人生が変わる お金の大事な話

【Story12】資産を作るためのタネ銭の作り方

とはいえ、生の知識だけでは十分ではない。投資に対する能力には経験も必要となる。
そして、能力は知識と実践を通して磨かれていくものなのだ。
だから、お金を増やしたいなら、まずはお金や投資についての正しい知識を身につけ、次に経験を積む必要がある。


いつか星さんから、
「少し余裕ができたら、自分のお金をリスクにさらしてみるといい」
と言われたとき、僕は頭ではわかっていたが、ようやく体感できた気がする。それは起業するという投資経験を積んだからだと思う。
資産を作るのは、まるで雪ダルマを作るのに似ている。


雪ダルマは最初、手のひらに載るような小さな雪の玉だ。
まず芯を作る。これを大地に下ろし、積もった雪の上で転がし、だんだん大きくしていく。大きくなるにつれ加速度的にますます大きくなっていく。やがて人一人では動かせないほど大きくなる。
資産を作るためのタネ銭作りもそれと同じだと思う。
最初にある程度の資金を貯め、それを元手に投資商品に投じていくことで、元手を増やしていく。


だが、貯めるような余裕資金はないという人も中にはいる。そういう人はまず、自分の金銭感覚や生活の仕方をおさらいしてみる必要がある。
過去には、僕も収入以上にお金を使ってしまうことがあった。
自分の金銭感覚のなさや、お金についての知識の欠如に気づいた。そんな僕に星さんは、本多静六氏の『私の財産告自』と『私の生活流儀』という本を薦めてくれた。
本多氏は、江戸時代末期に生まれ、明治。大正。昭和を生きた大富豪だ。
彼は、元手(タネ銭)作りについて自著の中で、「4分の1天引き貯金」というのを勧めていた。


手取り収入の4分の1を目安に天引きして貯金をし、それを積み立てていって将来の投資資金にする。残りの4分の3は生活費にあてるという方法だ。
余ったものを貯金に回そうとしても、それは難しい。天引き貯金で大切なことは、急な出費があっても、それには手をつけないこと。
こうして続けた貯金はいつのまにか増え、それなりの投資が始められる額にまでふくらんでいるという仕組みだ。本多氏はこう言っている。
「貯金なくして投資なく、利殖なし」
まさにそのとおりだと思う。これも習慣、つまり貯金するという生活習慣を身につければ何のことはない。元手は作れる。
タネ銭を作れない、できないという人は、その時点でもう資産作りをあきらめてしまっている。


作れない、できないと言う前に、作る方法、こうすればできるのではないかという方法を考えるべきなのに。
できないのは「考える習慣」が身についていないか、もともと真剣に資産を増やそうとする意志と意欲がないかだと僕は思う。
実際にお金を使わなくても投資でお金を増やす方法はある。でも「お金を使わない」のと「お金がない」というのでは意味が違う。「お金がない」というのはいままでお金を扱うのが上手ではなかったことの証明になってしまう。
お金を上手に扱う習慣があれば、資産を増やすことは誰にでもできる。僕にだってできたくらいなのだから。


元手を作り、少しの投資から始める。経験を重ねていくうちに、頭の中の知識とあいまっていろいろなものが見えてくる。見えてくるものが多くなればなるほど、投資能力が高まって、現実的なリスクを低く抑えられるようになる。
僕の場合、初めての不動産投資は全額、自分の貯めた700万円で始めた。
それが僕の資産作りの「雪の玉」、つまリタネ銭だった。



資産は借金をして買ってもいいもの

「多くの人は資産と負債の区別がわかっていない。いい借金と悪い借金の区別もついていない」
星さんは次に、僕にこんな問いかけをした。
「資産と負債の違いは何だと思う?」
「負債は借金ですよね。資産は財産ということ、ですかね」
僕の答えに、星さんはこんな補足をしてくれた。


「もっと厳密にいうと、お金を生むものが資産で、生まないものが負債だよ。お金持ちの人はそのことがわかっている。だから、お金をかけるとしたらお金を生むものに限定してるんだ」
ファイナンシャルアカデミーを設立してスクールを開講してみてわかったが、成功者には、実際にそういう考え方をする人が多い。
いまでは僕もお金を生むものが資産で、生まないものが負債だと考えるようになった。


