
日本において、投資はギャンブルと同じような見られ方をされている傾向があります。初心者が理解できるように説明するということは意外と難しいものです。
中桐啓貴著『日本一カンタンな「投資」と「お金」の本』より、正しい投資の知識について語るためのポイントをご紹介します。
長期の目線で投資の軸を持つ
この本の目的は、みなさんに投資の軸を持ってもらうことです。投資の軸を持つとマーケットに対してのネガティブな情報が入ってきてもブレなくなります。
004ページより引用
1997年、最後の新入社員として山一證券に入社した著者。倒産を経験後は、メリルリンチ日本證券で富裕層向け資産運用コンサルティングに従事します。その後、米国大学院でMBAを取得。現地のファイナンシャルアドバイザーが人々を幸せに導いている姿に衝撃を受け、日本において起業することになります。
これまで1万件を超える資産運用アドバイスを行なってきた著者は、金融機関に属さない独立系ファイナンシャルアドバイザーの先駆けとして、さまざまなメディアでも活躍。投資に関する書籍を多く出版、積み立て投資でグローバルに分散投資をしましょうと投げかけ、多くの読者から賛同の声をもらってきました。
それから12年もの間には、リーマンショックやチャイナショックが勃発。投資を途中でやめてしまう人も多くいたようです。積み立て投資を継続していれば、投資元本に対して2倍になっていたはずであると著者はいいます。
アメリカのファイナンシャルアドバイザーの間では、〝リスクとはマーケットが変動することではなく、投資を途中でやめてしまうことだ〟と言われているのだとか。日本の投資家の平均積み立て期間は、2〜4年。軸がない投資家は、テレビやネットの情報によって一喜一憂しますが、軸がある投資家は、マーケットの変動に対して平然と受け流すことができるといいます。
長期の目線で投資についての軸を作ることが、いかに大事であるかがよくわかります。
投資の目的は企業の成長を応援すること
「一方、企業(株式)に投資することはギャンブルとはまったく違います。投資した資金は企業の事業に投じられ、企業活動を通じて利益を生みます。中略
誰も損をしない、皆が得するビジネスモデルというわけです」
037ページより引用
投資の軸を身につけるためには、順を追って理解していく必要があると著者はいいます。
本著は、金融や投資に関する知識がない30代前半の木村隆一が、「先生」という人物から投資を学んでいくという形式です。知識をスムーズに身につけていけるように、小説仕立てになっています。
居酒屋におけるサラリーマン同士の雑談から先生の存在を知った隆一は、さっそく、新橋・日比谷神社に訪ねていきます。
そこでは、まず、投資とギャンブルの違いについて説明を受けることに。先生は、本当の投資とは、ギャンブルとも株式やFXのトレード(短期回転売買)とも違い、社会のイノベーションに繋がるのだと教えます。
投資した事業がうまくいけば、社会が必要としている資本やサービスが提供され、働く場も税金も増える。言い換えれば、投資とは、私たちが暮らす資本主義という社会を豊かにさせるためのものであるといえるでしょう。
投資のつもりで始めたものの、いつのまにかトレードをするようになって失敗している人もいるようです。
投資の目的は、企業の成長を株主の立場で応援し、その果実を自分も得ること。新しい事業や商品が成長するためには、おのずと中長期が適当になると先生はいいます。
投資について正しく語れるようになる
先生から投資についてさまざまな説明を受け、理解を深めていく隆一ですが、投資で儲かったという人が周囲にあまりいないことに気がつきます。先生はその疑問に対して、世界にはたくさんいるといいます。たとえば、ビル・ゲイツなど、世界のお金持ちの多くは株で資産を増やしています。
日本の家計金融資産は1,800兆円以上あるものの50%以上は現預金で、投資に該当する株式・投資信託の割合はわずか15%なのだとか。逆に、アメリカは13%が現預金で、株式・出資金・投資信託は48%であるのだとか。
本当の投資の意味が分かるようになり、これから勉強をしていきたいと話す隆一ですが、先生はこう釘を刺します。投資は当てものではない。正確な情報と確立された理論に基づいて分析し、リスクをとるということを理解しなくてはならないと。
私たちも、社会に還元していく正しい投資の意味について、適切に説明できるスキルを身につけておきたいものです。
タイトル:日本一カンタンな「投資」と「お金」の本
著者:中桐啓貴
発行:クロスメディア・プブリッシング
定価:1,598円(税込)