経理担当者の疑問を解決! 電子取引となる見積書データの取扱い

BUSINESS EYE

こんにちは、中村亨です。

今回のビジネスEYEでは、2024年1月から改正電子帳簿保存法における電子データ保存の義務化に向けて、国税庁が今年7月に新設した「電子帳簿等保存制度 特設サイト」をご紹介します。
あわせて、経理担当者であっても迷いやすい事例である「電子データ保存をすべき見積書データの取扱い」についてもまとめました。

日本クレアス税理士法人では、改正電子帳簿保存法について無料セミナーを開催し、会社が取り組むべき内容を中心ご紹介しています。年内の開催は11月が最終になりますので、まだの方はお早めにご参加ください。

10月には改正電子帳簿保存法に非常に深く関連するインボイス制度セミナーを予定しております。あわせてご参加いただくとより理解が深まりますので、ご一緒にお申し込みください。

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電子帳簿等保存制度特設サイトの開設

今年1月、改正電子帳簿保存法が施行されましたが、電子取引の電子データ保存の義務化は2年先延ばしとなりました。
そのため電子帳簿保存法の取扱いについて所得税法・法人税法上の保存義務者の理解・認識が遅れ、2022年10月現在、考え方の普及は道半ばに等しい状況かと思います。

そのような中、国税庁は2022年7月25日に、国税庁のホームページ上に「電子帳簿等保存制度 特設サイト」を設置。
どなたにでも情報の収集がしやすくなりました。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
特設サイトのトップページでは「制度別に調べる」「項目別に調べる」「製品・問い合わせ先を調べる」のカテゴリに分かれているため、検索しやすくなっています。

特に2024年1月から義務化となる「電子取引」については、上述の「制度別に調べる」から「電子取引」に入っていただくと、パンフレットや紹介動画、良くあるご質問や電子取引の対応市販ソフトの紹介、事前相談窓口への案内など分かりやすく掲載されています。
電子取引において迷ったときは、まずは特設サイト内をのぞいてみてください。

電子取引の対象となる見積書の取扱い

改正電子帳簿保存法における義務化対応となるものは「電子取引」です。
この電子取引の保存対象となっているのは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載されるものとしています。

このうち、「見積書データ」については、実務上においては正式な受発注取引が成立するまでに受注側は何度も発行することがあります。
また、発注側においては相見積もりを複数の会社とやり取りすることで、何種類もの「見積書データ」が存在することになります。

これらの取扱いについて、電子帳簿保存法取扱通達7-1(電子データにより保存すべき取引情報)(2)において、「取引情報の授受の過程で発生する訂正、加除の情報を個々に保存することなく、確-定情報のみを保存することとしている場合には、これを認める。」と規定しています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/030628/pdf/02.pdf
ここで言う「取引情報の授受の過程で発生する訂正、加除の情報を個々に保存することなく」というのは、単に見積書データの記載に誤りがあった場合のことを指しています。
誤りの見積書データは保存を要せず、修正後の確定データのみを保存することを認めるものと解されます。

しかし、同通達7-1(2)解説では、「前の見積金額を変更して、新たな見積金額として確定する場合には各々の見積金額が確定データとなるのであるから、最終的に合意に至った見積書データを保存するのではなく、各々の見積書データで保存することに留意する」と付記書きされています。

つまり、前の見積書データの金額を変更して新たな見積金額を提示するために再発行した見積書データについては、同通達の解説の取引内容に該当するため、見積金額変更前の没となった見積書データも保存する義務が生じることになります。

また、発注側の会社が複数の会社とコンペティションを行い、それぞれの会社から見積書データを受領した場合も、最終的に契約に至った会社の見積書データだけでなく、契約とならなかった会社の見積書データも、「各々の見積書データで保存する」ことに該当すると思われるため、複数の会社の見積書データすべての保存が必要になります。

従業員説明の要!育児休業制度の改正に伴う育児休業給付金と社会保険料免除の変更

BUSINESS EYE

こんにちは、中村亨です。

今回のビジネスEYEでは、育児・介護休業法の改正により変更となる社会保険料免除の仕組みと育児休業給付金の支給要件等についてご案内します。
いずれも従業員の生活に直結することから、会社には従業員への正確な案内が求められる内容となります。

以前、9月1日号のビジネスEYEでは、育児・介護休業法の改正内容と、それに伴う就業規則の改定や労使協定の再締結をご案内しましたが、今回はその実践編です。

(参考:施行までわずか!改正育児・介護休業法では就業規則等の見直しが必要!

