誰も教えてくれないお金の深い寓話 ~良い借金と悪い借金~

2017年6月20日

1分でわかる良い借金と悪い借金

僕は昔から借金は悪いことだと思い込んできましたが、お金持ちの人は借金について違う考え方を持っているということを先日知りました。
お金持ちのAさんが先月、銀行から融資を受けて5億のビルを購入しました。Aさんは無駄が嫌いなことで有名な人です。僕はAさんがそのビルをキャッシュで買える資産を持っていることを知っていたので、借金をして購入したことを不思議に思ってAさんに尋ねました。
「なんで借金をして買うんですか? 利息分を払うのは無駄じゃないんですか?」
「じゃあ、逆に聞くけど自分のお金を出して買わないといけないの? アラブの石油王レベルのお金持ちクラスなら違うと思うけどさ、いわゆる日本の富裕層レベルなら、みんな僕と同じことを言うさ」
Aさんが言うには、「いまの日本は金の行く先に困ってるんだから、行き場のないお金は有効活用した方が良い」ともいいます。
「どこに、そんなに余ってるんですか?」
「銀行は貸し出し先をいつも探してるよ」
Aさんは、「僕は借金で資産を買って運用する、銀行は金を貸せてラッキーじゃない」と言いますが、僕はちんぷんかんぷんです。(*注1)
そんな僕を見かねて、Aさんは図を書いて説明してくれました。
「これが借金をした僕だ。そして、購入したビル。プレイヤーは他に2人いる。わかるかい? 銀行と賃借人さ。最初は矢印の方向に資金が流れていく」

「しかし、資金の流れはやがて逆転する」

「つまり、この図の通りいったら、テナント料を借金返済に回せば、僕は少しも自腹を痛めることなく、借金を完済し晴れてこのビルのオーナーになる。君が無駄だという利息も賃借人が払ってくれる」(*注2)
「でも、5億も借金をするって危ないでしょう。必ず賃借人が入居する保証もないし、もしも返せなくなったらと考えると怖くないですか?」
「5億の物件を買うのに5億の借金することがどうして危険なの? 困ったら売ればいいじゃない。困らないけど」(*注3)

確かに、Aさんの言う通りで、筋道通った考え方です。しかし、僕は釈然としません。どうにも理解できない点をAさんに訊ねました。
「じゃあ、Aさんは自分の資産はいつ使うんですか?」
「あはは、そうなんだよね。使わないから全然減らないんだよ。ははは。
……ちょっと待って。うーん、本当はちょっと違うかな。僕は自分の資産を使ってるんだよ。僕の資産はね、他の人に安心感を与えてるんだ。
つまり、手持ち資金があるから信用される、銀行も信用がある僕にお金を貸したがる。僕は、現金を使わずに資産を増やしてることになるんだけど、それは現金がもたらす信用力を使ってるんだよ。でも、実際に現金を使うよりもこの信用力を使った方がお金が稼げるんだから、不思議なものだよね」
Aさんは、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている僕を見ながら「この話をすんなり理解できたら君も金持ちになる素質があると思うよ」と言いましたが、皆さんはいかがでしたでしょうか?
(注1)
銀行はお金を貸すことが主力のビジネスです。各店舗ごとに貸し出しノルマがあります。そういう事情があるので、借金をしてくれて、毎月きっちり利息を返済してくれる良い顧客を摑まえることは良い銀行員の条件です。(「良い顧客」になるには『銀行に思わず「貸したい」と思わせる戦略とは?』が参考になります。)
(注2)
テナント収入は銀行への返済に利用しますが、低金利の時代であれば、家賃収入と返済利息の差を利用した利潤は得やすくなります。不動産投資家は、この利潤を最大化するために努力をしています。
(注3)
5億で買った物件が必ず5億で売れるとは限りませんが、Aさんの場合、不動産の目利き力があるので、市場価格よりも低い値段で手に入れることができたのでしょう。不動産の価格交渉や物件の選定などは経験を積み重ねないとやはり難しいそうです。

この記事のライター

ルウ・ハイアン

文筆家・歴史家として各メディアに寄稿。投資家としての側面も持ち、投資界隈の話題には事欠かない。また経済のトピックを誰にでもわかるように話す技術には定評がある。映画や書籍、または海外ゴシップにも精通している。日本語の他に、中国語・英語も堪能。

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