介護・認知症保険について

BUSINESS EYE

中村亨の「ビジネスEYE」です。

今年のゴールデンウイークは、
3年ぶりに新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令されない連休となり、久しぶりにご実家に帰省された方も多かったのではないでしょうか。

普段は話しにくい老後や介護などについても、いざというときに困らないように、早いうちにご家族で話し合っておくのがよろしいかと思います。

厚生労働省のデータによると、65歳以上の高齢者で認知症を患っている方は、2012年で462万人、2025年には約700万人になると推測されており、65歳以上の5人に1人が認知症患者になるといわれています。

また、2021年時点での要介護(要支援)認定者数は679万人で、認知症、介護者ともに年々増えています。

このような介護や認知症に備える方法として、今回のビジネスEYEでは、介護保険についてお話しいたします。

介護にかかる費用・期間とは

生命保険文化センターによる「2021年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、一時費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用)の合計は平均74万円となっています。

また、毎月必要な介護費用は月平均8.3万円ですが、10万円以上支払った方の割合は約30%に上ります。

介護期間は平均61.1カ月(5年1カ月)となっていますので、仮にこの期間介護が必要になったとすると、
(一時金)74万円+(8.3万円×61.1カ月)=約581万円
が必要になります。

介護保険とは

介護保険には、「公的な介護保険制度」と「民間の介護保険」の2種類があります。

前者は、全国の自治体が運営主体で介護が必要な方が適切なサービスを受けられるようにサポートするもので、
後者は、保険会社が販売している商品で、公的な介護保険の不足部分を補いつつ、介護の経済的な負担を減らすためのものです。

公的介護保険

介護保険制度とは、高齢や障害に伴って身体能力や認知能力が衰えてしまい、要支援者・要介護者となった方に対して介護費用を一部給付する制度です。
国の制度ですが全国の市区町村が制度の運営主体としての役割を果たしています。

40歳以上の全国民が加入を義務付けられており、訪問介護やデイサービス等が自己負担1~3割で利用できます。
ただし、近年増えている住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の住居費用は保険適用外ですので注意が必要です。

民間介護保険

生命保険会社が提供している、
認知症や要介護状態になった時に給付金が得られる保険制度です。

認知症や要介護者の割合が増えていることや、有料老人ホームなど公的介護保険でカバーしきれない費用に備えて、加入を検討する人が増えています。

このように、民間の介護保険は公的介護保険の補完的役割を担っていますが、人によって必要な保険金額や保障内容に対する考え方は異なります。
現在では、多くの保険会社から介護保険が発売されておりますので、ここからは商品を選ぶ際の具体的なポイントをご紹介いたします。

各保険会社の商品の違い

各保険会社から提供されている商品を選ぶ際は、下記4項目を確認していただく必要があります。

  • 保険期間
  • 給付要件
  • 貯蓄性
  • 保険金の受け取り方法

保険期間

大きく以下の2つに分けられます。

<定期型>
一定の期間のみ保障してくれるタイプの保険。
終身型と比べて保険料は安く、更新毎に保障内容を見直すことができます。
一方、更新すると年齢に応じて保険料が上がります。

<終身型>
保障が一生涯続くタイプの保険で、保険料が途中で上がることはありませんが、保障期間が長い分、定期型と比べると保険料は高めになります。

給付要件

保険会社によって、認知症で保険がおりるのか、
要介護1や要介護3で受け取れるのか等の要件が異なります。
また、いくつかの条件を組み合わせられるものもあります。

貯蓄性

主に掛け捨て型と、積立型があります。
掛け捨て型は、満期になった時や解約したときにお金が戻ってこないタイプの保険で、
その分保険料は安めに設定されています。

一方積立型は、満期になった時や解約したときにお金が戻ってくる保険です。
途中で解約した場合は返ってくるお金が少なくなるものの、
保険料の支払機期間が終わってから解約した場合、
今まで支払った保険料以上の解約返戻金を得られるケースが多いです。

保険金の受け取り方法

一時金として受け取る方法と、年金として毎年受け取る方法があります。
「一時金」は初期費用に、「月々の年金」は月々の必要資金に利用することができます。
また、加入時に指定代理請求人や家族登録制度を指定しておけば、
いざ契約者が認知症なった場合にも家族がサポートすることができます。