会社には、今回の法改正にあたり就業規則等の見直しに加え、従業員が安心して休業できるよう、育児休業の枠組み・休業中の生活保障となる給付金の内容・社会保険料の取り扱いを丁寧に説明することが求められています。

育児休業制度は法改正が多く、複雑に感じる人事担当者様も多いかと存じます。
日本クレアス社会保険労務士法人では人事労務のプロフェッショナルとして、規程等の改訂作業、従業員への対応サポートから各種保険手続きまで、トータルで支援を行っています。
是非お気軽にご相談ください。

■ 10月から施行される改正育児介護休業法の内容

今回の法改正では、「育児休業の分割取得」が可能となり、新たに「出生時育児休業(産後パパ育休)」が設けられます。
これまでにおいては、1歳までに原則1回取得とされていた育児休業が、分割して2回取得できるようになります。
さらに、育児休業とは別に、子の出生後8週間以内に最大4週間(2回に分割可能)の休業が取得できる出生時育児休業(産後パパ育休)制度により男性の育児休業の取得を促進します。
出生時育児休業は、労使協定を締結することで社員と合意した範囲での就業が可能となり、従来と比べて柔軟で利用しやすい制度となります。

■社会保険料免除要件の変更

令和4年10月から育児休業期間中の社会保険料の免除要件は次のとおり変更となります。

月額保険料

従来の「その月の末日が育児休業期間中であること」に加え、「同月中に育児休業取得日数が14日以上」あれば、同月中に育児休業の開始日と終了日がある月も新たに免除の対象となります。

賞与保険料

その月の末日が育児休業期間中であることに加え、育児休業期間が暦日で1か月を超える場合に免除の対象となります。
月末時点で育児休業を取得していても、休業期間が短い場合は保険料免除の対象とはなりません。

―社会保険料免除に関する留意点―

出生時育児休業も社会保険料免除の対象となります。
同一月内に開始日と終了予定日の翌日がともに属する育児休業が複数ある場合、それぞれの休業日数を合算して14日以上であれば、当該月の月額保険料は免除されます。
出生時育児休業中の就労日数は、月額保険料免除においては「休業日数から除いて14日以上であるか」を判定し、賞与保険料免除においては連続した暦日をみるため「休業日数に含めて」判定します。

■育児休業給付金制度の変更

令和4年10月から育児休業給付金の支給要件等は次のとおり変更となります。

育児休業給付金(出生時育児休業給付金を除く)の給付回数

1歳未満の子について、原則2回の育児休業まで育児休業給付金を受けられます。
夫婦交代で1歳以降の育児休業の延長を取得する場合は、1歳~1歳6か月と1歳6か月~2歳の各期間において夫婦それぞれ1回の育児休業給付金が受けられます。

出生時育児休業給付金の支給要件と給付額

出生時育児休業期間中の就業日数が最大10日※(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)以下であることが必要です。
※「最大10日」は、28日間(4週間)の出生時育児休業を取得した場合の日数・時間となります。28日間より短い場合はその日数に比例して短くなります。
休業開始時の賃金の67%が支給されます。支給された日数は、育児休業給付の支給率67%の上限日数である180日に通算されます(180日経過後は50%)。
出生時育児休業期間中に就業して得た賃金額と出生時育児休業給付金の合計が、「休業 前賃金日額×休業日数の80%」を超える場合は、超えた額が出生時育児休業給付金か ら減額されます。

支給要件等の判定

支給要件となる被保険者期間の確認や支給額を決定する休業開始時賃金月額の算定は、初めて育児休業を取得する際に行いますが、出生時育児休業を取得する場合は、当該休業を初めての休業とします。
※参考
―日本年金機構「育児休業等期間中における社会保険料の 免除要件が改正されます」-
ikujikyuugyou.menjyo.youken.kaisei.pdf (nenkin.go.jp)
―厚生労働省「令和4年10月から育児休業給付制度が変わります」―
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838696.pdf

施行までわずか! 改正育児・介護休業法では就業規則等の見直しが必要!

