障害年金 うつ病などでの相談急増。公的年金の未納が多い人は気をつけて

2019年6月11日更新

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合、現役世代の方を含めて受け取ることができる公的年金です。特に最近では20代から40代の方でうつ病などの精神疾患に関するご相談が増えています。しかし、中には公的年金の未納が多すぎて障害年金の手続きができない、というケースもあります。過去に未納が多すぎる方はどうすればよかったのか? 障害年金には救済措置もあるので、今回はそのお話をしようと思います。

公的年金の未納が多すぎると障害年金の請求ができないことも

最近はインターネットなどで情報が手に入りやすくなったためか、20代から40代の方で精神疾患に関する障害年金のご相談が増えています。精神疾患の方は働くことが難しくなってしまうケースもあり、何とか障害年金をもらいたい、というニーズは多いです。ただし、働くことが難しいからといって誰でも障害年金がもらえるというわけではありません。
障害年金にはクリアすべき条件が色々ありますが、その中のひとつに「納付要件」というものがあります。納付要件を簡単に言ってしまうと「公的年金の未納が多すぎやしないか? 」ということです。未納が多すぎて納付要件を満たさないと、そもそも障害年金は請求できません。病気やけがなどの障害で日常生活や仕事に支障が出てしまった方でも、納付要件を満たさないことには請求のスタートラインに立つことすら許されないのです。

納付要件には救済措置がある

過去に年金の未納が多すぎた方は全員ダメなのか? というと、そんなこともありません。
障害年金には、過去に未納が多すぎても直近の期間で未納がなければ何とかしてくれる救済措置があります。これを納付要件の特例といいます。
以下の条件をすべてクリアすると、特別に納付要件を満たしたものとしてくれます。
・初診日が2026年4月1日前にあること
・初診日において65歳未満であること
・初診日の前日において、初診日がある2カ月前までの直近1年間に未納期間がないこと
初診日とは、その障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日いいます。簡単に言うと、その障害で初めて病院に行った日ということです。
ここからは事例でみていきましょう。
例えば初診日が2019年5月25日だったとします。
その2カ月前は2019年3月。そこから直近の1年間とは2018年4月のこと。
この2019年3月から2018年4月までの1年間の間に未納がなければよいのです。

初診日が2019年5月だった場合


納付要件の特例がクリアできれば、たとえ直近1年間より前の期間に未納が多すぎても請求権利は発生する、ということになります。「じゃあ病院に行った後、今からさかのぼって納付や免除などをすれば、直近1年で未納がなくなるわけですよね? そうすれば誰でも納付要件はクリアできるのではないですか? 」そう思われる方もいるかもしれませんね。
しかし、残念ながらそれは認められません。それではもう遅いのです。

後出しはダメ! 初診日の前日において、とは?

実は納付要件にはもうひとつ注意すべき点があるのです。
ここでもう一度、納付要件の特例を確認してみましょう。
・初診日の『前日』において、初診日がある2カ月前までの直近1年間に未納期間がないこと
初診日の『前日』において、とは一体どういう意味なのでしょうか? 先程の事例にあてはめて考えてみましょう。
事例の初診日は2019年5月25日としました。すると初診日の前日は2019年5月24日になります。
この5月24日の時点で直近1年間に未納がないかどうか? を確認します。初めて病院に行った後で未納があることに気がつき、あわてて後から納付や免除をしてももう遅いのです。後出しはダメ、ということです。その障害で初めて病院に行く前に未納状態を解消しておかなければならないのです。
以下に公的年金が未納になりやすい代表的なケースを挙げておきます。
・20歳以降の学生
・フリーランスで活動している
・独身でパートやアルバイトなど非正規で働いている
・失業中(無職)、過去に失業していた
一つでも当てはまる方は、一度ご自身の年金記録を調べておく方が望ましいでしょう。
過去すべての年金記録を調べるには、ねんきんネットを利用するのが手っ取り早いです。もちろん年金事務所で相談して調べることもできます。ねんきん定期便では直近1年程度の記録が確認できます。現在、国民年金保険料は月額16,410円(2019年度の金額)。毎月これだけのお金を支払うのが困難な場合、保険料免除の相談や申請をするようにしましょう。過去の未納部分の納付や免除申請などは、現在から2年1カ月前までさかのぼってすることができます。
これからの人生、何が起こるかわかりませんが、少なくとも公的年金を未納のまま放っておいてもいいことは一つもありません。自分は障害年金をもらうつもりはない、という方もいると思いますが、それでも未納の状態はできるだけ解消するように相談、手続きをしておきましょう。
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この記事のライター

浜田裕也

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。社会保険労務士会の業務委託で年金相談の実務にも携わるようになり、その相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請の仕方のアドバイスには定評がある。著書に「転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話」(SB新書 著・監修)、「日本でいちばん簡単な年金の本」(洋泉社 第3章監修)がある。

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