一般的には車だとか家だとか、そういったものが資産だと思われている。
けれども、それは負債なのだ。
僕もいま、車を持っているが、それも実は負債だ。
資産と負債の違いがわかると、資産にはローンを組んでもいいが、負債にはローンを組んではいけないことがわかる。
だからこういうことが言える。


お金を生まない「負債」については現金で買う。
お金を生む「資産」については借金をしてでも買う。
そういう発想が僕に根づいたのも、星さんや成功したお金持ちの薫陶を受けたからだ。
最近、テレビに出ているファイナンシャルプランナーの人たちが、「まず借金を返しなさい」
と言っている。
それは一般の人々には当てはまるだろうが、今後、資産を大きくしたい、成長したいという人にとっては、そのやり方は正解ではないこともある。


お金を生む「資産」というものは、借金をしてでも買ってもいいものなのだ。
僕の場合、まず資産を築くという考え方でやってきたので、お金を生まない贅沢品を買ったのはここ数年のことだ。それまでは全く買わずにいた。車は一応持ってはいたが、おんぼろの中古車に5年くらい乗っていた。家も賃貸で、妻と子供と家賃10万円くらいのところに住んでいた。


お金を生まない贅沢品をローンを組んでまで買うのは、ファイナンシャルリテラシーがないからだということになる。
また、人は一度生活の幅を広げてしまうと、レベルを下げるのが難しくなるものだ。
行き着くところは……多重債務者なんてことにもなりかねない。


東京でも横浜でもブランド地域に住む、とくに30代40代の人たちは、まわりの人が家を買えば、自分もマンションを買う。あの人がベンツを買ったから、自分も買うといつたパターンが多い。それも、ほとんどの人がローンで購入している。
つまり、お金を生まない「負債」を借金して手に入れているのだ。
「夢を買った」という人もいるが、お金の面を考えるとそれは違う。買ったのは確かだが、それはハイリスクの夢で、しかもローリターンの夢だ。もし体を壊したりして働けない現実が襲ってきたら、どうやつて借金を返済するのだろうか。
そういう人たちは、何かあったら将来支払いが苦しくなっていくだろうと、僕は思っている。


なぜなら「資産」と「負債」の違いがわかっていないからだ。
一方1億円の不動産物件をローンを組んで買い、家賃収入が月100万円で、返済が毎月50万円だとすれば、細かい計算は別にして、手元に50万円残ることになる。
お金を生む「資産」については、借金をしてでも買うとは、こういうことなのだ。
結果的に、借金をしたことでお金を増やせるのだから、その借金は「いい借金」ということになる。
ビジネスや投資で成功している人たちは、お金を生まない贅沢品を買いあさったり、自分を飾ったりすることはあと回しにする。


逆をいえば、そういう人たちこそが資産を築いている。そして、それぞれが自分で自分のルールを作ってもっている。そうしないと、日課のない日常生活を送るようなもので、人はだらしない生活に陥りやすい。
だから投資で成功するには、ルールは必要不可欠なものなのだ。
僕もルールをもっている。これは星さんに教わったルールを基本に、自分なりにアレンジしたものだ。
僕の場合、資産を買ったおかげで得た「不労所得」、つまり資産が生んでくれたお金(利益)の使い方を決めている。


「不労所得」の1割を自分へのご褒美に使うことにして、それで贅沢品を買うのだ。
そして、もし贅沢品を買ったりムダ使いをしたりしたいときは、まず利益を得る資産を買うことにしている。そこから得た利益で贅沢品を買う。
労働収入(働いて得た給料・報酬)から贅沢品を買うことはしない。


労働収入は生活費にあて、それと不労所得(資産からの収入)とは完全に切り分けて考えている。僕は今のところ、資産からの収入(不労所得)で生活することはしていない。会社で労働をして得た収入を生活費にあてている。
働いて得たお金はできるだけ貯めて、それを元手に「資産」を買い、その利益で贅沢品を買う。
そういう流れを作れば、自然とお金持ちになっていく。これは僕の経験則だ。