民間介護保険のメリット・デメリット

民間介護保険にご加入を検討される場合には、
以下のメリットとデメリットをご参考にしていただきたいと思います。

メリット

  • 介護の経済的な負担を軽減できる(資金準備)
  • 所得税や住民税が節税できる(生命保険料控除が受けられる)
  • 各個人の希望に合わせて、金額や保障範囲を決めることができる

デメリット

  • 保険料がかかる
  • 生涯で、認知症や介護にかからなかった場合は保険金を受け取ることができない

 
保険料は継続的な支払いが必要となるため、月々の生活費に支障がない程度の金額にしておく必要があります。

保険は、認知症や要介護になってからでは原則加入することができません。
将来の認知症・介護リスクに備えるためには、健康なうちに加入する必要があります。
また、年齢や性別、求める介護サービスなどによって、それぞれに合った保障は異なります。

日本クレアス財産サポートでは現在加入している保険の見直しや、
どの保険を選べば良いか分からないなどお悩みの方がいらっしゃれば弊社のプランナーが ご相談に賜りますのでお気軽にお声がけ下さい。

<問い合わせ先>
日本クレアス税理士法人
電話:03-3593-3236
お問い合わせフォーム:https://j-creas.com/contact/

インボイス制度における免税事業者の取扱い<後編>

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中村亨の「ビジネスEYE」です。

2023年10月1日より消費税のインボイス制度が開始となります。

前回は、インボイス制度実施における免税事業者の取引による影響についてお話しいたしました。
後編となる今回は、独占禁止法・下請法で問題となる恐れのある行為について、具体的にご紹介いたします。

独占禁止法・下請法で問題となる行為、ならない行為

買い手である元請け事業者は売り手である下請事業者(免税事業者)に対して、課税事業者かつ適格請求書発行事業者になるように要請することや両社協議の結果、取引価額の引き下げということであれば原則的に独占禁止法・下請法上問題にならないとしております。

しかし、この要請や両者協議にとどまらず、「一方的な取引価額の引き下げ」や「一定の条件下で一方的に契約打ち切り」などの通告を行うことは、独占禁止法上の「優越的地位の濫用に関する考え方」、下請法上の「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」に照らして、同法律による取り締まりの対象となることが考えられます。

独占禁止法・下請法上の問題となる恐れのある行為の例示

1.取引対価の引き下げ

価格交渉が双方納得の上での価格設定であれば問題とはなりませんが、交渉が形式的なものにすぎず、買い手である元請け事業者の都合のみで著しく低い価格を設定した場合には優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となることがあります。

2.商品・サービスの成果物の受領拒否、返品

買い手である元請け事業者が商品等を購入する契約をした後において、売り手が免税事業者であることを理由に、商品等の受領を拒否することや正当な理由(売り手が免税事業者であることは正当な理由とはなりません)なしに受領した商品等を返品する場合は優越的地位の濫用として問題となることがあります。

3.協賛金等負担の要請等

買い手である元請け事業者が免税事業者である売り手に対して、取引価格の据え置きを受け入れるが、その代わりに売り手である下請事業者に別途、協賛金や販売促進費等の名目で金銭の負担を要請することは、優越的地位の濫用として問題となることがあります。

4.購入・利用の強制

免税事業者である下請事業者に対して価格の据え置きと引き換えにその取引以外の商品等の購入を強制的に要請することは、業務遂行上必要でなく下請事業者もその購入を希望していないときは優越的地位の濫用として問題ととなることがあります。

5.取引の停止

たとえば買い手である元請け事業者がインボイス制度実施を契機に免税事業者である下請事業者に対して一方的に著しく低い取引価格を設定し、これに応じない場合は取引を停止するとした場合には、独占禁止法上問題となる恐れがあります。

6.適格請求書発行事業者となるようにしきりに誘いを行ったり勧めたりすること等

買い手である元請け事業者がインボイスに対応するために、下請事業者である免税事業者に課税事業者かつ適格請求書発行事業者になるよう要請を行うこと自体は法律上問題とはなりません。

しかし、この要請にとどまらず、課税事業者等にならなければ価格を一方的に引き下げるとか、応じなければ取引を打ち切るなどの通告を行うことは独占禁止法・下請法上問題となる恐れがあります。

