アラフォーOLが
不動産投資デビュー
してみた。

【Story13】初体験となる金融機関の融資面談

不動産の価格交渉が初めて成功する

Tブラザーズ のサポートのもと、2018年の12月には「大森」「阿佐ヶ谷」の融資目的の2物件の不動産売買契約が着々と進んだ。(Tブラザーズの出会いについては第10回参照)

しかも前回の現金買いの時に失敗した価格交渉が今回は2物件とも成功した。大森は端数切りで「950万→900万」に、阿佐ヶ谷にいたっては「900万→820万」まで価格を下げることができた。
交渉材料は今回はアラ探し系ではなく、またもや「物件のここが気に入った」という具体的ラブレターを添えるとともに、あくまで自分の事業計画上「収益率を◯%に持っていきたい」ということを素直にお伝えした。今回は売主が「おじいちゃん大家さん」と「フランスにいる老女」と聞いていたため、この手の青臭さアピール作戦の方が効果あるのかな〜という下心があったのだ。(が、実際はそこが効いたかどうかは分からない。いずれにしても交渉を通してくれたことで、私のTブラザーズへの信頼はますます高まった)

いっちょ前感が漂う「交渉成立」というぴかぴか輝くカードを手にした気分で、私は少し自信をつけて次のステップに進むことになった。

初めての金融機関の融資面談

そしていよいよ初体験のステップである「金融機関との面談」が年末に行われることになった。地銀大手のY銀行だ。

金融機関というのは物件の価値評価に加え、本人の「属性」というものを重要視する。この世界に踏み込んで初めて知った「属性」という基準。言葉だけ聞くと無機質なようだが、不動産投資界で使われる「属性」は非常にウェットな要素があるように私は感じた。
金融機関によって重視する項目は違うのだが、「年収」や「金融資産」などの資産系バックボーンに加え、「転職回数」や「家族構成」や「居住地」なども含まれることもあり、まさに日本の歴史ある投資ならではのモノサシに思われた。

つまり、投資対象である「物件の価値」に加え、もしかするとそれ以上に「その人に返済能力があるか」という点を重視するのだ。例えば「転職回数が多い=持続性が足りなさそう」という観点で本人を値踏みするものが「属性」と私は捉えていた。
「そんな過去の不動産投資と関係ない部分で評価するのはヒドいなぁ」と思うものの、「お金を貸す」プロなので、独自の積み上げてきた基準もあるのだろう。と、謙虚に心構えをしておいた。

なお、私は持続性ウンヌンではなく面倒くさがり屋ゆえ、先程の「転職回数」などの項目にはほぼ引っかからない。そのせいか、元々の書類審査時で「融資期間は耐用残年数」&「金利1.9%」となかなかの好条件の提示を受けていた。

しかしこの面談でどう覆るか分からない。
一度も融資審査を受けたこともないピヨピヨ投資家の自分は、シロート印をポンっとおでこに押されて「はい、また経験積んでいらっしゃ〜い」とドライに追い返されるかもしれない。気を引き締めた私は程よい決め感の淡い色のスーツ(ガチの紺色スーツだと頭の硬いお局と思われそうなので)で新宿のY銀行の応接に向かった。

先方の応接室では担当者と課長の2名が待ち構えていた。
挨拶をするなり私は「いや〜、天井が高くて素敵な会議室ですね」や「お二人もいらっしゃっるとは。お時間いただき嬉しいです」と尻尾をパタパタさせてラポールに挑んだ。
※なお「ラポール」とは臨床心理学の用語で、フランス語で「架け橋」という意味だ。主にコミュニケーションの世界で相手との良好な信頼関係を築く状態を意味する。
転じて、私の勤務先のようなハードな営業企業では、初めての顧客とのアポイントの際に「最初の3分はなんでも目ん玉に入ったものを褒めちぎって、相手をエエ気分にさせろ」というちょっと間違った活用をしている。

私のハイテンションを尻目に、お二人は私が事前に提示した金融資産に嘘偽りがないかなど、事務的にチェックをしていく。
たとえばインターネットバンキングにその場でPCを使ってログインをさせたり、勤務先の所在地を確認したり、などだ。また、驚いたことに申請用紙に手書きで記入した文字の本人確認なども行っていた。
「開運の筆跡鑑定でもしてくださるのかと思いました、えへ。」と、お茶目な熟女を装っても、場の空気はクールそのものだ。それほど大真面目に「こいつのエビデンスは本物か」をチェックしているのだ。

さすがに担当者の方も「私たちもこんな疑うようなことしたくないのですが」と申し訳なさそうにしながら、昨今は不動産投資で世間を賑わす事件などが起こっている関係で厳しくせざるを得ない、と説明をしてくれた。

一通り作業的なチェックが終わったあとは、「マツコさんはなぜ不動産投資をやろうと思ったのか」などの定性ヒアリングに移った。
「よしゃ!キタ!!」と思い、私は姿勢を正した。投資キャリアのピヨピヨ減点を補う加点ポイントはこの手の印象評価しかないと、その時私は思い込んでいたのだ。
内心の昂りを抑えながらも、「はい、元々18歳で上京してきた時から賃貸住まいで」とバリトンボイスで落ち着いて語り始める。不動産投資との運命の出会い・馴れ初めなどの浪花節もスパイスとして加える。それだけではなく、物件選びの基準には数値情報を交え、投資家として冷静と情熱のあいだ的なバランス感覚もそれとなくアピールする。クライマックスは徐々に声をソプラノに近づけながら「ゆくゆくは不動産事業を通じてこんな目標を描いている」というビジョンを語る。この時はやや姿勢も前のめりで、程よい身振り手振りなどの動作を交えるのも忘れない。気分は往年の名女優!

…ってなんの話だっけ。あ、そうそう。融資面談。
お二人はウンウンと相づちをうちながら聞いてくれた。融資の面談でこんなパッション全開で夢物語を語る人が珍しいのか「投資を始めて4ヶ月でそこまで熱くなれるのはすごいですね」とビミョーな発言で締めくくって、約1時間の面談が終了した。

「どへ〜、疲れた。おでこテカテカ」と、しゃべりすぎて喉が乾いた私は思わずコンビニでビールを買って、近くの広場で喉を潤した。寒かったが、忘れないうちに今日の面談内容をベンチに座ってPCに打ち込んだ。
こうして内容を振り返ってもヌカりはない。初の融資面談にしては上出来なんじゃないか!?とすら思えた。こうしてビールを流し込んでいる場所も、先程の行員との鉢合わせを避けるために2ブロックほど離れた広場だ。全くヌカりがない。パーフェクトだ。・・・と酒の力でどんどん気が大きくなっていた。

融資条件の通達

1週間後、Tブラザーズから「金利が1.5%で本部最終承認が下りた」とさらに有利な条件になったことを聞かされた。審査基準はブラックボックスなので、条件変更の理由はTブラザーズにも教えてもらえないらしい。
ただ、Tブラザーズいわく、「弊社が携わったこの1年のなかで一番良い条件です」とのことなので、私も面談で必死にツバを飛ばしたかいはあった・・・のかもしれない。

お次は銀行との最終ステップ「金消契約」だそうだ。
「了解です!キンショーですね!」と勢いよく返事をしたはいいが、これも未経験なので「ラスボスは殺虫剤の仲間みたいな名前なのだな」と心のなかでおマヌケなことを思っていた。