前回は、住宅ローンの返済方法の元金均等返済について、具体的な数値例をあげてご説明致しました。今回は毎年の返済額が一定となる元利均等返済についてご説明したいと思います。
元利均等返済における「元利」とは「元金」+「利息」を表します。すなわち、元利均等返済では、元金の返済分と利息の支払い分を合わせたものが毎年均等になるように、総支払額を決定します。では、その毎年の総支払額はどのように決定されるかを、具体的な数値例をあげて見ていきましょう。
以下は、前回と同じ数値例です。
・元金:1,000万円
・返済年数:5年
・1年の返済回数:期初年1回
・利率:1.0%
ここで、毎年の総支払額(=元金返済額+利息支払い分)をPと置きましょう。
まず1,000万円を借りますが、その元金に利息がかかりますので、元金と利息の未返済分は、
1,000万円×1.01(=1,010万円)
となります。これから、毎年の総支払額であるPを引くことによって、最初の年の期末の元金と利息の未返済分の合計を求めることができます。
1,000万円×1.01-P
では、次の年では、またこの未返済分の利息がかかりますので、
(1,000万円×1.01-P)×1.01
となり、これから毎年の総支払額であるPを引くことによって、2年目の期末の元金と利息の未返済分の合計を求めることができます。
(1,000万円×1.01-P)×1.01-P
以下、これを繰り返していきます。そうすると、5年目の期末の元金と利息は、
((((1,000万円×1.01-P)×1.01-P)×1.01-P)×1.01-P) ×1.01-P
となります。5年で返済が完了しますので、5年目の期末の元金と利息の合計は当然0にならなくてはならないので、
((((1,000万円×1.01-P)×1.01-P)×1.01-P)×1.01-P) ×1.01-P=0
というPについての方程式を作ることができます。
このPについての方程式ですが、高校数学の等比数列の和を用いることで簡単に求めることができて、
P=1,000万円×1.01^5÷((1.01^5-1)/(1.01-1)≒206万円
となります。これにより5年間の総支払額は5×206万円=1,030万円となり、利息支払い分は30万円であることがわかります。
先ほどの式をご覧になればわかるかと思いますが、もし、利率が1.0%ではなく2.0%の場合の年間の総支払額はどうなるかというと、
P=1,000万円×1.02^5÷((1.02^5-1)/(1.02-1)≒212万円
となります。同様に5年間の総支払額は5×212万円=1,060万円となり、利息支払い分は60万円であることがわかります。
更に返済年数が5年から10年へと延ばした場合は。
P=1,000万円×1.02^10÷((1.02^10-1)/(1.02-1)≒111万円
となり、10年間の総支払額は10×111万円=1,110万円となり、利息支払い分は110万円であることがわかります。
これから、利率と返済年数が大きくなれば、当然ながら利息支払い分が増えていくことがわかります。
元利均等返済では毎年の総返済額が等しくなりますので、返済当初では、その総返済額に含まれる利息支払い分の割合が高くなります。ですので、実際にローンを返済していても、当初はあまり元金を返済されないわけです。
一般的に、住宅ローンの返済方法は「元金均等償却」ではなく「元利均等償却」を選択する人が多いかと思います。返済方法の選択については、それぞれの方法について十分に仕組を理解した上で選ばれることが好ましいですね。
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毎月の返済額が一定、「元利均等返済」とは?
2019年9月20日
この記事のライター
添田享
日本アクチュアリー会正会員、日本証券アナリスト協会検定会員。1級DCプランナー。アクチュアリー・ゼミナール講師。大学、大学院で数学を専攻し、大学院修了後、アクチュアリー候補生として信託銀行に入行。その後、証券会社、生命保険会社などで一貫してアクチュアリー業務に従事。
アクチュアリーの中でも、生保アクチュアリー、年金アクチュアリー双方で業務経験が豊富である数少ないアクチュアリー。現在は、アクチュアリーの業務経験を活かして、アクチュアリー試験などの金融関連資格の講師、数学の講師など幅広い分野で活躍。