改めて知っておきたいiDeCo(個人型確定拠出年金)とは?

2017年5月25日

おでこ? いでこ? と、CMを目にした方も多いのではないでしょうか。何かと耳にする「iDeCo(読み方:イデコ)」がどういうものなのか人に説明できますか? 個人で運営する年金でしょ?節税できるらしいけど自分には関係ないかも?……など、なんとなくはわかっていても説明できるほどではない人も多いはず。そこで、なかなか人には聞きにくいiDeCoの仕組みについて、日米で公認会計士の資格を持つ森井じゅんさんに詳しくお聞きしました。

iDeCoとはどんなもの?

iDeCoとは、個人型確定拠出年金の愛称で、個人でできる年金の上乗せです。英語のindividual-type Defined Contribution pension planの略で、個人型DC、個人型401kとも言います。
iDeCoは、自分で毎月決まった額を積み立て運用するもので、国民年金や厚生年金といった公的年金にプラスして老後の備えを充実させるための制度です。

ねんきん定期便などで、将来の年金支給見込額が思ったよりも少なく、老後の備えを考え始める人も多いようです。将来の収入や退職金への不確実性が増す中、老後の生活のために自分で積み立てる自分年金に注目が集まっています。
iDeCoは、加入者が、毎月一定額の掛金を拠出して運用するもので、運用結果次第で将来受け取れる年金が変わってくる制度です。メリットは何より節税です。積立、運用、受取の3段階で節税効果があるのです。また、公的年金とは異なり、自身で運用方針・運用方法を決めることができます。さらに、受取時には年金のように定期的に受け取ったり、退職金のように一括で受け取ることも可能です。
実は個人型確定拠出年金制度は2001年にできた制度ですが、対象が限られていました。しかし、年金制度や老後への不安を背景に、2016年にiDeCoという愛称により国をあげて認知を広め、2017年1月より対象者を広げることで、より多くの人が自ら老後に備えることを推奨することとなったのです。

誰でも加入できるものですか?

2001年10月から始まった個人型確定拠出年金制度ですが、これまでは自営業者や企業年金等に加入していない会社員のみが対象でした。しかし、2017年1月から加入できる人が大きく拡大し、原則20歳から60歳までの公的年金に加入するほぼすべての方が加入対象となりました。企業年金に加入している会社員、公務員、専業主婦(夫)の方もiDeCoを利用できるようになったのです。
ただし、それぞれの立場により、拠出限度額は異なります。例えば、自営業者であれば上限はこれまで通り月68,000円ですが、企業年金のない会社員及び専業主婦(夫)は月23,000円、公務員は月12,000円等となっています。
ちなみに、iDeCoは公的年金に上乗せされる年金制度なので、国民年金を払っていない方・国民年金の保険料納付を免除されている方は加入できません。

iDeCoにはどんな種類があるんですか?

iDeCoには様々な運用商品があります。定期預金や保険商品、投資信託(国内株式、外国株式、国内債券、外国債券など)などから選ぶことができます。また、それらを組み合わせた運用商品もあります。
運用にはリスクが伴います。期待どおりの収益が上がらない場合がありますし、支払った元金を割り込み損をする可能性もあります。自身のリスク許容度を検討し、運用方針を決める必要があります。例えば、金利はほとんどつかなくてもいいから、資金が減ることは避けたい、と思う場合には、定期預金など満期時に元本を割り込まないような元本確保型の商品を選ぶとよいでしょう。
しかし、iDeCoの大きなメリットの一つに、運用益の非課税があります。つまり、利益が大きいほど運用益非課税のメリットの恩恵があり、安定性を重視した定期預金ではそのメリットがあまり活かせないといった面もあります。
特定非営利活動法人運営のiDeCoナビではホームページで手数料のランキングなども出しています。手数料や商品の種類などを参考にして、自分の運用方針に合った商品や金融機関を選んでください。

iDeCoにはどうやって加入する?

iDeCoへの加入を考えた場合には、まず、金融機関を選ぶことがスタートです。iDeCoを扱っている金融機関は、銀行や証券会社、信託銀行、保険会社など様々であり、金融機関により手数料や運用商品が異なります。
また、一度スタートしてから金融機関変更で資産を移すためにはいったんすべての商品を売却する必要があるなど、事務手続きも煩雑となります。それに伴い手数料がかかったり、商品の市場価額の変動により資産目減りのリスクもあります。そのため、スタート時の金融機関の選定は慎重に行う事をお勧めします。
iDeCoを取り扱う金融機関は現在150を超えます。まずは手数料の安い複数の金融機関から資料を取り寄せてみてください。加入にあたり、会社に記入してもらう書類などがあるケースもあります。まずはどんな商品があるのか金融機関の資料や問い合わせをしてみるとよいでしょう。
iDeCo加入に関して注意することは?
・イデコは、自ら商品を選び、掛け金を拠出して運用していきます。運用の成果は、選ぶ商品によって大きく変わります。そのため、損をする可能性ももちろんあります。
・iDeCoは、60歳以降に年金または一時金で受け取るものです。つまり、途中で解約したい・引き出したいと思っても、基本的に60歳になるまで引き出すことはできません。
・現在、どこの金融機関でスタートした場合でも、開設時に2,777円かかります。また、年間の手数料として、①国民年金基金連合会に1,236円、②口座管理手数料など、③事務委託先金融機関手数料として年間768円という3つの手数料がかかります。 ②の手数料は金融機関により異なり、条件によりゼロとなることもあります。しかし、iDeCoをスタートしたらどういった状況であっても、少なくとも年2,004円はかかります。
また、現在凍結され2020までの凍結が決定している特別法人税にも注意が必要です。将来いつ凍結が解除されるか分かりませんが、解除されれば確定拠出年金の積立金の全額に一律1.173%の特別法人税が課税されます。解除された場合には運用損が出ていたとしても、資産の全額に毎年税金がかかってくることになるのでその影響は大変大きいです。
iDeCoの賢い利用法があれば教えて
iDeCoの一番のメリットは節税効果です。iDeCoは拠出金が全額所得控除となるため、所得が大きく適用税率が大きければ大きいほど、拠出金が大きければ大きいほど節税効果は大きくなります。節税効果と言っても所得税住民税が小さくなるだけではありません。たとえば、課税所得をベースとして算定する子供の保育料など、公共サービス関連の費用にも影響してきます。
逆に、課税所得が低い人は、拠出時の節税効果はゼロもしくは低いですし、年金や退職金が大きい方でなければ退職所得への節税効果も心配しなくていい人もいるでしょう。例えば、扶養の範囲内で働いている主婦などは、拠出時のメリットや退職時の節税効果は大きくないでしょう。そのようなケースではiDeCoのメリットは運用益の非課税がメインになります。
しかし運用にはリスクがつきもので、益が出るとは限りません。本来、投資で損が出た場合には、他の投資で得た利益と相殺したり、翌年以降の利益と相殺して税金負担を軽減することができます。しかし、運用益非課税のiDeCoで損が出た場合には、損の相殺や繰延もできません。
また、一番のデメリットである、60歳以降まで引き出すことができないという点も重要な一面です。何よりも、自分自身へのメリットとデメリットをしっかり検討してから加入することです。節税効果・手数料・リスク・引き出すことができない時間などを総合的に勘案して決めてください。

この記事のライター

森井じゅん

公認会計士/米国ワシントン州公認会計士/税理士/FP。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行っている。http://www.horipro.co.jp/moriijun/

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