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インボイス制度における免税事業者の取扱い<前編>

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中村亨の「ビジネスEYE」です。

2023年10月1日より消費税のインボイス制度が開始となります。

インボイス制度においては、免税事業者からの仕入について、
買い手側において消費税の仕入税額控除がとれないという不利な状況が起こることになります。

よってインボイス制度開始をきっかけとして、
買い手側における免税事業者との取引条件の見直しを検討する傾向がみられるようになってきました。

条件見直しの交渉の方法によっては独占禁止法や下請法に抵触する恐れがあります。

こうした免税事業者との取引に関する対応の考え方等を示した
「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を
財務省や公正取引委員会などが2022年1月19日に公表、
追って公表後に事業者から寄せられた質問等に基づき、3月8日付けで当Q&Aを一部改正しています。

今回のビジネスEYEでは、インボイス制度開始後の、
売り手及び買い手それぞれにおける免税事業者に対する取引の影響や
法律上問題となる行為について見てみましょう。

インボイス制度実施における免税事業者の取引による影響

インボイス制度が実施された後も、
消費税の計算の原則(※1)は変わりません。

但し、仕入税額控除を行うためには適格請求書発行事業者から
適格請求書(インボイス)の交付を受け、保存をしておくことが必要となります。

このインボイスには消費税率や消費税額が記載されるため、
売り手と買い手の表裏一体となる消費税の対応関係が明確になり、
消費税の計算がより正しくされやすくなることになります。

ただし、免税事業者(※2)は
適格請求書発行事業者ではないため、インボイスを発行することができません。
免税事業者から請求書等の交付を受けた買い手については、
仕入税額控除を受けることができないという問題が生じます。

しかし、取引の影響に配慮して仕入税額控除については経過措置が設けられており、
免税事業者からの仕入についても、インボイス制度実施後3年間は消費税相当額の8割、
その後の3年間は5割の仕入税額控除が可能とされています。

この経過措置期間までに免税事業者は今までどおり免税事業者を維持するか、
課税事業者かつ適格請求書発行事業者の届出申請を行うかの
選択を迫られることになるかと思います。

上記のような免税事業者等の売り手である小規模事業者(下請け事業者)は、
買い手である事業者(元請け事業者)と比べて力関係の格差があり、
取引条件が一方的に不利になりやすくなる場面も想定されます。

このような状況下で買い手である元請け事業者の意向で取引条件が見直される場合、
その交渉内容等によっては、独占禁止法又は下請法等に抵触する可能性が生じてきます。

次回メルマガでは、具体的な問題となる交渉内容等についてご説明します。

(※1)
売上に係る消費税額から仕入に係る消費税額を控除<仕入税額控除>した差引額を納税する原則

(※2)
基準期間の課税売上高が1,000万円以下の課税事業者選択届出書を提出していない消費税の納税義務がない小規模の事業者

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マイカー通勤とマイカーの業務上使用に関する注意点

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中村亨の「ビジネスEYE」です。

新型コロナウィルス感染防止のため、マイカーによる通勤を認めることとしたという声を人事担当者の方から伺うことがあります。

マイカー通勤は感染リスクを低減できる反面、企業にとっては管理を怠ると法的リスクが発生します。

今回のビジネスEYEでは、マイカー通勤とマイカーの業務上使用に関する注意点について見てみましょう。

マイカー通勤中の事故における会社の責任

マイカー通勤中の事故については会社に責任はないと思われがちですが、従業員の不注意による事故であっても、場合によっては
民法715条「使用者責任」と自動車損害賠償法第3条「運行供用者責任」を根拠に損害賠償請求をされ、人身事故等の重大事故では高額となることもあります。

裁判例ではこれらの責任の有無を、主にマイカーを業務に使用することを会社は認めていたか、マイカーをどの程度業務にて使用していたか等により判断しています。

  • マイカーの業務上使用を禁止し、通勤以外には使用していない場合
     ┗「原則として、会社の責任は問われない。
  • マイカーの業務上使用を認めており、実際に業務にて使用していた場合
     ┗「原則として、会社も一定の責任を負う。
  • マイカーの業務上使用について特に定めていない場合
     ┗「マイカーの業務使用の継続性・頻度」
     ┗「会社がマイカーを業務にて使用していたことを知っていたか(黙認を含む)」
     ┗「ガソリン代・駐車場などを供与していたか」等により総合的に責任の有無を判断。

