2024年7月末時点で、国内で設定・運用される公募投資信託は約6,000本あります。またNISAやiDeCo制度が普及するなか、多くの投資家にとって運用先として検討されるのが投資信託です。今や投資信託は個人投資家にとって人気が高く、より一般的な運用商品の一つとなっていますが、運用パフォーマンスを向上させるうえで、「信託報酬」をチェックすることは必要不可欠でしょう。そこで今回は、投資信託での運用を検討する投資初心者向けに、投資信託の基本的な概要や信託報酬が運用成績に与える影響、信託報酬自体が変化することがあるのかなどを解説します。
投資信託の仕組み
まずは投資信託の仕組みを簡単におさらいしましょう。投資信託とは、多くの投資家から資金を集め、その資金をまとめて運用のプロフェッショナル(運用会社)が投資家に代わって株式や債券、不動産などに投資を行う運用商品です。運用がうまくいった場合には、それぞれの投資家は投資金額に応じた利益を配分され、運用がうまくいかなかった際には、元々の投資金額が減少する仕組みを採用しています。つまり、銀行の定期預金と違って元本が保証された運用商品ではありません。
購入する際に注意すべき信託報酬とは
投資初心者にとって、刻々と移り変わる投資環境を逐次チェックせずとも運用のプロに任せられる点は、投資信託の大きな特徴として挙げられます。その一方で投資信託を保有している間にかかってくる費用が信託報酬です。足元、約6,000本の投資信託がありますが、投資信託の大きさを表す「純資産総額」に対し年0.5%から2%(消費税別)ほどかかるのが一般的であります。
そして、NISAやiDeCoなど長期での運用を想定した場合、信託報酬が運用パフォーマンスに与える影響は大きなものとなります。簡単な例を挙げますと、信託報酬率が年1.00%の投資信託Aと0.189%の投資信託Bを比較する際、前提条件としてそれぞれの投資信託の値段が10,000円からスタートし、運用利回りを3%とした場合、たった数%の違いでも20年後には信託報酬率の差によって生じる運用パフォーマンスの差は25.5%にも上ります。
信託報酬が変わるケース
投資信託で運用する際には信託報酬を確認することが大切であることを分かっていただけたかと思います。そして投資信託を購入する際は、信託報酬が記載されている「約款」を確認することが大事です。また投資信託の信託報酬やパフォーマンスを比較できるモーニングスターのサイトを活用するのも良いかもしれません。
そして、信託報酬は投資信託を運用中に代わってくることがあります。基本的には約款に定めた信託報酬を継続的に徴収されますが、たとえば、投資環境に応じて信託報酬が変わる場合や純資産総額に対応して変更されるケースがあります。加えて、信託報酬の低さをアピールすべく信託報酬の改定を行う運用会社も散見されます。
いくつか具体例を挙げますと、まず運用業界で最低水準のコストを提供することを目指している三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)」は、競合他社に対しコスト面の優位性をアピールすべく信託報酬率の引き下げを行っています。実際に、「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」と「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」の信託報酬率が、それぞれ0.159%以内から0.155%以内へと変更されています。まさに信託報酬の低さを競争力するために、信託報酬の改定を行っている実例といえます。
また、コモンズ投信の「コモンズ30ファンド」は純資産総額に応じて信託報酬が変わってくる投資信託です。純資産総額が500億円までは信託報酬は1.0584%(税込)、500億円を超える部分は0.9612%、1,000億円を超える部分は0.8532%、3,000億円を超える部分は0.7344%となっており、純資産総額が増加するに連れてスケールメリットを活かした運用を行うスタイルをとっているといえるでしょう。
事前に約款を確認することが大事
最後となりますが、これまで投資信託の基本的な仕組みや信託報酬が運用成績に与える影響をお伝えしたうえで、信託報酬自体が変化することを具体的な事例を踏まえてお伝えしてきました。これから新たに投資信託を購入する際には約款を、そして購入後は定期的に運用会社のホームページなどで信託報酬を定期的にチェックしていくことが大切でしょう。
参照:投資信託協会
三菱UFJ国際投信「eMAXISS Slim」
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