく一年半前に「不動産投資スクール」の体験学習会にふら〜っと参加した奇跡を思った。あの90分がなければ、今ここで金消契約を行った私はいなかったのだ。

かの坂本龍馬も言っている。「人の世に道は一つということはない。道は百も千も万もある。」と。社畜時代にには考えもしなかった道に歩みだした縁や不思議を実感した。
と同時に、トランプタワーに負けじとマツコタワーをぶち建てるかもしれない愉快な未来を、新年らしく空想してみるのだった。