そのため、マイカー通勤を認める場合には、交通事故が発生する可能性があることを前提に、損害賠償リスクを減らすための労務管理を行う必要があります。

マイカー使用に関する労務管理

マイカー使用に関する労務管理のポイントは、ルールづくりとそれに基づき適切に運用することです。

マイカー使用に関するルールは、「車両管理規程」「マイカー通勤規程」等の規程にて主に次の内容を定めます。

  • 許可要件
     ┗会社が定める対人・対物の補償基準を満たした「任意保険」への加入義務
  • 申請書類と手順
     ┗「運転免許証」「自動車検査証」「自賠責保険・「任意保険の保険証書」
      の提出(年1回など定期的に確認が必要)
  • 使用範囲の明確化
     ┗業務での使用許可の有無
  • 事故時の対応手順
     ┗救護、110番通報、会社への報告等
  • 遵守事項
     ┗交通法規遵守、運転中のスマホ使用の禁止、
      飲酒運転禁止のほか運転に支障のある服薬時の運転禁止等
  • 手当の支給、費用負担
     ┗通勤手当、ガソリン代、駐車場等の費用負担
  • 責任範囲
     ┗事故やトラブル発生時の会社の責任範囲

通勤や業務で使用する車両に関する安全運転管理者等の選任

法的リスク軽減のための規程作成以外に、会社に対する法的義務として安全運転管理者の選任があります。

道路交通法では自動車を5台以上(乗車定員11名以上のものは1台以上)使用している事業所は、安全運転管理者を選任し、公安委員会へ届け出ることが定められています。

安全運転管理者の選任対象となる車両とは、会社所有のものだけではなく、業務上使用するリース車両や私有車も含まれるため、マイカー通勤を認められている従業員の車両を通勤のみでなく業務上使用している場合は注意が必要です。

なお、安全運転管理者の業務内容は、道路交通法施行規則により次のとおり定められています。

  1. 運転者の適正等の把握
  2. 運行計画の作成
  3. 交替運転者の配置
  4. 異常気象時等の措置
  5. 点呼と日常点検
  6. 運転日誌の備付け
  7. 安全運転指導
  8. 酒気帯びの有無の確認及び記録の保存(令和4年4月1日施行※
  9. アルコール検知器の使用等(令和4年10月1日施行※

 
※飲酒運転防止対策の強化によるもの

リスク回避型の就業規則の整備は多くの企業にて進められていますが、マイカー通勤に関しては見落しがちです。

マイカー通勤を導入又は検討されている場合には、法的リスクや法的義務を踏まえ、改めて規程の整備や既存規程の内容確認をご検討されてはいかがでしょうか。

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事業承継税制のポイント

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中村亨の「ビジネスEYE」です。

令和4年度の税制改正において、法人版事業承継税制に係る特例承継計画の提出期限が、令和6年3月31日まで1年間延長されることが決まりました。

1年延長されたことで、事業承継税制を利用するか否か、検討する時間ができたことになります。

この特例措置のメリットや、そもそも適用したほうが自社にとって有利になるのかなど、情報を整理する必要があるのではないでしょうか。

そこで今回のビジネスEYEでは、事業承継税制について制度の概要と、提出期限の到来前に必ず押さえたいポイントについてお話したいと思います。

特例事業承継税制とは?

事業承継税制とは、先代経営者から事業の承継を受けた後継者が、非上場株式を相続または贈与で引き継いだときに、一定の要件を満たすことにより、株式の贈与や相続に係る税金を繰り延べる(納税の猶予を受ける)ことができる制度のことです。

一般措置としての事業承継税制自体は、平成21年に創設されたものです。
しかし、納税額の全額が猶予されないことや、5年間に渡る雇用維持の要件などもあり、使い勝手の悪い制度でした。

そこで、平成30年1月1日から約10年間の期限付きで、特例措置が創設され抜本的な拡充がなされました。

一般措置では、下記の制約があるため制度が普及されませんでしたが、改正により特例措置では、それらの制限がクリアになったことで使いやすくなりました。

【一般措置】

  • 納税の猶予や免除の対象となる株式数は発行済株式数の最大3分の2まで
  • 納税が猶予される金額は相続の場合80%まで(贈与の場合は100%)
  • 承継後5年間は平均で8割雇用の維持が必須(できない場合は猶予打ち切り)
  • 経営悪化により自主廃業や売却をする場合は、承継時の株価を基に税金を計算

