退職一時金の税金・社会保険の負担は軽い! ただ……

2017年6月8日

退職一時金は給与等とは別途課税

退職金は一時金で受け取る場合分割払いで受け取る場合の税金が違うのをご存じですか?
退職一時金は退職所得として分離課税、退職金の分割払い(以下、退職年金)は雑所得(公的年金等)として総合課税されます。
所得税の税率は、所得金額が高くなるにつれて税率が高くなる「超過累進税率」を採用していますので、税負担は総合課税されるよりも分離課税のほうが軽くなることが一般的です。今回は退職一時金に係る税金と社会保険、そして複数の制度から退職一時金を受け取る場合の注意点を解説します。

退職一時金は3つの仕組みで税負担が軽くなる

退職所得は「分離課税」「退職所得控除額」「2分の1課税」の3つの仕組みで税負担が軽くなります。
分離課税は前述のとおり。
退職所得の金額は「(収入金額-退職所得控除額)×1/2」により求められます。
退職所得控除額は勤続期間に応じて適用できる「みなし経費」であり、
・勤続年数20年以下の部分は1年あたり40万円(最低80万円保証)
・勤続年数20年超の部分は1年あたり70万円
となります。
ちなみに、勤続年数の1年未満の端数は1年として扱うため、ちょっぴりお得です。
例えば、勤続年数30年7カ月の場合は「31年」と扱い、40万円×20年+70万円×(31年-20年)=1,570万円がみなし経費となります。
つまり、退職一時金が1,570万円以下であれば、所得税・住民税(所得割)は課税されず、退職金が2,000万円である場合、退職所得は(2,000万円-1,570万円)×1/2=215万円。
勤続年数に応じた退職所得控除額も大きく、超過累進税率の所得税において、分離課税であるため、総合課税に比べて税率が低くなりやすい。
さらに2分の1課税であるため、所得金額が2分の1となれば、税金は2分の1未満に。
ホントに一時金でも受け取りは有利です。

月給・ボーナスは総合課税で課税され、
厚生年金や健康保険等の保険料もかかる。
では、退職一時金は?

毎月受け取る給料、年に数回もらえる(かもしれない)ボーナスは給与所得(総合課税)となり、所得税や住民税が課税されるうえに、通常、厚生年金、健康保険、雇用保険等の保険料が徴収されます(年齢や給与・報酬により異なりますが、通常の給与等の15%程度)。
一方、退職一時金(退職所得)の所得税・住民税は前述のとおり。
さらに、厚生年金保険、健康保険、雇用保険は通常1円もかかりません。
つまり、社会保険の負担も大きく抑えられています。
また、退職した後、地域の国民健康保険に加入する場合、国民健康保険料の所得割の算定において、前年の給与所得は算定対象となりますが、退職所得は通常、対象外。
つまり、退職した後の国民健康保険料においても、退職一時金は優遇されているのです。
この点を考えると、退職金は一時金で受け取ると、税金・社会保険の負担が軽くなり、
手取額を多く残すことができる点で有利といえそうです。

2つ以上の退職金制度から
退職一時金を受け取る場合は要注意!
4年以内の受け取りは同時受取りのような扱いに

退職一時金は税金や社会保険の負担が軽いことを説明してきましたが、
2つ以上の退職金制度から退職一時金を受け取る場合には注意が必要です。
例えば、以下のようなケースです。
・ケース1 サラリーマンが勤務先から退職一時金を受取り、別途、企業年金や確定拠出年金等から老齢給付金(一時金)を受け取る場合
・ケース2 確定拠出年金と小規模企業共済から老齢給付金(一時金)を受け取る場合
実は、4年以内に2回以上、退職所得の対象となるお金を受け取ると、重複して加入する期間の部分について、退職所得控除額が少なくなり、所得税、住民税の負担が増える場合があります。具体的には、2回目に受け取る退職所得は、(1)から(2)の金額を差し引いた金額が後で受け取る退職一時金に適用できる退職所得控除額となります。
(1)その年の退職手当等についての勤続年数(1年未満切上げ)により求めた退職所得控除額
(2)重複している部分の期間を勤続年数(1年未満切り捨て)として求めた退職所得控除額
簡潔に言えば、退職所得の対象となるお金を4年以内に受け取ると同時受取りのような扱いとなるのです。言い換えれば、4年超の期間を空けて、退職所得の対象となるお金を受け取ると、加入期間に応じた退職所得控除の適用を受けられるのです。
事例:筆者の場合
小規模企業共済の加入期間 30年7カ月
確定拠出年金の加入期間  25年1カ月
重複加入期間       25年1カ月
例1 確定拠出年金の老齢給付金を61歳で受け取り、
小規模企業共済の老齢給付金(共済一時金)を65歳(4年以内)で受け取る場合
<確定拠出年金の退職所得控除額>
40万円×20年+70万円×6年=1,220万円
小規模企業共済の老齢給付金(共済一時金)の退職所得控除額
(1)(40万円×20年+70万円×(31年-20年)=1,570万円
(2)(40万円×20年+70万円×5年=1,150万円
(1)-(2)=420万円
小規模企業共済の老齢給付金に適用される退職所得控除額は420万円のみ。
例2 確定拠出年金の老齢給付金を60歳で受け取り、
小規模企業共済の老齢給付金(共済一時金)を65歳(4年経過後)に受け取る場合
<確定拠出年金の退職所得控除額>
40万円×20年+70万円×6年=1,220万円
小規模企業共済の老齢給付金(共済一時金)の退職所得控除額
40万円×20年+70万円×(31年-20年)=1,570万円
例1に比べて、退職所得控除額は1,120万円も多くなりますので、税負担も違いも数十万円から百万円単位で異なります。
退職所得控除額をフル活用するには、確定拠出年金が「先」、他の給付を「後」であれば「4年超」
他の給付を「先」、確定拠出年金を「後」で受け取る場合は「14年超」
上記の筆者の事例において、確定拠出年金の老齢給付金(一時金)を60歳、小規模企業共済の老齢給付金(共済一時金)を65歳で受け取れば、4年超の期間を空けることができ、退職所得控除をフル活用できます。
ただし、順番が逆になると注意が必要です。
つまり、他の給付を先に受け取り、その後、確定拠出年金の老齢給付金(一時金)を14年以内に受け取る場合は、確定拠出年金の老齢給付金の退職所得控除額について重複期間を計上できなくなります。
何とも理不尽を感じますね。
この制度に対する対策としては「14年超経過後に受け取る」ほか、「確定拠出年金を分割で受け取り、雑所得の公的年金等控除額を有効活用する」等が挙げられます。
平成29年1月から、公務員や国民年金第3号被保険者も含めて、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できるようになり、勤務先の退職一時金、企業年金だけでなく、確定拠出年金の老齢給付金(一時金)を受け取る人も増えると予想されます。
一般的に、退職一時金での受け取りは税・社会保険制度では有利と言えますが、2つ以上の退職金を受け取る場合には注意が必要!ということは頭の片隅に入れておいてくださいね。

この記事のライター

益山真一

ファイナンシャルアカデミー認定講師。「お金の教養スクール」で教壇にたつ。家計改善を得意とするファイナンシャルプランナー。國學院大學経済学部の非常勤講師も勤め、研修・セミナーの実績も多数。経済、景気等への感度が高く、株式投資では18ヶ月連続増益の経験もある。

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