東京証券取引所は中央区兜町(かぶとちょう)にある。昭和の昔、多くの証券会社が軒を並べ、バブル時代から平成不況までの盛衰を骨の髄まで味わった町、兜町。いまは、全ての取引が電子取引にとって替わり、その頃の活気は見られませんが、頑丈な石造りの建物が多く、真夏なのにひんやりとした風が通り抜けるのを感じると、フッと撃柝(ゲキタク:取引成立の時に叩かれた木製の拍子木)の音が聞こえる気がする。夏草や、兵どもが夢のあと。
アクセス
兜町という駅はなく、最寄りの駅は日本橋(地下鉄・銀座線)もしくは茅場町(地下鉄・東西線)です。日本橋方面から歩いて東京証券取引所を目指すと、公証役場や賞状屋(昔は株券を刷っていた模様)など、普段見かけない商売の看板を多く見ることができます。
町名の由来
江戸時代、兜を作っている職人さんがたくさん住んでいたから兜町なのかな、と思っていたら、実はそれよりずっと前の平安時代に、源義家が前九年の役のときに兜をかけた岩があったことから、兜町という名前がつけられたそうです。その岩のあった場所には、現在、兜神社が鎮座しています。
証券取引という伝統芸能
東京証券取引所内部は、現在観光スポットとして解放しています。西玄関が一般の見学客用の入り口になっています。(見学は無料です)荷物検査を済ませると、右側すぐのところに史料館があります。
(会社の研修で来た団体客がほとんど)
(史料館では相場の歴史について、さかのぼってレクチャーしてくれます)
なかでは、昔の相場の様子を記録したVTRも流れています。手振り(指サイン)や呼び声など、見ても聞いても全く意味がわかりませんが、撃柝と呼ばれる拍子木を叩く甲高い音が響きわたる市場の様子は、まるで伝統芸能のように様式美にあふれ、緊張感と活気に満ちた雰囲気をいまに伝えてくれています。
〇相場豆知識〇
戦前の相場では、株の取引はほとんど行われず、大坂堂島から引き継いだ先物取引が中心だったそうです。最初期は、相場が開かれている時間もはっきりと決まっておらず、火のついた火縄が燃え尽きるまでときめられたことから、火縄相場と言われていたそうです。
東京証券取引所のアレは2階に
東京証券取引所の2階へエスカレーターですすむと、目の前に、よくテレビで見るアレが見えて来ます。
銘柄名と価格が円形状の電光掲示板をくるくると回ります。実は、この掲示板の銘柄は取引が成立した銘柄が次々と流れてくるシステムです。そのため商いが細ければゆっくりと流れ、商いが膨らめばものすごいスピードで回転することになります。
日本取引所グループの社員の仕事はマーケットの監視です。不正な取引が行われていないか、常にマーケットを監視しています。
株式市場とは関係ありませんが、ネット上ではあやしい金融商品がたくさん出回っていますので、騙されないように注意してくださいね。
株式投資体験コーナー
子どもが行ってもなかなか楽しめない東証ですが、唯一楽しめるスポットは、株式投資体験コーナーでしょうか。とうしくんという牛のキャラクターに見守られた一角には、専用パソコンがならび、簡易的な株式投資を体験できます。
この株式投資体験ソフトは単純な仕組みで、3つの銘柄がランダムな値動きをするのに対して、手持ち資金1,000万円で銘柄の売買を繰り返し資金を増やしていくというゲームです。やってみると、これがなかなか難しくて面白い。株価の値動きが予想以上に早くて、一瞬の判断が勝敗の分かれ目になります。東証に来たら一度体験してみてはいかがでしょうか。(時間制限あり)
兜神社のお守りは東証でしか買えません
さて、お土産グッズは東証の受付横の自販機で買えます。ノートやボールペンから、ピンバッジまで、いろいろなお土産が揃っています。まるで私立大学の学校グッズのようなラインナップですね。どれも「JPX(日本取引所グループ)」のロゴが入っています。この自販機では意外なものも売っています。それは、兜神社のお守りです。実は、このお守りですが兜神社では売っておらず、ここでしか買えません。お守りの効果はもちろん商い繁盛です。投資家なら持っておきたい必勝アイテムですね。
東証では、9:00〜16:30までなら無料で見学解放しています。(年末年始・土日祝祭日を除く)投資家なら一度見に行ってみると面白いかもしれませんね。
http://www.jpx.co.jp/learning/tour/arrows/01.html
〇おまけ〇
兜町の名物喫茶店「メイ」は、2016年の10月に閉店したようです。サンドイッチが名物でトレーラーハウスのような店内でした。兜町で50年のれんを守り続けて来た建物だけはまだひっそりと東証横に佇んでいます。
50年間、日本の株式相場を見守ってきた喫茶メイ