【特例措置】

  • 全株式が納税の猶予や免除の対象となる
  • 納税が猶予される金額が相続でも100%になる
  • 承継後5年間で平均8割の雇用を下回った場合でも、下回った理由等を記載した報告書を提出して、確認を受けることで猶予は継続される
  • 経営悪化により自主廃業や売却をする場合、廃業・売却時の評価額を基に税金を計算できる

 
改正によって税金面で大きく優遇を受けられるようになるとともに、後継者の引継ぎ後の経営に対する不安や、万が一の時の税負担も軽減されるようになり、事業承継に悩む中小企業の経営者にとって非常に魅力ある制度になりました。

ただし、この特例措置は10年間の期限付きであり、また、制度を利用するには、期限内に特例承認計画の提出が必要になります。

提出期限の到来前に必ず押さえたいポイント

今年の税制改正にて、特例承認計画の提出期限が当初の令和5年3月31日から、令和6年3月31日まで1年間延長されることが決まりました。

必ず押さえておきたいポイントは、
「相続が発生した場合も同様に特例承継計画の提出が必要」
ということです。

贈与による事業承継税制の活用を検討する場合には、計画的に株式の贈与を行いますので、特例承継計画の提出がないまま贈与を行う可能性はありませんが、予期せぬ相続については違います。

万が一、特例承認計画の提出をしないまま、令和6年3月31日の提出期限が過ぎ、その後、相続が発生してしまった場合には、特例措置による事業承継税制を適用することはできないのです。

もちろん、一般の事業承継税制を適用することはできますが、納税猶予の対象となる株式数は、発行済株式数の最大3分の2までです。

税額猶予は80%までしか適用できないので、後継者に一部税負担が発生してしまいます。

また、5年間に渡る雇用維持の厳しい要件や、経営悪化による自主廃業や売却時には株価が重くのしかかるなど、後継者の相続後の経営不安を払拭できない要素も存在します。

特例承継計画を提出したからといって、期間内に必ず贈与を行う必要はありません。
しかし、特例承継計画の提出さえあれば、特例措置期間内に万が一のことが起きても、相続に関して、特例事業承継税制が適用することができます。

今回の新型コロナウイルス感染症のように、いつ経営者ご本人の健康リスクが脅かされるのか、誰にも予想ができません。

最悪の事態を想定して、特例承継計画を提出するだけでも、検討する余地はあるのではないでしょうか。

事業承継税制は、適用条件や納税猶予の取り消し事由など、押さえるべきポイントが多数あり、ここでお話ししたことはほんの一部です。

特に事業承継税制自体は課税の繰り延べ的な側面が強く、納税猶予の取り消し事由に該当してしまった場合、猶予されていた税金について納付しなければなりません。

後継者に大きな税負担が発生する恐れもあり、注意が必要です。

ここではお伝えしきれないポイントについては、弊法人主催の事業承継税制セミナーにて、内容をより掘り下げて、詳しくご説明させて頂いております。
毎回ご好評をいただいており、現在追加開催を準備しております。
決定しましたら本メルマガにて告知致しますので、ぜひご参加ください。

また、個別のご相談では、特例版事業承継税制の適用可否判定から、猶予税額等に関する具体的なご相談まで、随時お受けしております。

日本クレアス税理士法人では、事業承継税制に関して、すべてをお任せ頂ける環境が整っております。

事業承継税制に関するお悩みはぜひ、日本クレアスにご相談ください。

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「統合報告書」を発行する上場企業が増える

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財務情報と、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治))などの非財務情報をまとめた「統合報告書」を発行する企業が増えています。

ESG投資の世界での広まりや、東京証券取引所の新市場区分「プライム市場」で高い水準の情報開示を求められることなどが背景にあるようです。

今回のビジネスEYEでは日本における統合報告書発行の様子と、今後の課題について見てみましょう。

統合報告書を発行する企業は増加傾向

KPMGジャパンの調査によれば、2021年に統合報告書を発行した企業は非上場企業や大学も含めて716社で、2014年と比較すると5倍になりました。
大手企業だけでなく、中堅・中小規模の企業でも発行が増えており、売上高が5000億円未満の企業は前年から3割増と伸びは大きく、売上高1000億円にしぼると7割増となりました。

