「上司として指導したつもりなのに、パワハラだって言われちゃったよ…」
社会人になって5年が過ぎ、はじめて部下がついたAさんですが、うまく指導ができなくて困っています。しかも、部下から「それってパワハラじゃないですか」などと言われてしまい、どうやって指導をしていいのか分からなくなっています。
今の時代、だれもが「パワハラ」という言葉は知っています。
けれど、その中身を正確に説明できる人はどれだけいるでしょうか。社員への適切な指導と教育は、社員の成長のため、会社の成長のために不可欠です。
他方で、指導・教育のつもりが実はパワハラだとすれば、それも問題です。
そこで今回のコラムでは、パワハラにならない注意ポイントをお伝えし、どうすれば自信をもって指導していけるかをお話しします。さっそくですが、パワハラとは、職場での優位性を背景に、「業務の適正な範囲」を越えて相手に苦痛を与える行為を言います。
厚労省のホームページでもこれを丁寧に説明しており、典型的なパワハラを6種類上げています。
①身体的な攻撃(暴行・傷害など)
②精神的な攻撃(侮辱・暴言など)
③人間関係からの切り離し(仲間外れ・無視など)
④過大な要求(明らかにできないことを強制するなど)
⑤過小な要求(仕事を与えないなど)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入るなど)
参考:厚生労働省
けれど、パワハラはこれに限られず、他にもパワハラになる場合は多々あります。
ポイントは「業務の適正な範囲」を越えた指導かどうかがです。言葉では理解できますが、実際のところ、範囲を越えたかどうかはどのように判断すればよいでしょうか。会社や部署によって業種や業務は異なりますし、上司が指導する場面やケースも様々ですから、一言で説明することは難しそうです。
そこで私は、次のような視点をご提案しています。
①その指導目的は、本当に組織のためといえるか、
②その指導方法は、第三者が見てもフェアといえるかということです。
本来、上司は部下に対して、業務上の指揮監督や教育指導を行い、上司としての役割を果たすことが求められています。
ですから、指導の目的が社員のため会社のためであり、指導の方法が第三者目線でもフェアなものであれば、仮に部下が不満を感じたとしても、それは「業務の適正な範囲」の指導であり、パワハラには当たらないでしょう。
他方で、指導の目的が、実は部下の無能さを示そうというものであったり、指導の方法が、何か弁明や言い訳をしないとフェアだと説明できないようなものであれば、それはパワハラと言われても仕方がないといえるでしょう。
もうちょっと具体的に、気づきのポイントを見ていきましょう。
〈つもり〉→〈気づき〉→〈アプローチ〉という順番で並べてみます。
① 熱意を込めているつもりでも〈つもり〉
→ 押しつけになっていませんか?〈気づき〉
→→ 力を引き出すことに注力しましょう。〈アプローチ〉
② 何度も丁寧に言っているつもりでも
→ しつこくなっていませんか?
→→ 納得するのは自分でなく部下であることを意識しましょう。
③ 分からせてあげるつもりでも
→ 威圧的になっていませんか?
→→ その目的は組織のためになっているか振り返りましょう。
④ 仕事を覚えさせるつもりでも
→ 無理・無駄な業務ではありませんか?
→→ 部下に考えさせる機会を作ってみましょう。
⑤ ちょっとだけのつもりでも
→ 私生活に権限を持ち込んでいませんか?
→→ 自分が頼まれてもやる仕事か振り返りましょう。
こうした“気づきのポイント”をヒントに、ご自身の指導の目的と方法を再確認して頂くと、自信をもった指導、心のこもったコミュニケーションにグッと近づくことができます。
こうした手掛かりや視点をもとに部下と関わり、部下の成長を自分事のように喜べる関係になって頂くことを願います。きっと今より楽しい職場が待っています(^^)