BUSINESS EYE

こんにちは、中村亨です。

令和3年育児介護休業改正法について、本年4月の第1弾施行に続き、10月に行われる第2弾施行が間近に迫ってきました。
厚生労働省は、昨年11月に続いて「令和3年改正育児・介護業法に関するQ&A(令和4年7月25日時点)」を追加更新しました。

育児・介護休業法については、世相を反映して改正が頻繁に行われており、そのたびに規程の改訂が求められます。
またQ&Aが更新されたとはいえ、現在どのような制度が有効であるかの把握が難しく、従業員からの申出にどのように対応すればよいか迷ってしまうなど、お困りの点も多いのではないでしょうか。

日本クレアス社労士法人では、規程の改訂作業をはじめ、従業員への制度の周知方法に関する助言や従業員からの問い合わせに対する人事労務ご担当者様のサポート、各種保険手続きなど、育児介護休業法に関する支援を広く行っております。

特に、就業規則の作成・改訂については、法改正だけではなく、企業ビジョン、組織風土、企業ごとの課題に対応した完全オーダーメイド型、かつ労務トラブルから会社を守るリスクヘッジ型の就業規則を作成します。是非、お気軽にご相談ください(無料)

終業規則に関する無料相談はこちら
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●2022年10月施行内容

10月に施行される育児介護休業法の改正内容は次のとおりです。

1・出生時育児休業(産後パパ育休)

子の出生後8週以内に4週間まで柔軟に取得することができる制度です。現行の育児休業に比べて次の特徴があります。

  • 申出期限が原則休業の2週間前まで
  • 出生時育児休業期間を分割して2回取得することが可能
  • 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で出生時育児休業期間中に就労可能

2・育児休業の分割取得

出生時育児休業とは別に、1歳までの育児休業を2回に分割して取得可能となります。

●Q&Aで明らかになった運用面

Q&Aで新たに示された内容のうち出生時育児休業に関する内容を2点ほど、解説も加えご紹介いたします。

  • 出生時育児休業中の就労日に休んだ場合における年次有給休暇付与に係る出勤率算定出生時育児休業中の就労について一度同意した就業日の撤回は、出生時育児休業開始日以降は原則としてできません。そのため、就労する予定であった日にお休みする場合には、無給の欠勤としたり、年次有給休暇や子の看護休暇等を使用したりすることが考えられますが、当該お休みした日については出生時育児休業期間中であるため年次有給休暇付与の出勤率要件(8割出勤)にあたっては出勤したものとみなします。
  • 出生時育児休業期間中の就労条件について出生時育児休業中に就業させることができるためには、就業させることができる労働者の範囲について労使協定を締結する必要がありますが、「休業開始日の〇週間前までに就労可能日を申出た者に限る」「1日勤務できる者」「特定の職種(例:営業職のみ)」「特定の業務(例:会議出席のみ)」「特定の場所(例:A支店のみ、テレワーク不可)」などと、当該対象労働者の範囲を労使協定に定めることも可能です。

●10月施行に際し、会社が行わなければならないこと

10月の育児介護休業法施行に際し、会社が事前に行わなければならないことは次のとおりです。

  • 就業規則の見直し出生時育児休業、育児休業の分割とも、就業規則(育児介護休業規程等の別規程を定めている場合は同規程)に定める必要があります。
  • 労使協定の締結出生時育児休業について、法が認める範囲内で一部の従業員を対象外とする場合、職場環境の整備等の措置を行うことにより出生時育児休業の申出期限を1か月前(原則は2週間前)までとする場合、出生時育児休業中の就労を可能とする場合には、労使協定を締結する必要があります。

 
「令和3年改正育児・介護業業法に関するQ&A(令和4年7月25日時点)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000860549.pdf

世界のM&A36%減 市場は消極的?

