「賠償金って払わなくても大丈夫なの?」に弁護士の答えは……

2022年1月18日

2024年5月31日

賠償金は踏み倒せるのですか?

元2ちゃんねるのひろゆき氏が裁判所から支払い命令が出た賠償金を億単位で踏み倒していますが、支払わなくても何の問題もないのでしょうか。踏み倒したいわけではないですが、なんとなく知っておきたいです。〈20代男性〉

大山弁護士に聞いた「賠償金を支払わないとどうなる?」

支払わなくてもよい賠償金などと言うものはありません。裁判所から支払いを命じられたら、支払い義務は生じています。その一方、現実には支払いをしない人もいます。

そういう人に対して法律は、強制執行という制度を擁しています。その人の財産を無理やり差し押さえて、取り立てをするということです。

ところが、この強制執行が現実に効果がない場合には、事実上支払わなくてもよいのと同じようになってしまうのです。

強制執行ができない場合もある。たとえば……

そもそも財産の無い人には、強制執行などできません。市営住宅に住んでいる生活保護の人など、その意味では「無敵」です。どんな法律上の賠償義務を負っても、現実に取り立てることなどできないからです。

さらに、たとえ財産を有しているとしても、その財産がどこにあるのか分からない場合も、強制執行は困難です。多くの場合、だれがどのような財産を持っているのか、分からないことが非常に多いのです。つまり、財産を隠されてしまうと、事実上強制執行が出来なくなるのです。

財産隠しに対して国も動き出している

財産隠しをされると、法的にいくら損害賠償が認められても、絵に描いた餅になってしまいます。そこで、財産についての情報を、損害賠償を請求する人にも開示しようという動きがあります。国がマイナンバー制度により個人の財産状況を明確に把握し、それを裁判での勝訴判決をした人に仕えるようにするなどの制度です。

現状でも、少なくとも税務署が把握している財産情報は、強制執行に使えるようにした方が良いという見解もあります。これらができるようになれば、国内にある財産については、強制執行できるようになりますね。それでは、元2ちゃんねるの人のように、国外に財産を持っている場合には対策はないのでしょうか?

逃げ隠れできない財産を持つことは信用を高める

かつての欧州の制度では、賠償金など支払えない場合には、処罰されました。それが嫌なら、借りてでも支払うしかないということです。現在もこういう制度があるなら、誰でも賠償金を支払うでしょう。ただ、こういう制度は人権侵害の問題もあるので、現実に認められることは期待できません。その一方、海外に全ての財産を持つということは、普通の人にはまず無理でしょう。

ただ、逆に考えますと、日本国内に、逃げ隠れできない財産を持つということは、その人の「信用」を高めることになります。賠償を逃げることではなく、逃げられないことをアピールする方法を考えた方が、ほとんどの人にとっては経済的にうまくいくのではと思っています。

この記事のライター

大山滋郎

横浜パートナー法律事務所代表弁護士(日本・ニューヨーク州弁護士)。日本企業に14年勤務した経験をもとに、会社の常識、一般人の見地で弁護士業務を行う。自らリスクをとる投資者の立場で不動産投資も積極的に行っている。月2回のメルマガ「企業の常識・弁護士の非常識」でも情報発信中。近著の「経営者の法律知識」はアマゾン音初心者向け法律書で売上1位。http://www.ypartner.com

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