投資について学べる学校・ファイナンシャルアカデミーの「株式投資スクール」で講師を務める藤川里絵さんに、ご自身の株式市場への向き合い方を語っていただきました。
昨年の11月以降、好調が続いた相場が一服をついた4月相場。上昇後の調整かと思いきや、さまざまな懸念事項が一気に噴出したリスクオフも重なり、なかなか難しい相場環境だったようです。そんな難しい相場環境を藤川講師はどのように切り抜けたのでしょうか。
逆指値がささりまくりで損切り損切りの毎日
今年の始めに、毎月の株の利益目標を設定し、3月までは順調に達成できたのですが、4月に入ってガラッと様相が変わりました。トランプ相場で米株も日本株も上昇基調だったのですが、彼に対する期待感が失望に変わりつつあることと、北朝鮮のミサイル問題などもあり、株価は大きく低迷。日経平均株価は、4/3(月)から21(金)までに上昇して終わった日はたった5日だけという惨状でした。
わたしの保有株も散々で、毎日のように下がっていきます。こういうときの気分はほんと最悪で、ついつい誰かに当たりたくなります。(被害者は娘たち)
この期間中の株スクールの授業では「こういうときは売ったほうがよいですか?」という質問を多くいただきました。とてもむずかしい質問ですが、わたしの答えは「自分で最初にここまで下がったら売るというラインを割ったらいったん売りましょう」です。もちろん売ったあと相場が改善され、戻ってくるということも充分考えられます。その場合はとってもくやしいですが、また買いなおしてもよいのです。
実際、わたしはこの期間に大量に損切りしました。おそるおそる売買履歴を確認すると3ヶ月でコツコツ積み上げた利益のほとんどは4月のたった2週間で失っていました。(涙)
わたしの場合は、過去3日間の最安値のラインを割ったら売るというマイルールを作っていて、毎朝、そのラインで逆指値の注文を出します。調子がよいときは、ほとんど逆指値がささることはないのですが、今回の相場では毎日のようにささりました。ささりまくりました。(号泣)
日々の売買で意識するのは勝つことよりも大きく負けないこと
これはわたしが日々記録している株ノートです。2805エスビー食品の売買履歴ですが、マイルールに従って売買した結果、トータル50,640円の損失です。5万円の負けはもちろんくやしいのですが、トータルの購入金額は、約270万円なので、ほんの2%の損失ですんでいます。もしこれを売らずに放置していたら、今現在(2017.4.25)株価は5,700円程度なので、損失は25万円以上に膨らんでいます。そう考えればわたしは負けてないのです! こういう荒れた相場でもマイルールに従ったという意味で、わたしはわたしの弱いこころに勝ったと言ってもよいのではないでしょうか?
その後、相場はやや戻してきましたので、ここで売ったお金でほかの上がりそうな銘柄を買うことができました。もしエスビー食品を保有していたら、おそらく評価損が消えるまで売れずに保有することになり、ほかにいい銘柄を見つけても予算不足で買えなかったと思います。
自分のこころに従わず、ひたすらマイルールに従うこと。
人は損するのが大キライなので、勝った株が下がってくると損失を確定せず、ただひたすら上がれ上がれと念じます。念じても上がってはくれません。ますます損失は大きくなるばかり。もっと早く売っていればと後悔しつつ、さらに損失を大きくしてしまうという悪循環です。
この心理状態は、個別の性格によるものではなく、たいていの人に当てはまります。行動経済学では『プロスペクト理論』と呼ばれ、人は損をすることが嫌いなばっかりに、余計に損を大きくしてしまうというこころのクセを持っています。
たとえば10万円利益が出たときの喜びを1とすると、10万円損したときの悲しみは3〜5に感じるのです。
投資をする上では、自分のこころに素直に従っていては、いつまでたっても勝てないダメ投資家になってしまいます。そうならないためには、どれくらい下がったら売るか、どれくらい上がったら売るか、買うときにしっかりと出口を決めておき、そのルールを徹底的に守るということです。いざその株価になったら売りたくない気持ちが邪魔しますので、自動売買で事務的に処理するのがよいでしょう。そうすれば小さく負けて大きく勝つグッド投資家になれるはずです。