BUSINESS EYE

こんにちは、中村亨です。

世界で企業のM&A(合併・買収)に急ブレーキがかかっているそうです。
2022年1~6月のM&Aは金額ベースで2兆367億ドル(約275兆円)と前年同期比36%減。
コロナ禍からの経済再開で過去最高を更新した昨年から一転し、コロナ前の水準まで減少したことになります。

主要な国家・地域のデータを見てみると、
米国が1兆332億ドル(前年同期比26%減)、
ヨーロッパが3635億ドル(前年同期比26%減)、
日本は38%減、
中国も44%減と軒並み減少しています。

背景には米連邦準備理事会(FRB)などによる世界的な金融引き締めがあるとされています。
金利上昇に伴う株式相場の下落で企業価値が低下し、
株式交換などを通じて企業を売却する動きにブレーキがかかってしまいました。
それにより金利が上がり、買収資金も調達しにくくなったのでしょう。
金利上昇だけでなく、ウクライナ危機、中国の都市封鎖による供給網の分断も追い打ちとなってしまいました。

世界的な金融引き締め、
ウクライナ危機や中国の都市封鎖の「三重苦」が響き、
景気の減速懸念が強まったことで、財務や供給網の立て直しなど、
自社の経営課題に優先的に対処する企業が増え、
「攻め」の投資に消極的になっている状況です。

この状況をチャンスと捉えるか、リスクと捉えるか。

私の場合、リスクは予測できた時点でもはやリスクではないと捉えています。
(予測できれば即ち対応できますからね)。
常にリスクは付きまとい困難は立ちはだかるものなので、
出来ることはその覚悟や胆力を備えることぐらいかもしれません。
さらにはリスクをチャンスに変えられるようなM&A支援を皆さんにお届けしたいと思っています。
(参考: 2022年7月2日│日本経済新聞電子版)

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時間外労働に対する法定割増賃金率の引き上げ

BUSINESS EYE

中村亨の「ビジネスEYE」です。

これまで中小企業に猶予されていた月60時間を超える時間外労働に対する50%以上の割増賃金率が、いよいよ2023年4月より大企業と同様に適用されることとなります。

今回のビジネスEYEでは、その内容を見ていきましょう。

月60時間を超える時間外労働の考え方

1か月の起算日からの時間外労働時間数を累計し、60時間を超えた時点から50%以上の率で計算した割増賃金を支払うことになります。

この割増賃金率および1か月の起算日については、労働基準法に定める「賃金の決定、計算及び支払の方法」に関するもので、就業規則に規定する必要があります。

月60時間を超える時間外労働について、深夜時間帯に労働した場合や休日に労働した場合との関係は、次のとおりとなります。

  • 深夜割増賃金との関係
    深夜(22:00~5:00)の時間帯に月60時間を超える時間外労働を行わせた場合は、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。
  • 休日における労働時間との関係
    1か月60時間の時間外労働の算定には、法定休日に労働した時間は含みませんが、法定休日以外の所定休日に行った時間外労働の時間は含みます。

月60時間を超える労働時間の割増賃金に代えて、有給休暇を与える「代替休暇」の検討

「代替休暇」とは、1か月に60時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、月60時間を超える労働時間の割増賃金に代えて、有給休暇を与える制度です。
制度を導入するにあったては、労使協定を締結することが必要となります。
しかし、労使協定を結んだからといって従業員に代替休暇の利用を義務付けることはできず、代替休暇を取得するか否かの決定は個々の従業員の意思に委ねることになりますので留意が必要となります。

賃金請求権の消滅時効

ところで、2020年4月には民法改正にあわせ労働基準法も改正され、これまで2年であった賃金債権の消滅時効が5年(当分の間は3年)に延長されました。従って、今後は最大3年~5年の賃金請求がなされる可能性があります。
それらに加え、時間外労働に対する法定割増賃金率の引き上げも行われますので、未払賃金請求におけるコストインパクトがかなり大きくなることを認識しておく必要があります。

法定割増賃金率の引き上げへの対応

従って、特に長時間労働が常態化している企業や労働時間の管理体制が整っていない企業は、次のような対応を早急に進める必要があります。

  • 適正な労働時間の把握
  • 時間外労働削減のための体制整備
  • 勤怠システムの導入

 
今回の法定割増賃金率の引き上げは、人手不足の問題を抱える中小企業にとっては、人件費増の懸念からデメリットばかりであると感じている方も多いのではないでしょうか。

しかし、長期的な観点からは、これを機にこれまでの業務を見直し、生産性向上や残業削減による魅力ある職場に近づけることで優秀な人材を確保することができ、業績向上ひいては企業の成長につながることが期待されます。

厚生労働省「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」
https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf

 
日本クレアス社会保険労務士法人では、就業規則をはじめとする社内規程の見直しや関連書式の作成など、労務管理に関するサポートを行っています。働き方が多様化する現代は、人事労務のプロが必要とされています。
就業規則、給与計算煩雑化する労務管理などに課題をお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。

