好景気のときに「新しい良い投資先はないか?」と探し、不景気のときに、買値よりも安い値段で株を手放す。このようなことを繰り返していたら、あっという間に資産はなくなってしまいます。
Contents
投資で成功したければ暴落時に何をするべきか
投資を成功させるには?という質問に、1代で巨万の富を築いた著名な投資家ウォーレン・バフェットは、こう述べています。
「パークシャーが買いを入れるのは、他の投資家はレミングのごとく一斉に売りに傾くときだ」
パークシャーというのは、バフェット自身が経営している資産運用会社です。つまり、暴落時にこそ投資を成功させるチャンスがあるとバフェットはみています。実際、2007年のリーマンショック時に、株価が大暴落する中、バフェットは驚くような安い値段で株式(主にインフラ株)を手に入れています。その後の株価の推移を見れば、誰もがバフェットと同じ手法で投資を行えていれば……と考えるのですが、その当時の投資家たちは誰もかれも大きな含み損や売却損をかかえて身動きを取れず、同じような行動を取れる人はいませんでした。
暴落時の準備は好景気なときに
では、なぜバフェットはそんなことをできたかというと、2006年の時点ですでに株式市場の過熱感を感じていた彼は少しずつ持ち株の整理を始めて、2007年時点ではパークシャーの資産の中のキャッシュ比率を過去最高にしていたからです。それゆえに、含み損に悩まされることなく、バフェットは思う存分、バーゲン価格で買い物ができたのです。彼は独自の株価指標を持っており(バフェット指標とも呼ばれます)、株価がやや割高になっているのを敏感に感じ取って、それを直前のトレードに生かしていました。暴落を予知することはできませんが、割高水準に達した株を整理するのは、彼が決めていたルールだったので、日々のルールや習慣が彼に思いがけないチャンスをもたらしたと言えるでしょう。投資における準備の大切さについては、『株式投資は、準備が8割』の記事でも書かれています。
暴落を予知することはできるか?
人間が市場を支配しているかぎり、暴落は必ず起こります。その時は、右を向いても左を向いても総悲観ムード。リーマンショック(国際的にはFinancial crisisと呼ばれています。海外では、現行の金融システムが崩壊してしまう危機感が強かった)あのときの雰囲気を覚えている人には心当たりがあると思います。あの頃に投資活動をする勇気は、身体を逆さに振っても出てきそうにありません。
しかし、10年に1度は必ず金融業界はクラッシュを起こしています。システムは万全でも人間の心はオーバーヒートしやすく、興奮したら制御が効かないからです。「国が後押ししてるから絶対大丈夫、まだまだ上がる」「ニューヨークが上がってるから、いける」「仮想通貨が下がるわけがない」、必要以上の過信が生まれると、その根拠が失われた時、反動で市場は必ず暴落してきました。そして暴落は一度では済まないことは歴史が証明しています。ウォーレン・バフェットに並んで著名な20世紀を代表する投資家のジョージ・ソロスはこのように述べています。
「強気市場は小爆発にときおり見舞われながら続いていく。そうこうしているうちに、だれも小爆発を恐れなくなる。このときこそ、大暴落の条件が整ったときである」
歴史は繰り返す 暴落相場で起きること
私たちは、現実で起きたことしか体験することはできません。しかし、体験した人が残した日記や手記を読むことによって、それを追体験することができます。暴落時に冷静な判断をすることは難しいですし、好景気のときこそ、気分を引き締めるということはもっと難しいでしょう。過去の人の失敗や、過酷な状況に対してどう対処したかを本や映画を通じて学ぶことは、準備をするために最も効果的な手段のひとつです。
これから挙げる5つの作品は、いずれも暴落、破綻、倒産という金融史上におけるパニック時に人がどういう行動に出たかを記した記録です。しかし、どれも抜群のエンターテインメント作品ですので、気楽な感じでみても面白いことはいうまでもありません。極限状態の人間がどんな行動に出るか、とくとご覧あれ。
『ライアーズ・ポーカー』
「マネー・ボール」や「世紀の空売り」と近年も精力的に作品を発表し続けるマイケル・ルイスのデビュー作。債券市場の内幕を描いた本作は、金融マンの腹黒さや最低さを自らも債券のセールスマンという経歴を持つルイスらしいブラックユーモアを使って描かれている。なぜ、最初にこの本を紹介するかというと、市場には油断できない奴らがいて、常に騙されないように用心していても騙されるが、用心していないともっと騙される世界だということを肝に命じるためである。
『大暴落1929』
市場で暴落が起きるたびに増刷がかかる書籍。1929年ニューヨーク、世界大恐慌のきっかけからその惨状に至るまでをつぶさに描いたこのルポ作品は、大恐慌のときに人はどういう心理状態に陥るかを教えてくれます。1929年の世界恐慌は第二次世界大戦へのトリガーを引いたとも言われる歴史上のエピソードですので、教養としても知っておきましょう。
『ブラック・スワン』
世界の見方が変わる本と言われています。いわく、人間が関知できる世界は非常に狭く世界の広さの数万分の1でしかない。投資家として成功するためには、限界を知りその限界に背きさえしなければ大胆な投資ができると逆に認識できるようになります。予想外の出来事が起きたとき、心の弱さを克服できるかどうか、が投資の成否の分かれ道です。ちなみにタイトルのブラック・スワンとは、書籍の紹介文によると、〜むかし西洋では、白鳥と言えば白いものと決まっていた。そのことを疑う者など一人もいなかった。ところがオーストラリア大陸の発見によって、かの地には黒い白鳥がいることがわかった。白鳥は白いという常識は、この新しい発見によって覆ってしまった。「ブラック・スワン」とは、この逸話に由来する。つまり、ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象の意味である〜とのことです。
『ソロスは警告する』
ジョージ・ソロスが自分の投資哲学の中心をなしている再帰性理論について語った書籍。この本の中でジョージ・ソロスは、自分が成功したのは、再帰性理論のおかげであることを繰り返し述べています。ソロスは、2007年のリーマンショックの際にあらかじめ暴落を予知し、また暴落したときに何をすればよいかわかっていたともいいます。再帰性理論を説明をするには長い時間を要するので省略しますが、現役の株式トレーダーいわく、「再帰性の理論を知らないとトレードで損するんだろうな」と本気で思うそうです。
『マネートレーダー 銀行崩壊』
90年代に実際にイングランドのベアリングス銀行で起きた事件を基に、著者自身が染めた危険な手口を獄中で書いたという問題作。名門銀行であったベアリングスはこの不祥事のせいで倒産。デリバティブ取引の危うさと、現実を直視できないトレーダーが辿る道はいつも同じと納得させられる作品です。
さて、いかがでしたでしょうか。
歴史は常に繰り返します。過去の事例にそって、暴落時にどうしたらいいかを考えて準備しておきましょう。