年金の振込みが6万円以上も減額。それは忘れた頃にやってくる

2019年1月7日

公的年金の振込みは2カ月に1度。振込日にお金を引き出したり、通帳を記帳したりする方は多いことでしょう。そんな中、血相を変えてご相談にいらっしゃる方がいます。「通帳を記帳したら年金の振込みが急に減っていた! しかも6万円以上も。何かの間違いじゃないのか? 」振込み額が6万円以上減ったとは大ごとです。
しかし、一体どうしてそんなに減ってしまったのでしょうか? 今回はその謎について解説しようと思います。

振込額が急に減ってしまった。なぜなのか?

公的年金は老後の大切な生活費ですから、ちょっとした金額の変化にも敏感になっていらっしゃる方は多いです。そのため、年金の振込額が大幅に減ったことで、かなりお怒りの状態でご相談にいらっしゃるケースもよくあります。
「振込額が急に6万円くらい減った。いくらなんでもやり過ぎじゃないのか? これじゃあ生活に支障が出る」減らされたお金を返してほしい、そんな思いがひしひしと伝わってきます。振込額が6万円近く減った、という発言を聞いて私はピンときました。ご相談者にクールダウンしていただくため、私はあるご質問をしてみました。「最近、奥様は65歳になりませんでしたか? 」と。
すると「え? 何でわかったんですか? それが何か関係があるのですか? 」となり、少しだけこちらのお話しを聞いていただけるような雰囲気になります。今回の減額の理由。それは加給年金額。老齢年金に加算されていた加給年金額が終了したため、振込額が急に減ってしまったのです。

そもそも加給年金額とは?

老齢年金には、加給年金額という手当が加算されることがあります。年額で389,800円(2018年度の金額)。2カ月に1回の振込みでは約6万5,000円になります。なかなかの金額ですね。ただし、誰でももらえるものではありません。加給年金額をもらうためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。皆さんもご存じの通り年金制度はかなり複雑です。
そこで、一般的な例でお話を進めていこうと思います。ざっくりですが、条件は以下のようになります。
加給年金額をもらえる人の条件は、20年以上厚生年金保険や共済組合等に加入していること。
配偶者の条件は、年下で年収や所得が一定額以下であること。
これらを一般的な例に置きかえてみると、夫は20年以上勤務、妻は年下で専業主婦またはパート主婦の期間が長かった、ということになります。この場合、夫が65歳になってから妻が65歳になるまで加給年金額が加算されることになります。
(加給年金額の支給イメージ図)

今回は一般的な例を紹介しましたが、実際は例外などもありとても複雑です。加給年金額がもらえそうかどうかは自分で判断しない方がよいでしょう。年金事務所などで相談や手続をした時に教えてもらえますから、その際に詳しい説明を受けるようにしてください。

いつまでも もらえると思うな 加給年金額

加給年金額自体はうれしい制度なのですが、何が問題かというと、ずっともらえるものと勘違いしてしまうケースがあるということです。加給年金額をずっと上乗せしたままの金額で生活設計を立ててしまうと、加給年金終了後にびっくりしてしまう、生活設計が狂った、ということになってしまいます。年金事務所で手続きや相談をすると、加給年金額の説明も受けることができます。しばらくは覚えていても、年金をもらえるようになってから何年かたつとそんな話は忘れてしまうことが多いでしょう。
でも、それは仕方のないことだと思います。このようなことを防ぐためには、加給年金額が終了した後の年金額を知っておくことです。具体的にいうと、夫婦それぞれが65歳になった後、例えば年の差が3歳であれば、夫68歳時、妻65歳時の年金額を知っておく、ということになります。夫婦それぞれの65歳以後の年金の見込み額は、最寄りの年金事務所やねんきんネットなどで知ることができます。自分の年金額を配偶者に教える、というのは少し抵抗があるあもしれませんね。
しかし、夫婦ふたりの年金を合せても生活していくのが難しい時代に入りつつあります。しっかりと先を見据え、年金収入で足りない部分はどのようにしていくのか? 夫婦で話し合っておく必要があると思われます。

まとめ

加給年金額はずっともらえるものではありません。将来の生活設計を立てる時は、加給年金額が終了した後の金額を参考にするようにしてください。その際、夫婦それぞれの年金額を合計する必要があります。それぞれの年金額を把握するきっかけとしては、どちらかが年金をもらうようになった時、そろそろ老後の生活設計もしておきたいと感じたとき、などがあるでしょう。

この記事のライター

浜田裕也

社会保険労務士
ファイナンシャルプランナー
社会保険労務士会の業務委託で年金相談の実務にも携わるようになり、その相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請の仕方のアドバイスには定評がある。
日本でいちばん簡単な年金の本(洋泉社 第3章監修)
転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話(SB新書 監修)がある。

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