日本クレアス社会保険労務士法人
電話:03-3593-3241
お問い合わせフォーム:https://secure-link.jp/lc/beieiadzlsslmzcw/

「法定相続人」と「法定相続分」

BUSINESS EYE

はじめに

そもそも「法定相続人」と「法定相続分」とはどういうものかを、簡単にご説明すると、下記の通りとなります。

  • 法定相続分……財産を相続するにあたり、各相続人の取り分を法律上で定めた割合
  • 法定相続人……法律上で定められた、財産を相続する権利がある人

 
実際ここ数年、金融機関等が相続対策に力を入れていたこともあり、上記の語群を耳にする機会も増えた思います。
しかし意外と内容を勘違いされることも多く、実際に問合せがあった内容を交えながら解説していきたいと思います。

法定相続人の範囲

まず遺言書等が無い場合の相続に関しては、法律上で相続人になれる人の順位と範囲が決まっています。
法定相続人の順位は以下の通りです。

順位続柄
常に相続人配偶者
第1順位
(子が先に他界していた場合は孫)
第2順位父母
(父母が先に他界していた場合は祖父母)
第3順位兄弟姉妹
(兄弟姉妹が先に他界していた場合は甥姪)

 
上表のように配偶者は必ず相続人になり、配偶者がいる相続の場合には、配偶者+最も順位の高い人が相続人となります。
つまり子がいる場合には配偶者と子、子がいない場合には配偶者と父母というように相続人になれる範囲が定められています。

また、子が先に他界してしまっていた場合には孫が相続人(代襲相続)となるため、仮に相続発生時点で子がいなかったとしても、すぐに父母や兄弟姉妹が相続人になれるわけではないので注意です。

この法定相続人に関する質問でよくある質問は、「親が亡くなり相続が発生したが、子である私自身も高齢のため、今回は相続放棄をして先に孫に相続させたいが可能か?」というものです。
確かに先程の表を見直すと孫も第1順位に位置しているため、「相続放棄をすると孫が相続できる」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし相続放棄とは、「相続人の立場そのものを放棄する行い」であるため、放棄した場合には孫へ権利の代襲をすることはできず、放棄を行った者の次の順位の人に
権利が移ることになります。

法定相続人になれない人

上記では法定相続人の範囲について案内しましたが、法定相続人に該当するかどうか判断に迷われるケースもありますので、例を挙げて解説していきます。

  • 内縁の妻もしくは夫
    戸籍上で籍を入れていない事実上の婚姻関係、所謂内縁の妻(夫)は現行の法律では相続人になることはできません。
    もし内縁の妻(夫)に財産を渡したい場合は、必ず遺言書を書いておくことをお勧めします。
  • 再婚相手の連れ子
    再婚相手に連れ子がいた場合も、自身の子として判断していいのか迷われると思いますが、基本的には相続人になることは出来ません。
    但し例外として、連れ子と養子縁組を行えば実子と同じ立場を与えることができるため、相続人になることができます。

 
相続人になれるかどうかは、遺言書や養子縁組の場合を除くと「血縁関係があるかどうか」で考えると判断しやすいかもしれません。

法定相続分の割合

続いては法定相続分についてのお話です。
これまでで述べたように法定相続人になれる人については一定の範囲が設けられており、実際に相続が発生した際の、相続順位の組み合わせによって各々の法定相続分が変動します。

パターン別の法定相続分は以下の通りです。

相続人法定相続分
配偶者と第1順位(子もしくは孫)配偶者1/2
残り1/2を第1順位の人数で均等に分割
配偶者と第2順位(父母もしくは祖父母)配偶者2/3
残り1/3を第2順位の人数で均等に分割
配偶者と第3順位(兄弟姉妹もしくは甥姪)配偶者3/4
残り1/4を第3順位の人数で均等に分割

 
配偶者や子供と比べ、父母や兄弟姉妹については被相続人の財産に依存して生活しなければならない可能性は低いため、表のように法定相続分が低く設定されています。

そして法定相続分に関する質問で1番多いのが「法定相続分通りにしっかりと分割しないといけないのか?」というものです。
冒頭で述べたように法定相続分とは、法律上で定められた各相続人の取り分ではありますが、実は法定相続分とはあくまで分割の基準であり、相続人全員が納得した上であれば分割の仕方は自由なのです。