開示の背景には東証の市場区分見直し

2022年4月4日から、東証では「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の新しい3区分がスタートしました。
昨年6月に改定された企業統治指針において、上場企業はESGの方針や取り組みの開示が必要になり、プライム市場の企業には気候変動開示の質と量の充実が求められることになりました。
ESG課題を特定して二酸化炭素排出削減や人権方針の目標を定めたり、健康経営への対応を盛り込んだりする企業があり、目標設定の有無や内容は企業によってさまざまです。

開示内容には課題あり

環境や社会問題は幅広く、企業によって取り組むべきESG課題は異なります。
さらに日経平均株価を構成する225社のうち、統合報告書の中でESG課題を記載するものの、経営戦略との関係を説明した企業は48%、関連するESG指標の目標と実績を開示した企業は56%にとどまります。

また投資家の注目度が高い気候変動に関する情報開示については、225社のうち184社が気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同しているものの、そのうち約2割の企業はTCFDに沿った提言をしていない、という現状があります。

世界でESG投資は広がっており、投資家の参考になる情報の充実は欠かせません。

ただし、やみくもにESGに関して網羅的に情報を載せるのではなく、自社の企業価値の創造に寄与するような情報が求められるでしょう。

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いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項

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中村亨の「ビジネスEYE」です。

人手不足や労働者のニーズの多様化、季節的な需要の繁閑への対処等のため、労働契約の締結時点では、労働日や労働時間を確定せず、パートタイム労働者やアルバイトを中心に、いわゆる「シフト制」をとることが多くあります。
シフト制には、その時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定できるという点で使用者及び労働者の双方にメリットがあり得えます。
一方、使用者の都合により労働日がほとんど設定されなかったり、労働者の希望を超える労働日数が設定されたりすることにより、労使トラブルに発展することもあります。
このため、厚生労働省では本年1月に、シフト制による労使トラブルを予防し、労使双方にとってシフト制での働き方をメリットのあるものとするため、現行の労働関係法令等に照らして使用者が留意すべき事項を示しました。
今回のビジネスEYEでは、その「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を見てみましょう。

「シフト制」労働契約の締結に当たっての留意事項

【始業・終業時刻】

労働契約の締結時点ですでに始業と終業の時刻が確定している日については、
労働条件通知書などに単に「シフトによる」と記載するだけでは足りません。

労働日ごとの始業・終業 時刻を明記するか、原則的な始業・終業時刻を記載した上で、
労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等を併せて
労働者に交付する必要があります。

【休日】

具体的な曜日等が確定していない場合でも、
休日の設定にかかる基本的な考え方などを明記する必要があります。

上記留意事項を踏まえ、労働契約に定める内容として考えられる例

1・シフトの作成に関するルール

  • シフトの作成時に、事前に労働者の意見を聞くこと
  • シフトの通知期限 (例:毎月○日)
  • シフトの通知方法 (例:電子メール等で通知)

2・シフト変更に関するルール

  • 一旦確定したシフトの労働日、労働時間をシフト期間開始前に変更する場合に、使用者や労働者が申出を行う場合の期限や手続
  • シフト期間開始後、確定していた労働日、労働時間をキャンセル、変更する場合の期限や手続

 
   ※一旦確定した労働日や労働時間等の変更は労働条件の変更に該当し、使用者と労働者双方の合意が必要(労働契約法第8条)

3・労働日、労働時間などの設定に関するルール

  • 一定の期間中に労働日が設定される最大の日数、時間数、時間帯
    (例:毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する)
  • 一定の期間中の目安となる労働日数、労働時間数
    (例:1か月○日程度勤務/1週間あたり平均○時間勤務)
  • 一定の期間において最低限労働する日数、時間数
     (例:1か月○日以上勤務/少なくとも毎週月曜日はシフトに入る)

就業規則に規定すべき事項

シフト制労働者に関しては、就業規則に関しても「個別の労働契約による」、「シフトによる」との記載のみにとどめた場合、就業規則の作成義務を果たしたことになりません。

ただし、基本となる始業及び終業の時刻や休日を定めた上で、「具体的には個別の労働契約で定める」、「具体的にはシフトによる」旨を定めることは差し支えありません。

※シフト制労働者に対して一か月単位の変形労働時間制を適用する場合には、就業規則において、具体的な労働日や各日の始業及び終業時刻(月ごとにシフトを作成する必要がある場合には、全ての始業及び終業時刻のパターンとその組み合わせの考え方、シフト表の作成手続及びその周知方法等)を定める必要があります(昭和 63 年3月14 日基発 150 号参照)。

