豊かな老後生活を送るための私的年金制度である個人型確定拠出年金(愛称iDeCo)は、制度を司る国民年金基金連合会が公表したデータによると、令和6年8月末時点で340万人以上の人が加入し、着実に制度のすそ野が広がってきています。そこで今回は、iDeCoを更に有効活用すべく、加入者が海外在住になった際の対応を解説します。
Contents
iDeCoの加入条件と喪失ケース
確定拠出年金に関する法改正が行われたことを受け、iDeCoに加入できる条件が緩和されており、現在は日本国内に居住している20歳以上60歳未満の全ての人がiDeCoに加入できるようになりました。より多くの人がゆとりある老後生活を送るために、iDeCoの積極活用が促されている状況です。
一方で、現状においてはiDeCoの加入喪失年齢は60歳となっていますが、60歳を超えても働く人が増えていることに加え、先細りする国民年金や厚生年金を補う制度として機能させるべく、iDeCoに65歳まで加入できるよう確定拠出年金制度の大幅な見直しが図られる見通しであります。
また自営業者やフリーランスなどの国民年金の第1号被保険者で農業者年金の被保険者や国民年金の保険料納付を免除されている場合、もしくは勤務先の企業で企業型確定拠出年金に加入しているケースではiDeCoに加入することができません。ただし、企業型確定拠出年金規約にてiDeCoに同時加入することが認められている場合には加入することが可能です。更に海外転勤などにより国内非居住者となった場合も、iDeCoの加入資格を喪失することになります。
非居住者がiDeCoを継続できる条件
ただし、国内非居住者であっても国民年金の第2号被保険者として、日本企業と雇用関係にあり、厚生年金保険に継続的に加入していれば、iDeCoの掛け金の拠出および運用を行うことができるケースがあります。そのため、赴任期間や各種必要手続きなどに関して勤務先の企業に確認するようにしましょう。
非居住者が口座を維持できるケースもある
また海外在住により一時的にiDeCoの加入者資格を喪失し掛金を拠出できなくなってしまったとしても、これまで積み立てた資産の運用のみを行うことは可能です。つまり、事前に加入者資格喪失届を提出したうえで、海外在住の際は運用指図者として積立資産の運用だけを行い、その後日本に帰国した場合、所定の手続きを踏んで再びiDeCoの加入者として運用を再開することもできます。
一時的に海外滞在、日本の証券口座の取引は可能?
なおiDeCoに加入する金融機関によって非居住者への対応が異なってきますので、非居住者となる際は必ず自身が加入する金融機関に問い合わせするようにしましょう。たとえばiDeCoの加入者を多く抱えるSBI証券では、非居住者は運用指図者としてiDeCoを継続的に運用できますが、永住する場合は証券口座を閉鎖する必要があるようです。また証券業界の雄である野村證券でも、一時的な出国に関しては、事前に必要書類を提出しておけば、引き続き運用指図者として積立資産の運用は可能なようです。
海外在住は拠出できないので注意しよう
最後となりますが、国民年金のみ加入する自営業者などが海外在住となる場合、iDeCoでは掛金を拠出することができなくなります。iDeCoは拠出時・運用時・受け取り時の3段階にわたって税制優遇を受けられる大きなメリットを有した制度であり、効率的な資産形成を実践することが期待できます。海外勤務や海外移住を含めてご自身のライフプランを計画する際には、併せてiDeCoの加入状況も金融機関に問い合わせて確認するようにしましょう。
参照:国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数等について」
iDeCoの特徴
<!– 「加入者・運用指図者の手引き」
–>日本経済新聞「確定拠出年金、65歳まで加入可能に 厚労省が見直し」
SBI証券「海外転勤等の理由により出国(非居住)される方への対応について」