年収500万円なら住宅購入しないほうがいいpart.1

2018年6月19日

年収500万円での住宅購入は貧困になる可能性あり

「ローン返済額は手取り年収の20〜25%以内、借入限度額は手取り年収の5倍までならひとまず安心である」という説はさまざまな住宅購入の指南本やFPのアドバイスでも住宅購入ノウハウの定石とされていますが、この数字では現実としてかなりムリがあるように思われます。
たしかにそのくらいの出費であれば、賃貸物件ならば何らかの節約をすればそこそこ安全領域ではありますが、住宅購入となると話はちがいます。
賃貸は長年住んでいても住宅自体のメンテナンスに関しては共益費からある程度まかなってもらえ、固定資産税の支払い義務もありません。
それに対して住宅ローンの場合は自分ですべてのメンテナンス費用を準備しなくてはならず、ローン返済額に団体信用生命保険料も加算され、毎年固定資産税や都市計画税の支払いも自分で準備する必要があります。
「返済額は手取り年収の20〜25%以内、借入限度額は手取り年収の5倍までなら安心」という説はおそらく金融機関が設定している返済負担率と借入限度額を参考にしたのではないか?と私は思っています。
通常、銀行が一般的なローンを審査する場合の返済負担率(元金+利息)は年収の30%程度、借入限度額の年収条件は年収の5〜6倍までとなっています。
「年収」と「手取り」のちがいを勘案して、銀行が示す基準である30%よりも下の値であれば大丈夫だろうということでアドバイスの定石となったのではないかと。
しかしこのアドバイス通りに従うと、たとえ家族の合計総年収500万円だったとしても住宅ローンの支払いのために貧困になる可能性は十分にあります。

現実はちがった!?1ヶ月の消費支出から見る「住居」費の異常性

一般家庭で月々何にどれくらいの支出があるか平均的な数値を総務省が発表しています。
世帯人数が3.68人(約4人)、持ち家率が急激に上がる40〜49歳の資料を参考に話を進めます。
40〜49歳代の総消費支出は月々315,189円。
単純に12ヶ月を掛けて年支出は3,782,268円です。
持家率も40歳未満が58.2%なのに対し、40〜49歳代は80.1%と急激に高くなる年代です。
問題は住居5.0%の月額15,760円。
このデータの中では持家率が80.1%ですから賃貸住宅の19.9%も含まれるデータですが、さすがに賃貸でも家族4人でこの安さの住居費はあり得ないでしょう。
ならばなぜ、このような数字がでているのか?

【総務省 家計調査年報 家計収支 平成29年 世帯主の年齢階級別家計支出(2人以上世帯)】の資料より筆者抜粋作成

「その他消費支出」の本当の正体は?

それには3つ理由があると思います。
1.総務省の家計調査に回答したとはいえ、一般家庭は家計をそんなに細かく把握していないこと。家計簿をきちんとつけている家庭はそんなに多くなく、正確性には多少欠けている側面も否定はできない。
2.この資料では見ることができない奥さまなどのパートナーが正規・あるいはパートで別途収入がある可能性。
3.「その他消費支出17.3%」の存在。
実はこのその他消費支出17.3%+住居5.0%から住居費として支出している可能性があるように思われます。3のその他の中には交際費と仕送り金が含まれていますが、この54,528円と先ほどの住居5.0%の15,760円を足すと70,288円になります。
つまり、交際費を削減し、貯蓄もままならない家庭が多いということが予想できます。
70,288円という金額が住居費用としては高いか低いかという議論もありますが、それだけ家計が苦しいと推測できます。
住居5.0%とその他消費支出17.3%を足したら22.3%で、確かに定石であるローン返済額は手取り年収の20〜25%以内ならひとまず安心であるという範囲内に入り、一見「ギリギリ正論か?」とも思ってしまいそうです。
しかし、せめて20%は切らないとこのパーセンテージではかつかつの生活で余裕がなさ過ぎると思ったので、以上のことについて某銀行本店の融資部調査役の方に匿名を条件にインタビューしてみました。
そしたら驚きの回答を得ました。

年収500万円でも住宅ローンの支払いを続けるのは難しい

彼が言うには、「銀行としてはたしかに税引き前の年収の30%程度を目安とした返済負担率(元金+利息)を基準としています。もしくは借入限度額として税引前の年収の5〜6倍までは貸し出します。
しかし、現実的な話として私は返済額は税引き前の年収の10%くらい、借入限度額としても税引前の年収の3倍までが限界だと思います。
それに加えて返済額と同額に近い金額を住宅に関するメンテナンスや繰り上げ返済、その他諸経費など住宅に関する費用専用に貯蓄ができることが最低条件だと思います。」
と言うのです。
さらに彼は、「貸してくれと言われれば、基準を満たしていればお貸しします。しかし、内心では“そんなに限度いっぱいに借りない方がいいのに……”とは思います。
でもそこで私が変に借入額を下げるようなアドバイスをやり過ぎると、お客様が住宅購入自体をしないという判断をされてしまうこともあるでしょう。そうなっては不動産会社さんとの兼ね合いもありますんで……。」
なるほど、たしかに仏心を出し過ぎたアドバイスをすれば住宅購入をやめてしまう人もいるかもしれません。
せっかく売れそうな物件の契約がなしになってしまうと不動産会社からクレームを言われることもあるでしょう。
「本質的に重要なのは貸す側の視点として“ぎりぎり返せるか”や“借りられるか”ではなく、“払えるか”を考えていただきたいと思います。住宅を購入した場合の固定資産税や管理費、修繕費、光熱費も含めてその他生活水準に応じた出費も勘案していただきたいですね。
住宅ローンをお考えのお客様に感じることは、購入後にかかる諸費用をきちんと考えている人があまりにも少なく、住宅を買ってはいけない人が買っている状況があまりにも多過ぎます。あなたは住宅を購入後、やりたいことやほしいものがあっても家族全員でがまんするんですね?と思ってしまいます。何のための住宅なんですか?と言いたくなるほどです。
年収500万円くらいでの住宅購入は、物件にもよりますが相当きついと思いますよ。
これが朝から晩まで一日中融資調査をしている銀行の融資部調査役の口からでた本音です。
次回(来月)のコラム、年収500万円なら住宅購入しないほうがいいpart.2では私のインタビューに対して何の資料も見ずに具体的な数字を語ったこの融資部調査役が単純な思いつきや感覚でこれらの数字を言っているのではないことを検証してみたいと思います。

この記事のライター

末永健

家計の学校S.H.E代表。2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP認定者。主婦層を中心に、家計の管理・節約と保険の見直し方・選択法の情報発信に特化した完全独立系ファイナンシャルプランナー。【A-LIP式必要保障額計算メソッド®(商標登録)】を考案。保険商品を販売しないFPとして、ネット上のみで真の情報を配信する異色のFP。著書に「書けばわかる!わが家にピッタリな保険の選び方」(翔泳社)がある。

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