老後の資金について、「最低3,000万円は残しておかないといけない」などと言われます。あるいは「夫婦2人で1億円は必要」と主張する人もいます。実際のところはどれくらいなのでしょうか。
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老後の生活資金は、毎月いくら必要か
総務省の「家計調査」(2016年)をもとに、現在すでにリタイア生活を送っている人の平均的な家計を見てみると、生活費は、夫婦の場合で約27万5,000円、シングルの場合で約15万6,000円となっています。もらえる公的年金の平均額などと相殺すると、夫婦の場合で約6万2,000円、シングルの場合で毎月約4万1,000円の赤字になっています。
つまり、すでにリタイア生活を送っている人で平均的な公的年金の支給がある方も、毎月これだけの金額を貯蓄から取り崩さなければ生活ができていない、ということになります。
老後に必要な生活費
毎月の年金支給額で足りない額から、必要な貯蓄額を出す
90歳まで生きると仮定し、公的年金が支給される65歳から25年間、毎月貯蓄を切り崩していくと、いくらのお金が必要になるかがわかります。
夫婦:取り崩す額が毎月約5万4,711円の場合 →総額約1,641万円
単身:取り崩す額が毎月約3万6,311円の場合 →総額約1,089万円
かなりの額のお金が足りないことになります。この金額にもしもの時のお金を加えると、リタイアするまでに夫婦で最低2,500万円、シングルで最低1,500万円は貯めておきたいところです。
ちなみに、この平均データに含まれる毎月の住居費は、夫婦で約1万4,000円です。持ち家で居住費がかからないケースも計算に入れているのでこのような少ない金額が平均となっていますが、住宅ローンが残っている人や、賃貸住宅に暮らしている人は、さらにその分も上乗せして貯蓄しておかなければなりません。
例えば、家賃が月10万円だとすると、10万円×12カ月×25年間=3,000万円を上乗せて貯蓄しておく必要があります。
貯蓄がない世帯は3割、貯めている世帯は1000万円以上
「2,500万円とか5,000万円とか、そんなお金は到底準備できそうにない」と言う不安の声が聞こえてきそうです。確かに50代といえば、住宅ローンの支払いがまだ終わっていなかったり、子どもの教育資金のラストスパートだったりと、なにかとお金がかかる時期。貯蓄がなかなかできないという家庭も多いようです。金融広報中央委員会が行った調査によれば、「金融資産非保有世帯」つまり、貯蓄なしの世帯の割合は30.9%、60歳代は29.3%となっているのが現状です。ほとんど貯蓄していない家庭も多くあることがわかります。
一方、次に挙げたグラフは「貯蓄あり」の世帯が、どれくらい金融資産を持っているかという調査結果です。全世帯の「平均値*」は1,615万円ですが、「中央値*」では950万円となっています。多くの世帯は何らかのかたちで1,000万円近くの金融資産を持っているということです。
年代別では、50代の平均値は1,650万円(中央値1,074万円)、60代の平均値は2,202万円(中央値1,500万円)となっています。
さきほど60代で貯蓄がない世帯は約3割ありましたが、貯蓄を持っている人は多額の金融資産を保有していることになります。これが、60歳以上が格差社会といわれる理由であり、老後資金の準備は少しでも早く始めておく必要があることを示しています。
50代からでも遅くない、将来の備え
もし、貯蓄額が1,000万円もない、あるいは全くないという人はどうすればいいでしょうか。絶望する必要はありません。まだ50代ならば、15年、20年と働ける期間があります。体力さえあれば一生現役で働くこともできます。そして働いて収入を得ながら、一方で生活を見直し、支出を削り、貯蓄をすればいいのです。
貯蓄額が少なければ、積極的に運用をしましょう。例えば毎年3%で10年間、複利運用ができれば、元本100万円が約134万円に、元本500万円なら約672万円になります。3%という数字は預貯金では無理でも、運用ならばそれほど難しくありません。老後資金はなくなると困るお金なので大きなリスクは取れませんが、預貯金などと組み合わせて、上手にお金を働かせていきたいところです。
さらに、リタイア後もただ取り崩していくのでなく、わずかでも運用しながら取り崩していくことができれば、貯蓄が底を突くのを遅らせることができます。まとまった金額の退職金を手にして初めて運用をしようとすると失敗する可能性が高いですが、今から少しずつ運用の練習を積んでおけば、その可能性も少なくなります。貯蓄のスピードアップという意味でも、トレーニングという意味でも、今から運用を始めることが重要です。
大切なのは、定年後の生活を不安に思ったり、憂いたりするだけでなく、行動を起こすことです。今、この記事を読まれているということは、少なからず情報収集する行動力があるという証拠です。ぜひ、その力を次のステップへとつなげてください。
20年、30年と続くセカンドライフを後悔のないものにするために、50代の今、現実をしっかりと見つめ、自分の価値観や思いと向き合っておきましょう。時間はまだ残されているのですから。