病気やケガなどで一定の障害状態になった場合に利用できる公的制度に、「障害者手帳」と「公的障害年金」(以下、障害年金)があります。いずれも‘障害’という言葉が使われているので、2つを混同している人や、障害者手帳の交付を受けたら、障害年金も受給できると誤解している人もいるようですが、実はまったく異なる制度です。
今回は、その違いをご紹介しましょう。
障害者手帳は「公的福祉サービス」が受けられる制度
まず、障害者手帳について。
障害者手帳は、都道府県(または政令指定都市) が行う公的福祉サービスで、病気やケガなどで日常生活に支障がある場合に交付されます。
障害者手帳には、①「身体障害者手帳」②「精神障害者保健福祉手帳」③「療育手帳」の3つがあり、①は、身体障害者福祉法に定めた病気やケガによる身体障害(1~7級※)、②は、精神保健福祉法に定めた精神障害(1~3級)、③は、自治体によって等級区分が異なりますが、知的障害をそれぞれ対象にしています。
手続き先は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口です。
これらの障害状態に該当すると認められた場合、申請から1ヵ月~2ヵ月程度で手帳が交付され、障害の程度に応じて障害福祉サービス等が受けられるほか、公共料金や交通機関の運賃、公共施設の利用料金が割引や各種税金の減免等のサービスが受けられます。
※7級の障害について、単独では交付対象となりませんが、7級の障害が2つ以上重複する場合または7級の障害が6級以上の障害と重複する場合、対象となります。
障害年金は、障害等級、家族構成などに応じた年金が受け取れる
一方の障害年金は、国民年金法や厚生年金法といった公的年金制度に基づき、所定の障害等級に認定されるなどの要件を満たせば支給されるものです。
障害者手帳のような公共施設の割引サービスなどではなく、障害による収入減を補うため、年金が受け取れます。障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」の2つがあり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたとき(初診日)に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」(障害等級1級、2級)、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」(障害等級1~3級)が請求できます。要件を満たせば、障害基礎年金と‘2階建て’の受給が可能です。また、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができます。
手続き先は、いずれも年金事務所です。
気になる年金額は、例えば、自営業者で、18歳未満の子どもが2人いる場合、障害等級2級なら、122万7,900円 (平成30年度価格)。月額約10万円ですから、収入のベースにはなるはずです。
障害の状態と申請のタイミングに注意しよう
このように、障害者手帳と障害年金は、障害の認定基準やサービス内容、窓口などが異なります。いすれも注意すべきは、申請のタイミング。
例えば、身体障害者手帳は、一度発行されると更新がなく、基本的に一生使用できるもの。つまり、障害が永続することが前提の制度です。したがって、障害が永続しないと判断されると認められないことも。
また、障害の種類によって、すぐに申請できる場合や一定期間経過後でなければ申請できない場合もあります。
障害年金も、原則的として、初診日から1年6カ月経過していないと請求できません(例外的に、「永久人工肛門を造設した」「人工透析療法を行った」など症状が固定したものは、1年6カ月を経過しなくても障害認定される場合もある)。
医療の進歩によって、身体障害者手帳の障害認定基準の見直しや再認定を導入する自治体もあるなど、制度が変わることも考えられます。
とくに、障害者手帳は、障害者雇用での就職や転職を行う場合、必要になるものですので、「もらえない」と思い込まずに、担当窓口で相談してみましょう。
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