極端な話、配偶者の方が全て相続することも可能ですし、相続人の内1人を除いた残り全員で均等に分割するという内容でも問題はありません。

ここが1番勘違いされやすい部分であり、実際に相続が発生してからこの事実を知り、当初は法定相続分通りに分けるつもりだったが相続人1人が法定相続分の分け方に反対したため、紛争に発展してしまったという話も珍しくありません。

では「法定相続分に意味は無いじゃないか」と思われる方もいらっしゃいますが、相続税の計算や遺産分割協議の調停等で法定相続分が利用されています。

日本の相続税の計算では、仮に法定相続分通りに分割が行われたと仮定して税金の算出を行うことになっており、遺産分割協議で全員の合意が得られず調停や審判に発展してしまった場合には、法定相続分を基準として分割されることが多いです。

まとめ

このように「法定相続人」や「法定相続分」について意外と勘違いされている事が多々あり、相続について正しい知識を有していないと生前対策に失敗してしまったり、相続が起こってから相続人間で揉めてしまい紛争に発展してしまいます。

遺された相続人間で争わないためには、生前の内から相続税のシミュレーションを行い財産を誰にどう遺したいのかを明確にする必要があります。

日本クレアス税理士法人では相続税専門チームによる質の高い相続申告書の作成は勿論のこと、生前の相続税対策や遺言書作成、養子縁組を検討した相続シミュレーションも承っております。

ご相談は無料で承っておりますので、相続で大変な思いをしない・させないためにも、まずはお気軽にお問合せくださいませ。

<相続に関する無料相談はこちらから>
日本クレアス税理士法人相続サポートセンター
電話:0120-55-4145
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中小監査法人の選別進む?

BUSINESS EYE

中村亨の「ビジネスEYE」です。

以前「ビジネスEYE」の中で、監査法人を大手から中小法人へ変更する動きが活発化していることを取り上げました。
※ご興味のある方はバックナンバーを是非ご覧ください。
シェア2割突破-高まる中小監査法人の存在感(Vol.540)

一方で、身の丈に合わない量の監査を引き受けるなどずさんな監査体制で行政処分を受ける中小監査法人は少なくありません。
今回のビジネスEYEでは中小監査法人の上場企業の監査の現状と、品質の確保に向けた業界の取り組みを見てみましょう。

(参考:日本経済新聞2022年4月6日)

中小監査法人の役割は増している

上場企業を監査する中小監査法人は約120あり、その中には100人超の規模の法人がある一方、個人事務所を開き共同で監査をするケースもあります。
公認会計士・監査審査会の報告書によれば、監査法人を大手から中小法人へ変更した件数は21年6月まで1年間で前年の2倍以上となり、監査人交代は3年連続で増加しています。
大手監査法人は手数料などのコストが高く、実際に交代理由では「報酬」「監査対応と監査費用の相当性」が全体の半数以上を占めています。
シェアでは大手が7割弱を占めているものの、中小法人のシェアは拡大傾向が続いています。

行政処分が相次ぐ

中小監査法人では、近年行政処分に至る事例が相次いでいます。直近では21年8月に原会計事務所が1ヶ月の業務停止命令、20年11月には大手門会計事務所が5ヶ月の業務停止命令を受けています。
経営陣の意識の問題はもちろんですが、企業との癒着が起きやすい、身の丈に合わない量の監査を引き受けている、といったことも背景にあるようです。

登録制を定め、情報公開の強化へ

金融庁は公認会計士法を改正し、これまで自主規制の枠組みにとどまっていた
登録制を法律で定める方針を打ち出しており、2022年度内の施行を目指しています。さらに情報開示などを強化し、監査の品質向上や透明性の担保の徹底を図る方針です。
登録制が厳格運用されれば中小監査法人の選別は進んでいくことが予想され、企業が自らに適した監査法人を選びやすくなり、財務情報の信頼性も高まります。
ただし、自主規制の枠組みとして登録制を運用している会計士協会が16年度以降に登録を取り消したケースは2件しかなく、実効性には懐疑的な見方もあります。
会計士協会がいかに登録制を厳格に運用できるかが、自浄作用を発揮できるかどうかのカギになるでしょう。