今回、「シフト制」における雇用管理の留意事項が示されたことに伴い、労働基準監督署による臨検等の調査では、
「始業及び終業の時刻」や「休日」を「シフト制による」とのみ記載された労働条件通知書や就業規則について、「労働条件を示したことにならない」と指導が行われる可能性が高まります。

厚生労働省のリーフレットには、「シフト制労働契約簡易チェックリスト」も掲載されていますので、シフト制を取り入れている企業においては現状の運用を確認し、必要に応じて見直しを行うことをお勧めします。

―厚生労働省―
「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22954.html

日本クレアス社会保険労務士法人では、就業規則をはじめとする社内規程の見直しや関連書式の作成など、労務管理に関するサポートを行っています。働き方が多様化する現代は、人事労務のプロが必要とされています。
就業規則、給与計算煩雑化する労務管理などに課題をお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。

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火災保険の保険期間が変わる!保険の見直ししませんか?

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中村亨の「ビジネスEYE」です。

令和3年11月に損害保険各社から、家屋や家財の損害を補償する火災保険について、割安な10年契約を廃止して、5年ごとの更新に短縮することを発表しました。
また、大手の損害保険会社は保険料の値上げも行うようです。

適用時期は令和4年10月以降となる見通しですが、マイホームをお持ちの方や、不動産経営をされているオーナー様には、耳の痛い話ではないでしょうか。

見直しに至った背景として、近年の異常気象に対する保険金支払いの増加が挙げられます。
台風や豪雨などのニュースをここ数年頻繁に見聞きされた方も多いことと思われます。

今や火災だけでなくあらゆる自然災害も補償する火災保険。

保険期間が短くなることによりどのような影響をうけるのか、今後の契約を見据えて、火災保険を見直すポイントについて見ていきましょう。

最長5年契約となった場合の影響は?

【メリット】

  • 契約の見直しが容易になる契約期間中の見直しも可能ですが、そのきっかけは更新時のタイミングが大半かと思います。
    更新時期が早いため補償内容を見直しやすくなります。

【デメリット】

  • 総支払保険料が高くなる火災保険は長期契約になるほど保険料が安くなるように設定されています。
    同じ10年契約をする場合でも、10年契約と同条件で5年契約を2回行う場合とでは、10年契約で加入する方が保険料は割安になります。
  • 改正の影響を受けやすくなる今回のような保険料や期間改定など契約者がその影響を受けるのは、新規契約もしくは更新契約をしてからになります。
    契約期間が短くなることで、改正の影響をより受けやすくなります。

改正を踏まえた4つの見直しポイント

1・長期で加入して1年当たりの保険料を抑える

火災保険は1年更新と思っていらっしゃる方もいるかもしれません。
長期一括払い契約をする事で1年当たりの保険料を抑える事が出来ます。
一括支払いが難しい場合には契約期間は長期で、支払いは1年という方法もあります。
こちらは長期年払いという契約形態で、1年更新で加入するよりも1年当たりの保険料を抑える事が出来ます。

ちなみに期間10年で契約したが、5年後に売却することになった場合、残存期間5年分の保険料は返還されます。
※保険会社によって返還率は異なりますのでご注意ください。

2・補償内容を確認する

火災保険は火災以外にも、水災、風災、雪災等の自然災害や台風で屋根が破損し、それが原因で起こった雨漏り、盗難者が進入した際に破損した窓ガラスの修理代など、日常生活の補償を特約として付加することができます。

生活の補償についても全てカバーできれば安心には違いありません。
しかしながら、現在は保険料の引き上げが控えているので、各特約で想定されているリスクを検討し、必要のないものは外す、契約時から付加しないなど思い切って整理をして、保険料負担を減らしてみましょう。

日常生活にかかわる補償・特約で代表的なものは下記の通りです。

  • 高台の物件やマンション高層階の水害補償
  • 必要以上に高額加入している家財補償

火災保険はご自身の要望に合わせて、補償内容や特約をカスタマイズできます。

3・免責金額を設定する

火災保険では免責金額を設定することで割安に加入することができます。
例えば、免責金額を5万円で設定した契約の場合で100万円の事故があった場合、5万円が自己負担となり、残りの95万円が保険金として支払われます。
免責金額を高く設定するほど保険料は安くなりますが、その分自己負担も大きくなりますので、予算に応じた設定が必要です。

