36歳男性、年収800万円:多すぎる税金を減らしたい。え?節税の隠れたデメリットって?
<質問> 毎月引かれる税金の大きさにげんなりです。節税が効果的だと思い「ふるさと納税」や「iDeCo」などできる限りの節税対策を行っています。ただ正直なところ「たったこれだけか。節税効果って少ない」と感じていたところ、投資用のマンション購入の広告が目に入りました。 「節税対策になるし、資産にもなるならなぁ」って思っていますが、大きな買い物でもあるので迷っています。
<回答> 年収がいいのはありがたいですが、その分だけ、税金も社会保険料も高いと、ため息がでてしまう気持ちわかります。とにかく税金は1円でも少なくしたいと考えるのが人間の心理ですよね。
「ふるさと納税」や「iDeCo(=個人型確定拠出年金)」といった制度を調べ、様々な所得控除を計上することで、所得の額を抑え、所得税や住民税の額を数万円減らすことに成功されたのですね。
「たったこれだけか。節税効果って少ない」と、少し不満げにも感じられ、さらに節税効果の高いものを探されていたところ、タイミングよく「投資用マンション購入」の広告が目に止まったのではないかと察します。
いただいたご質問は「投資用マンション購入」に迷っているということですが、回答にあたり、まずは「節税」についてしっかり考えてみてから、その答えを一緒に考えていきましょう。
▷節税を積極的にするメリットとは、意外にも多くない
質問者さんのように年収800万円だと住民税・所得税はあわせて90万円ほどになります。(一般的な年収800万円モデルで計算)さまざまな控除制度を積み上げていけば、10万円くらいまでなら戻ってくるかもしれないでしょう。
しかし、年収800万円を稼ぐ能力を持っている質問者さんの場合は、10万円分節税する労力を、収入を10万円増やすことに注いだほうが長期的にはプラスになります。節税対策が悪いわけでもなく、節税対策の効果を否定するわけでもありませんが、節税対策に頭の中を占領されてしまい、自分のキャリアアップや収入アップの方策を取らないことは本末転倒です。
また「税金を支払いたくない」という感情から、節税のメリットを過大評価してしまうこともあります。
その代表的な例は、所得税(や法人税)を減らすために、経費を使うというやり方です。
上記の典型が、今回質問者さんの目に止まった「投資用マンションによる節税対策」です。
この仕組みは、「3000万円ほどの投資用マンションを、ほぼ全額ローンで購入し、家賃収入を得ながら、節税もできて、将来の資産形成もできる」という一見おいしい話のように見えます。
この節税効果には「減価償却費」という制度を使うことになります。ここでは細かな説明は省略しますが、購入金額(実際には建物価格)が減価償却という形で費用(経費)となり、給与収入で本来払わないといけない税金を減らせる、というものです。
この物件を購入し、年間節税効果が20万円得られたとしましょう。それが5年続けば100万円の納税額を減らすことができ、一見得した気持ちになります。では、その5年後・・・3000万円で購入した投資用マンションの資産価値はどれくらいになるか想像できますか?
一般的に3割ほどさがると言われていますので、実は2100万円くらいになっているのです。3000万円で購入したマンションが2100万円に・・・ということは、900万円の損です。
得られた節税効果は+100万円 一方で購入したマンションの価値は▲900万円。
これは、「節税できる!」と目がくらんでしまい、本当の資産価値を見失ってしまった人に起こりがちな判断ミスです。節税を目的にすると、更に大きな損をかぶってしまう、とても一般的な事例です。
たしかに「税金を支払うのが好き」という人はなかなかいないと思います。感情面で「税金を支払いたくない」と思われる気持ちはとてもよくわかります。
▷「節税」を目的にしすぎると、人生の選択肢を狭めてしまうことに
もしも、質問者さんが事業をおこそうと考えていたり、不動産投資を考えていれば、金融機関からの融資が受けづらくなります。
なぜなら、節税に励むということは、所得を抑えるということ。所得が低い人には、銀行は多くのお金を貸したがりません。たかだか数万〜数十万円の節税にこだわったことで、数千万円の融資をうけることができず、自分のやりたいことを形にしようと思っても、それができないこともあり得るのです。
節税の隠れたデメリットまで考え、本来の目的を忘れずに上手にお金と向き合っていきましょう。