<問い合わせ先>
コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング
電話:03-3593-3238
お問い合わせフォーム:https://co-ad.co.jp/contact/

電子インボイスの保存方法と保存形式

BUSINESS EYE

中村亨の「ビジネスEYE」です。

消費税法におけるインボイス制度については、導入日である2023(令和5)年10月1日に向けて国税庁は頻繁に「お問い合わせの多いご質問(Q&A)」を更新しています。

5月27日に、新たに電子インボイスの取扱いについて2問が追加されました。

インボイス制度導入の3か月後である2024(令和6)年1月1日には、電子帳簿保存法における電子取引の紙保存廃止(電子保存の義務化)の容認規程の期限が切れます。

書類の様式や保存方法が、立て続けに大きく変化する時期がヒタヒタと迫ってきていると言えるでしょう。

国税庁も両規定に対して、今後も実務上の問い合わせの多い質問の回答をQ&Aとして順次更新していくものとみられます。

今回の「ビジネスEYE」では、Q&Aに追加された電子インボイスの保存方法と保存形式の2問の取扱いについてまとめました。

インボイス制度導入及び電子取引の電子保存義務化の両方を見据えた事前準備・対応を今のうちから進め、直前でアタフタしないように進めていただきたいと思います。

電子インボイスとは

記載要件を満たした適格請求書(インボイス)については、紙のインボイスに代えて、電磁的記録である電子インボイスの交付及び保存も認められています。

交付された電子インボイスは、電子帳簿保存法上の電子取引の適用要件である以下の【1】【2】【3】を行うことで、インボイス制度における消費税法上の保存要件を満たすことになります。

【1】真実性の要件
(訂正削除ができないシステムでの保存や事務処理規程の作成運用など)

【2】可視性の要件
(ディスプレイ画面等に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること)

【3】一定の検索要件に準じて保存

電子インボイスは複合的に両法律にまたがる保存書類となりますが、今後電子インボイスが主流となることは間違いなく、正しく理解をしておく必要があると思います。

電子インボイスの保存方法について

5月27日に追加されたQ&Aの問1で保存方法について言及しています。

電子インボイスがXML形式(※2)等の取引情報に関する文字の羅列である場合、電子帳簿保存法のうち、【2】可視性の要件である「整然とした形式及び明瞭な状態」での画面及び書類への出力は、どの程度の表示が求められるのか。

例えば、適格請求書(インボイス)の記載要件の事項を示す文言(例:「取引年月日」という文言)も必要となるのかという質問に対する取扱いを示しています。

(※2)XML形式とは、ファイルにデータを書き込む際の記述形式のことを言います。XMLでは、データを分かりやすく書き込んで管理することが可能です。文字(テキスト)データをタグ(tag)と呼ばれる記法を用いてコンピュータによる自動処理に適した構造に成型することができるものです。

保存すべき電子インボイスは電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問29において、請求書等のフォーマットなどによって、視覚的に確認・出力されるものは保存要件を満たすものとされています。

よって、下記の出力(印刷)イメージのように、請求書様式であることが視覚的に確認でき、その記載内容についても、インボイスの記載事項のどの項目を示しているかが認識できるものであれば、消費税法上、必ずしもインボイスの記載事項を示す文言(例えば「取引年月日」、「課税資産の譲渡等の税抜金額又は税込金額を税率ごとに区分して合計した金額」などという文言)は必要ではないものとしています。


(国税庁HP、インボイス制度、お問合せの多いご質問(令和4年5月27日掲載)より抜粋)

 
また電子帳簿保存法上、電子インボイスなどの電子取引に係る請求書等に「通常記載される事項」に係る電子データ保存が求められています。

その電子データは、上述の保存要件のうち、【2】可視性の要件である「整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておくこと」が求められます。

従って、原則としては「通常記載される事項」はすべて表示および出力可能である必要がありますが、その金額等の記載事項が、何を表しているかが明らかになっている場合については、その記載事項に係る項目自体が表示されていなくても差し支えないと説明しています。

ただし「通常記載される事項」に係る電子データについて、電子帳簿保存法上の上記【1】【2】【3】の要件を満たして保存を行う必要がありますのでご注意ください。

電子帳簿保存法上の具体的な保存要件については、弊社の無料セミナー「【電子帳簿保存法セミナー】改正電子帳簿保存法への対応」にて解説しておりますので、ぜひご視聴ください。

