中村亨のビジネスEYE

サブスク戦国時代

BUSINESS EYE

JR東日本の飲料自動販売機事業を行う子会社が、10/1に日本初の自販機のサブスクリプションサービス(サブスク)をリリースすると報じられました。

毎月最大2,480円を支払うことで、1日1本、対象の自販機から飲物を受け取れるサービスとなっています。
仮に30日間150円の商品を受け取れば、合計4,500円となり、本来よりもかなりお得に利用することができますね。

このように、定額料金を支払って商品やサービスを継続利用する、サブスク型のビジネスモデルが脚光を浴びています。

今回の【ビジネスEYE】では「サブスク戦国時代」と題して、今後を見通してみましょう。

(参考:日本経済新聞/2019年8月6日)

1.今や「サブスク3.0」デジタルから「モノ」「コト」利用へ

サブスク型のビジネスモデルの語源は、もともとは新聞などの定期購読を指す英語「subscription(定期購読、加入、賛同などの意味)」です。
事前に支払う金額の上限が把握でき、気軽に使い始められるというのが、メリットの一つと言えるでしょう。

今や多岐にわたるサブスクは、基本的には下記のようにサブスク1.0~3.0の3つに分類することができます。

▼サブスク1.0

「商品の購入」に対し定額料金を支払うサブスク
(例)新聞の定期購読や牛乳配達など

▼サブスク2.0

「商品の利用」に対し定額料金を支払うサブスク
(例)音楽配信(Spotify、Apple Music)、動画配信(Netflix、Hulu)
書籍(dマガジン、Kindleアンリミテッド)など

▼サブスク3.0

「商品の消費」に対して定額料金を支払うサブスク
(例)コーヒーなどの飲食、英会話など

「1.0」は製品そのものやサービスに同じ金額で継続的に課金してもらう「月額定額制」を指しますが、
「2.0」以降はさらに踏み込んで、顧客の必要としているものや顧客満足度に注目しているところに違いがあります。

料金プランをいくつかに分けて利用権の範囲を変える、休止可能にする、無料お試し期間を入れて顧客のニーズに答えるなどして、いかに顧客との関係性を継続していくかがサブスクを成功させる要になると言われています。

「所有」から「利用」を軸にすることにより、勝ち組となったのがアメリカのMicrosoftです。
売り切り型からサブスク型のソフトウェア展開へシフトしたことにより、2019年6月期の売上高と純利益は過去最高を更新しました。

2.戦国時代をサバイブするには?

流行りに乗ってか、大手企業の参入が相次いでいますが、その一方で、サービス乱立による競争激化で撤退を余儀なくされるケースも目立ち始めました。
Microsoftのようにうまくいくのは、今後稀となるでしょう。

サービス利用だけでなく、モノの分野であれば商品在庫や配送網などの管理が必要であるため、ユーザーが増えた際のコスト増にどうやって対処できるかがカギになってきます。
損益分岐点を的確に見極める必要があるということですね。

好事例として、衣料品レンタルのエアークローゼット社の名前が挙げられます。
会員数は25万人を超える、日本最大級のサービスに急成長した企業です。
その強みは、膨大なレンタルサービス利用データから各顧客の好みを分析して作るカルテ。
カルテからスタイリストが顧客一人ひとりに服を選び、服を発送する仕組みです。

デジタル分野でのデータ分析と、生身のスタイリストが服を選ぶという行為が、うまく融合した点が成功への道だったのではないでしょうか。

デジタルやIT、AI(人工知能)を導入することはもはや避けられない状況ですが、デジタルやIT、AIでは担えない部分をどう工夫するべきなのか
担えない部分を付加価値として、顧客との継続した関係性を追求していく必要があると思います。

新聞などの定期購読から始まったサブスク。
決して新しいサービスではないものの、既存のビジネスを様変わりさせたという意味でも、引き続き注目していきたいですね

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。