「働き方改革」の1つとして、副業・兼業の在り方について注目が集まっています。
これまでは就業規則により原則禁止とされる場合が多かった副業ですが、これからは「許可制でOK」、さらには「申請すればOK」というふうに、解禁の流れが加速していくと考えられます。
では、副業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
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ライスワークとライフワークを1つの仕事に求めた時代
皆さんは「ライスワーク」と「ライフワーク」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
私は初めて聞いた時、とても良くできた言葉だと思いました。ライスワークの「ライス」はご飯のこと。ストレートに言えば「食うための仕事」という意味です。
一方、ライフワークは“天職”と訳されるもので、「生きがいを持って、一生をかけてもやりたい仕事」という意味です。
戦後〜高度成長期〜バブルの頃までは、長期雇用が保障される代わりに会社のために献身的に働くという、日本的な雇用システムが上手く機能していた時代でした。副業が原則禁止という就業規則も、このような背景をもとに生まれたものと思われます。
働くことの動機には、「生活のため」という現実的な部分と、「やりがい」や「社会貢献」などの気持ちの部分、大きく分けて2つの理由があります。従来の日本的な雇用システムのように「定年まで1つの会社で勤め上げる」という考え方の場合、この2つの働く理由を1つの仕事に求めることになります。
もちろん「ライスワーク」と「ライフワーク」の両方が1つの仕事で成立するのは、理想的なことです。ですが、全員がそうできるかというと、なかなか難しい側面もありますよね。
仕事に生きがいを見いだせなかった場合
仕事に『生きがい」と思えるような意義が見いだせなかった場合、転職するという手段はあります。ですが、転職は「ライス」の部分を同時に手放すことになるリスクから、なかなか決断するにはハードルが高い選択肢です。
よってこれまでは、そのような状況では仕事は「ライス」と割り切った上で、趣味、家庭、地域、サークル、ボランティアなど、仕事以外の分野で『生きがい」の部分を探していたのではないでしょうか。
実際に、ライフワークは「一生をかけて情熱を持って取り組んでいること」という意味として、趣味など仕事以外の分野でも使われている言葉です。
副業時代は、「ライスワーク」と「ライフワーク」を1つの仕事に求めなくてもいい
このように、これまで「ライスワーク」と「ライフワーク」は、
1、1つの仕事で手に入れる
2、「ライス」のために仕事をして、「ライフ」は仕事以外に求める
という選択肢になっていました。
しかし、これから徐々に「副業」が認められるようになれば、「ライスワーク」と「ライフワーク」を1つの仕事で実現しなくてもよくなります。
以前からも、例えば生活が苦しくアルバイトを掛け持ちする(「ライス」+「ライス」)ことや、芸人さんやミュージシャンのように売れるまでの生活を別の仕事で支えたりする(「ライフ」+「ライス」)ように、仕事を掛け持ちする形はありました。しかし、これらの形は、どちらも副業の目的は「ライス」です。
今後の副業解禁の流れで増えてくるのは「正社員の副業」です。本業で「ライス」の部分をしっかり確保できるからこそ、+αで実現したい夢(=本当にやってみたいこと)にもチャレンジできる、という点で、副業の目的が「ライフ」なのです。
「ライフ」を追いたくなったときに、転職のように「ライス」を手放すリスクを取らなくてもよくなります。このメリットは大きいでしょう。
ライフワークを副業にすると、本業にも相乗効果が生まれる
また、「ライス」を手放さないがために得られる、さらなるメリットが“相乗効果”です。実際に「ライフワーク」を副業としている方にそのメリットを伺ってみると、
・ノウハウが増えた
・知識として持っていたものにリアリティが持てた
・人脈が広がった
・新しいアイデアが生まれた
などの点を挙げられました。本業と副業の交点で、どちらか一方では得られなかった体験が生まれています。本業と副業がお互いを活かし合う状況にあるからこそ、自分自身の成長にプラスに働いているということです。
多様な働き方が認められる社会で必要なもの
副業のように、柔軟で多様な働き方が認められる社会の実現に向けて環境が少しずつ変化しています。そのような中で、私達に必要となるものは「人生のビジョン」ではないでしょうか。物質的に豊かであっても、それが幸せに直結しないのが現代です。
「自分にとって大切なものは何なのか」「私は人生で何を実現したいのか」。副業というカードが今後、夢を実現するための切り札として加わっていくことを良いきっかけに、自分の中の“ライフ”がどこにあるのかを今一度考えてみたいものです。