4・相見積もりをとる

火災保険は同条件でも保険会社によって保険料は異なります。
銀行やハウスメーカーなどで勧められた保険会社以外にも見積もりを取ることで、割安に契約できる可能性があります。

この機会に、上記見直しのポイントを考慮しながら、ご自身に見合った契約内容に変更されてはいかがでしょうか。

日本クレアスでは生命保険会社20社・損害保険会社12社をご案内でき、ご希望に合致する一番有利な保険提案が可能です。
プロの包括的観点でよりベストなご提案をいたします。
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IFRSにおける営業利益の開示義務化

BUSINESS EYE

中村亨の「ビジネスEYE」です。

国際会計基準(IFRS)をつくる国際会計基準審議会(ISAB)で、企業に「営業利益」の開示を義務化する方向で議論が進んでいます。
「営業利益」は日本の会計基準では決まった定義がある一方で、IFRSでは企業の裁量が大きく、投資家からは比較しにくいとの声も上がっていました。

今回のビジネスEYEではIFRSにおける営業利益の開示義務化について、現状と方向性を見てみましょう。
(参考:日本経済新聞2022年3月3日)

日本では大企業を中心にIFRS導入が進む

日本では2010年3月期からIFRSを任意で適用できるようになりました。
適用会社は大企業を中心に広がり、IFRS適用の上場企業(予定含む)は21年10月末時点で248社、時価総額で4割を超えます。
IFRSの適用によりグループ各社の会計基準がそろい、グループ内の業績管理がしやすくなります。

段階利益の開示や定義は企業によって異なる

IFRSの損益計算書(PL)は売上高に相当する収益や最終損益などの開示は求められますが、営業利益などの段階利益の開示や定義は、
財務諸表の利用者にとっての有益性を踏まえて企業が判断することになっています。日銀によると日本のIFRS適用企業のうち、1割は「営業利益」を開示していません。
また、「営業利益」を開示している企業もその内容にばらつきがあったり、その他独自の段階利益を使う企業もあったりするなど、財務諸表の利用者にとっては、IFRSの業績は同業企業同士であっても比べにくいものになっているのです。

世界でのIFRS適用会社は増加傾向

IFRSは世界共通の基準を目指し、会計処理の基本的な考え方だけを定める原則主義を採用しました。
導入以降普及は進み、2018年時点では、140以上の国や地域が強制適用しています。
しかし前述のとおり、段階利益の定義が異なることから企業間の比較がしにくいとの声が挙がっており、投資家からはファンドに組み入れる銘柄のスクリーニングや財務分析のためにも、比較可能な段階利益の表示を求める意見が多く挙がるようになりました。

ISABによるIFRS改革方針

こうした声を受けて、IASBは比較しやすいPLに改善するための審議を、数年前から進めてきました。
主なIFRS改革の方向性は以下の通りです(開始時期は未定)。

  • 営業利益は売上高、売上原価、販管費などから算出。日本基準の営業利益には影響しない減損損失も含むもよう。
  • 企業活動をPL上での営業・投資・財務の3カテゴリーに分けて表記。営業利益はこのうち営業カテゴリーの帳尻の位置付け。
  • 企業独自の重要指標である「経営者業績指標(MPM=マネジメント・パフォーマンス・メジャー)」について、規律や透明性を高めるルールを設ける。

これらの改革に対する日本の市場関係者の反応は様々です。
「企業分析の際の手間がなくなる」という声がある一方、「原則主義による裁量をメリットと感じていた企業にとって、多様な企業活動に合わせた業績表示が難しくなる」などの懸念の声も聞かれます。

現状日本では、上場会社でもIFRSの強制適用はされていないことから、この影響を受けるのはIFRS任意適用会社に限定されます。

しかしIFRSの任意適用会社は着実に増えてきており、同業他社がIFRS適用に踏み切ったタイミングなどで、
皆様の会社もIFRS適用を検討する場面を迎えるかもしれません。その際に困らないよう、新聞・書籍・セミナーなどを通じて定期的に情報のアップデートを行ってはいかがでしょうか。

◆お問合せ◆
株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング
電話:03-3593-3238
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【IFRS適用会社のためのM&Aセミナー】
2022年6月16日(木)15:00-16:30(オンライン or 来場)
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