最近、一気に値上がりし、何かと話題のビットコインを始めとする暗号資産。でも値上がりして得た利益には税金がかかってきます。株と同じように考えている人も多いですが、そこには大きな違いがあるようです。
日米で公認会計士の資格を持つ森井じゅんさんにお聞きしました。
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ビットコインなど暗号資産にかかる税金というのは?
新たな投資先として注目を浴びる暗号資産。儲かるチャンスかも、と期待する人も多い一方、気になるのは税金ですね。ヒントになるのは国税庁の公表するタックスアンサーと暗号資産に関する所得の計算方法です。
国税庁の見解によれば、ビットコインをはじめとする暗号資産の使用により得られた利益は、原則として、雑所得として課税されます。
所得税の計算上、所得は10種類に区分されています。例えば、会社員として働いて得る給料は給与所得、自営業者が得る収入は事業所得、株の取引は譲渡所得といった具合です。
そのほかの9種類のいずれにも当てはまらない所得が雑所得であり、「その他の所得」、といったイメージです。会社員の方であれば、副業として得た原稿料や講演料、事業規模でないアフィリエイトや転売による収入といったものが雑所得にあたると考えていただけるとわかりやすいかと思います。
具体的な計算方法は、得られた収入から手数料などの必要経費を差し引いて雑所得を算出します。その雑所得を給与所得等他の所得と合算し、所得税率を掛けて計算します。
所得税は累進課税という制度で、所得が大きくなればなるほど税率も上がります。所得に応じて5%から最高45%の税率が適用されます。
ちなみに、税金は所得税だけではありません。一律10%の住民税もあります。利益が大きい場合には半分以上は税金だと考える必要があります。また所得は健康保険料などにも影響するので注意が必要です。
株や配当金などの税金との違いは?
株の投資で利益が出たときにももちろん税金がかかります。具体的には、株を買った値段より高く売れた場合、その譲渡益に対して、そして配当金を受け取った場合は、配当金に対しても税金がかかります。しかし、株や配当については所得の区分が異なり、税金の計算方法も異なります。
具体的には、税率・納税方法に加え損益通算・損失の繰越控除について大きな違いがあります。上場株式や配当の利益については、基本的に、所得金額に関わらず一律20.315%の税率が適用されます。投資口座の設定にもよりますが、源泉徴収ありの特定口座で取引をした場合には、自動的に税金が天引きされます。
例えば、100万円利益が出た場合、20万円強の税金が引かれ80万円弱受け取ることになります。このケースではあとから税金の心配をする必要はありません。
一方、暗号資産の利益にかかる税金は、先ほどお話したように、所得金額により税率が変わってきます。また、自動的な天引きはありません。そして、税金を納めるのは利益が出た時点ではなく、確定申告時です。そのため、利益が出た場合には、しっかりご自身で納税資金を準備する必要があります。
上場株式の投資で損失が出た場合にも大きな違いがあります。株の投資では、確定申告を行うことで、配当金などで発生した利益と相殺することができます。これを「損益通算」といいます。また、損益通算してもなお損失が残る場合には、翌年以後3年間にわたり、上場株式の譲渡益や配当金といった利益から差し引くことができます。これを「損失の繰越控除」といいます。
つまり、株の投資については、損益通算や損失の繰越控除を利用することで、損失を出した場合には、その損失を無駄にせず、現在または将来の税金を減らすことができるのです。
一方、暗号資産の取引をはじめとする雑所得では、損益通算はできず、損失の繰越もできません。暗号資産にかかる損失については救済がないのが現状です。
仮に年収800万円の会社員が暗号資産で利益を得た場合は?
年収800万円の会社員、配偶者や保険料の控除等がない想定で、所得税と住民税あわせて約90万円の税金を支払っています。
ここで、この年収800万円の会社員の方で、暗号資産の利益が出た場合の税金をざっくりと計算してみましょう。ここでは取引にかかる手数料等は考慮していません。
例1: 100万円分購入して200万円で売った場合。(利益100万円)
所得税・住民税で約120万円になります。つまり、暗号資産にかかる100万円の利益に対し30万円弱の税負担です。
例2: 100万円分購入して5,100万円で売った場合(利益5,000万円)
所得税・住民税で約2,520万円になります。つまり、5,000万円の利益に対し約2,430万円の税負担といえます。
この試算はあくまでも目安です。しかし、利益が大きくなれば、半分は税金として納める必要がある、と考えた方がよいでしょう。
値上がりしたビットコインを使って買い物をした場合は?
先にお伝えしたように、ビットコインをはじめとする暗号資産の使用により得られた利益について課税されます。つまり、何が「暗号資産の使用により得られた利益」にあたるのかが重要になります。
例えば、シンプルに暗号資産を買って売った場合。これは売った価格から買った価格が利益になり課税対象になります。
また、暗号資産から他の暗号資産に換える、つまり、ビットコインでイーサリアム等を購入した場合にも利益を認識します。これは、一度ビットコインを売却しイーサリアムを購入した、と考えるのです。このケースでは、当初のビットコインの購入金額との差額が課税対象です。
暗号資産を物品の購入に当てる場合も同様に利益認識され、例えば、10万円で購入したビットコインが値上がりし、そのビットコインで20万円の冷蔵庫を購入したとします。この場合、冷蔵庫購入時点でこの差額10万円の利益が確定し課税対象になります。
暗号資産というと、インターネット上の取引で使うようなイメージがありますが、実店舗でもビットコインで支払いができる店舗は増えてきています。ますます身近になりつつあります。
ビットコインなどを購入する場合に消費税はかかる?
ビットコインをはじめとする暗号資産は、以前は法律的に定義されておらず、消費税の課税対象とされてきました。つまり、ビットコイン等を購入することに消費税がかかっていました。
しかし、平成29年度税制改正により、平成29年7月1日以後は、消費税が非課税となりました。現在は、プリペイドカードなどと同じように「支払い手段」と定義され、暗号資産を購入しても消費税はかかりません。
ビットコインをはじめとする暗号資産は、現在雑所得の取り扱いですが、今後その取扱いが変わってくる可能性があります。たとえば、10年程前にブームになったFXは、当初、現在の暗号資産のように雑所得で累進課税が適用されていました。しかし、紆余曲折の末、所得税上の取り扱いが変わり、現在では20.315%の税率が適用されています。
国税庁のタックスアンサーはあくまでも国税庁の見解であり、法律そのものではありません。今後、国会の承認を得た法律として、どのように成立していくのかを見守っていく必要があります。