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電子インボイスの保存形式について

追加されたQ&Aの問2では例えば売手が交付した電子インボイスのデータ保存に関して、「売手側で控えとして保存する電子インボイスのデータは、買手である相手側に提供した<PDF形式>のものではなく、PDF形式を作成するための基となった<XML形式>のものでも認められますか」という質問に対する取扱いを示しています。

売り手が保存する電子インボイスの電子データは、必ずしもその買い手に交付・提供した電子データそのもの(上記の例では<PDF形式>のもの)に限られたものではなく、取引内容が変更される恐れのない合理的な方法で編集された電子データ(上記の例ではPDF形式を作成するための基となった<XML形式>のもの)により保存することも差し支えないとしています。
(国税庁:電子帳簿保存法「お問い合わせの多いご質問」令和3年11月)【電子取引関係】追2参照)

ただし、電子インボイスの保存に当たっては、買手である相手方に提供した<PDF形式>として出力できるなど「整然とした形式及び明瞭な状態」でディスプレイ画面等に出力できるようにしておく必要があるとしています。

<問い合わせ先>
日本クレアス税理士法人
電話:03-3593-3236
お問い合わせフォーム:https://j-creas.com/contact/
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短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大

BUSINESS EYE

中村亨の「ビジネスEYE」です。

2022年10月より、パート・アルバイト等の短時間労働者に対する社会保険の適用が、従業員数101人以上の企業に拡大されます。

今回のビジネスEYEでは、新たに適用となる企業、新たに社会保険に加入することとなる対象労働者、被保険者資格取得までのスケジュール、企業が行うべき事前準備についてご紹介いたします。

新たに適用となる企業

10月1日の施行日時点において新たに適用となるのは、
2021年10月から2022年9月までの各月において6か月以上、
厚生年金保険の被保険者数が100人を超える企業(特定適用事業所)
となります。

複数の事業所を持つ法人の場合は、
同一の法人番号を有する事業所における被保険者数の合計にて判断します。

新たに社会保険に加入することとなる対象労働者

特定適用事業所において雇用される短時間労働者のうち、次の要件(4要件)をすべて満たす場合には社会保険に加入することとなります。

【1】週の所定労働時間が20時間以上

契約上の所定労働時間であり臨時に生じた残業時間は含みませんが、実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、その状態が引き続くと見込まれる場合は3か月目から加入となります。

【2】月額賃金が8.8万円以上

基本給や諸手当の額で判断し、次の賃金は算入しません。
 ・臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
 ・1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
 ・時間外労働、休日労働、深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
 ・最低賃金において算入しないとされる賃金(精皆勤手当、通勤手当、家族手当等)

【3】2か月を超える雇用の見込みがあること

【4】学生ではないこと

※短時間労働者のうち、1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上である労働者は、4要件にかかわらずこれまで通り被保険者となります。

被保険者資格取得までのスケジュール

【本年8月頃】

2021年10月から2022年7月までの各月のうち、厚生年金保険の被保険者数が6か月以上100人を超えた場合には、「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が企業に送付されます。

【本年10月頃】

上記企業に対して、「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。当該通知書が届いた企業については、別途「特定適用事業所該当届」を届け出る必要はありません。

【10月5日まで】

適用拡大により、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者は、「被保険者資格取得届」を届け出る必要があります。

企業が行うべき事前準備

特定適用事業所に該当する企業は、10月の施行に備え、次の手順にて従業員の方へ制度の説明を行うとよいでしょう。

【1】加入対象者の把握

新たに被保険者資格を取得する可能性がある短時間労働者の把握をしましょう。

【2】社内説明

上記【1】に該当する短時間労働者へ、制度の説明をし、加入対象者となることを伝え、今後の労働時間について説明し話し合う機会を設けましょう。

2024年10月からは、さらに従業員数51人以上の企業に適用が拡大されます。

従業員によっては、労働時間を延長又は短縮することを希望する場合もあり、それにより収入に影響が生じるため、企業は従業員へ早めの情報提供を行うことが望ましいでしょう。

厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/

<問合せ先>
日本クレアス社会保険労務士法人
電話:03-3593-3241
お問い合わせフォーム:https://ca-sr.com/contact/