ヘッジファンドとは? 株式相場に居座る荒ぶる巨人たち

2017年8月4日更新

株式市場や為替市場で畏敬の対象とされているのがヘッジファンドの存在。ヘッジファンドは巨額の資金をバックにマーケットで縦横無尽に活動していますが、その動向はほとんど一般投資家には伝わってきません。唯一の手がかりといえば、いびつな形のチャートにその痕跡をみることができるだけです。

個人投資家VSヘッジファンド

「うわー、嵌め込みされた!」
「株価が蓋をされてるなぁ」
「これは売り仕掛け。我慢の仕込み時です」
Twitterで株関連ワードや銘柄名を検索したら、このような個人投資家たちのつぶやきで溢れています。これらのつぶやきの主語はおそらく「ヘッジファンド」。個人投資家にとって、ヘッジファンドの存在は、自由に株価を上げ下げしているように見える万能の存在、まさに畏敬の対象です。個人投資家は蛇に睨まれた蛙のごとく無力で、その痕跡からヘッジファンドの意図を読み解きコバンザメのように後ろについていこうと考える者、「触らぬ神に祟りなし」と一定の距離を置こうと考える者がいます。彼らの力の源は、その巨大なマネーです。巨大なマネーがあれば、株式市場で株価を「買い支え」、「売り浴びせ」して、株価を意図的に動かしチャートを作ることが可能だからです。

ヘッジファンドの資金量

現在、世界中に数千とあるヘッジファンドが運用している総資金量は300兆円超と言われています。それぞれのファンドは市場に合わせて資金サイズを調整しており、日本株市場であれば平均20億円〜100億円の資金サイズで運用しています。この資金サイズで小回りよく様々な銘柄を売買するのが最も効率が良いそうです。

機関投資家とヘッジファンドのちがい

よく混同されがちですが、機関投資家とヘッジファンドは異なります。
機関投資家というのは保険会社や年金(GPIF)など大口資金の運用を主としておこなっており、運用目標は、TOPIX+数%など保守的なものが多いです。資金量はヘッジファンドよりもずっと大きいため、その存在感を喩えてクジラと呼ぶ相場関係者もいます。
一方、ヘッジファンドは、資金を様々なルートから集め、それを積極運用しています。トレードスタイルは売りも買いも両方柔軟に行っており、いわゆる値幅を取る(上下の値動きで利益をあげる)トレードを行っています。運用目標は、“とれるだけ全部”です。(基本トレードは短期売買が中心) 機関投資家がクジラなら、ヘッジファンドは小気味よく獲物をハントするシャチの軍団です。

安い場所で買って高い場所で売りぬける手法

一口に安値買いの高値売りといっても様々な手法があります。今回は、ヘッジファンドが行う代表的な手法である「振るい落とし」について解説します。
たとえば、ある銘柄の株価を上昇させて儲けたい場合、安い場所で買い集めておいて、意図した瞬間に上値を追うように買い上がれば一般投資家の注目を集め(提灯買い)、高値で売り抜けることは可能です。
しかし、この手法では材料がなければ、株価の上昇に期待する提灯買いも少ないでしょう。買い上がったからといって、自分よりも高値で買う投資家がいなければ利益を得ることはできません。ヘッジファンドはもっと大きく稼ぐためにいわゆる「振るい落とし」という手法を使います。

投資家心理を利用した株の底値集め

キーワードは「浮動株」。株価が上昇するかしないかは、浮動株の市中在庫の数によります。超絶好材料が出たとしても、市中に浮動株の在庫がだぶついているようであれば、誰もが株を買うことができ、株価の上昇を期待できません。
浮動株を減らすために、ヘッジファンドは意図的に上昇を仕掛けたあとに株価を下落させます。すると、その下落を見た他の投資家達は天井だと思ってどんどん持ち株を売っていきます。ヘッジファンドはその売られた株式を拾っていくのです。そして、再び上昇を仕掛け、また下落させる。そうして、投資家心理を揺さぶって、株価を上下させます。
やがて、市場に出回っている浮動株は、どんどんヘッジファンドの元に集まっていき、浮動株は少なくなり、最終的には売り圧力が少なくなり、上値が一気に軽くなります。これで株価が暴騰する準備は万端です。
喩えるなら、パンパンにヘリウムガスで膨らんだ風船を両手に持っている感じです。きっかけさえ、あればあっという間に空まで飛んでいきます。次に買い仕掛けをして株価が急騰したとき、市中に浮動株はなくなっており、やがては株の奪い合いが生じ、株価は一気に上値を突き抜けるような暴騰をみせます。

マーケットの徒花的存在

何度も仕掛け的に行われる株価の下落がいわゆる「振るい落とし」です。
しかし、この手法は研究され尽くしているので、必ずしも成功するとは限りません。個人投資家がしぶとく、思ったように浮動株を集められない場合もあります。振い落としの幅は一般的には高値の−20%と言われていますが、浮動株が思ったように集められない場合は、追証の発生する−30%まで株価を下げさせることがあります。
上値で飛びついた個人投資家にとっては、なかなか厳しい下落です。いつまで続くかわからない株価の下落にメンタルが揺らぎ、悩んだ末に、手放した価格が底値だったというのは、よく聞く話です。一部の個人投資家がヘッジファンドが手がける銘柄を敬遠するのは、このように理屈では説明できない株価の下落があるためです。
今回は、ヘッジファンドの手法の「振るい落とし」について書きましたがいかがでしたでしょうか。彼らの手法は株式投資の王道からは外れたものです。しかし、資金を運用する術に長けた彼らのおかげで資金が株式市場に集まるという面もあります。一概に是非を問えないマーケットの仇花的な存在ではありますが、彼らのような存在もまたマーケットを構成する重要な一要素であることを肝に命じて、株式投資に取り組んでいってください。

この記事のライター

ルウ・ハイアン

文筆家・歴史家として各メディアに寄稿。投資家としての側面も持ち、投資界隈の話題には事欠かない。また経済のトピックを誰にでもわかるように話す技術には定評がある。映画や書籍、または海外ゴシップにも精通している。日本語の他に、中国語・英語も堪能。

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