「ユダヤから学んだモノの売り方」を読んでマーケティングを考える

2017年9月4日


かなり怪しいタイトルです。
装丁は花くまゆうさくさんの絵に、背景は書籍では珍しい黄土色。表紙のハゲた男性に「他業種応用可能!」「小学生でもできる!」と、怪しいアオリ文句を叫ばせています。
著者は立川光昭さんという実業家で、現在では年商50億を超える電力会社のオーナーという立場ですが、若い時にユダヤ系の商社で働いた経験があるそうで、この書籍では、その時の経験をエピソードとともに教えてくれます。

ユダヤ人が考えるマーケティング

怪しさ満点でしたが、意外にも(失礼!)読んでみると、まともで本質的なことが書かれていて驚きでした。なかでもカバーの袖裏に書かれている文句は、この本を通して流れているユダヤ人のマーケティング精神を的確に捉えています。

“商売における一番大切なものを彼ら(ユダヤ人)は最初に考えます。
「買う人、つまりお客さんがいるかどうか」ということ。ただそれだけです。“

マーケティングに対する誤解

我々、日本人ビジネスマンが持っているマーケティングへのイメージとはどのようなものでしょう? たとえば、ぜひとも売りたい商品があるとして、いかにして商品を知ってもらうか(宣伝)どうやって購入してもらうか(販売)などのプロダクト側の希望を叶えるべく戦略をたてていく、というイメージでしょうか。
しかし、ユダヤ人はそこまで難しく考えません。ユダヤ人ビジネスマンの薫陶を受けた著者は、マーケティングとは「買いたい人を見つけて、モノを売ることだけ」と答えます。商品を開発しなくても、知ってもらわなくても、モノは売れるのです。

とびきり美味いラーメン屋が続かない理由

たとえば、私たちがラーメン屋を開くとして、店が繁盛するために何ができるでしょうか?
やはり、ラーメンといえば「味」でしょう。ラーメンマニアと呼ばれる人たちがいて、味の良い店には行列ができることもあります。そこで、味を探求するべく日夜研究を重ねて、どんどん味に深みを加え、800円では味わえないレベルのラーメンに仕上げたら、お店は繁盛するはずです。そして、宣伝のためにホームページを開設して、特典クーポンを発行したらお客さんは増えるに違いありません。
しかし、著者はこれは典型的なお店が続かなくなるパターンだと指摘します。この我慢比べのような味の探求レースに乗ってしまっては、お店はやがて続かなくなるだろうと予想します。
では、ユダヤ人の考え方ならどうするかというと「ラーメンを食べたい人のところに売りに行けば、必ず売れる」と言い放つのです。

「ラーメン二郎」の大繁盛の秘密

「ラーメン二郎」とは、関東圏を中心に流行している廉価で大ボリュームのラーメンチェーンの名称ですが、このラーメン屋が繁盛した理由は、三田に第1号店を出店したからだと著者は言います。
三田(港区)は、慶應義塾大学キャンパスのある街です。若い人も多く、大ボリュームのラーメンをぺろりと平らげてしまうような体育会の学生も大勢います。この街に出店し大勢の学生が集まり行列をなしたことで、評判になり今のような大繁盛チェーンになったといわれると、確かに説得力があります。
同じ港区でも白金に出すなら、もっとあっさりしたラーメン屋でなければ、成功はおぼつかないでしょう。

ユダヤ系のビジネス成功企業

著者はユダヤ人のビジネスは、こだわりある物作りや、イノベーションやホスピタリティとは一線を画していて、ある意味独特だといいます。
ユダヤ系企業を挙げてみると、ゴールドマン&サックス、モルガン・スタンレー、スターバックス、グーグル、フェイスブック、世界を代表するような企業がひしめきあってます。
これだけ世界的な有名企業ばかりなら、ユダヤ人だけが知ってる「モノを売るための成功法則」は存在していると思い勘ぐりますが、ことの真相は、先ほど述べたようにお客さんがいない商売は絶対にしない、という単純なルールを守り続けているというあたりなのかもしれませんね。
書籍を手に取った時の印象は、「怪しい」のひとことでしたが、内容はそんな印象に反して、不思議な魅力に溢れていました。書籍は、著者の若いころの回顧録としてスタートするのですが、若い時の話は、青春譚としても読めましたし、ビジネスがどうしたら上手くいくのかをわかりやすく述べてくれていて読後感も爽やかでした。
ユダヤ式に傾倒しているわけでもなく、チームワークや礼節面などのユダヤ式の欠点をあげているところも、好印象でしたね。
書籍の中は、他にもいろいろなエピソードや考え方が書かれているので、より詳細を知りたい人はこちらの本を買って読んでも損はしないと思います。だいたい3時間程度あれば、読めるでしょう。

この記事のライター

ルウ・ハイアン

文筆家・歴史家として各メディアに寄稿。投資家としての側面も持ち、投資界隈の話題には事欠かない。また経済のトピックを誰にでもわかるように話す技術には定評がある。映画や書籍、または海外ゴシップにも精通している。日本語の他に、中国語・英語も堪能。

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