「20歳を過ぎた大学生の子どもの国民年金は、親が支払ったほうがよいのでしょうか? 」
親御さんからそのようなご相談を受けることもあります。皆様の中にも20歳を過ぎた大学生のお子さんがいらっしゃるかもしれませんね。お子さんの国民年金。今どのような状態になっているかご存じでしょうか?
よくわからない。本人に任せている。色々な声が聞こえてきそうです。そこで今回は20歳を過ぎた学生の国民年金について考えてみたいと思います。
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20歳を過ぎたら学生でも国民年金保険料を支払う義務がある
「20歳を過ぎたら国民年金」というフレーズをなんとなく耳にしたことがある方も多いと思います。お子さんが20歳を過ぎたら、たとえ学生でも国民年金保険料の支払い義務が発生します。国民年金の保険料は1カ月当たり16,980円です(令和6年度の金額)。学生のお子さんが毎月約17,000円を支払っていくのは大変だと思います。
しかし、だからと言って保険料を支払わずに無視してしまう、いわゆる未納状態にしておくのは好ましくありません。未納期間が多くあると、事故や病気で障がい状態になったとしても障がい年金の手続きをする権利自体が発生しない、というケースもあるからです。皆さんのお子さんは未納状態になっていませんでしょうか? 大丈夫でしょうか?
「未納がよくないということはわかった。でも毎月保険料を支払うのは難しい」
そのような場合にまず検討したいのが学生納付特例制度、いわゆる学特(ガクトク)です。学特は、前年所得が基準以下の学生であれば、国民年金保険料の支払いが猶予される制度です。学特の手続きをして承認されれば、毎月の国民年金保険料は0円、つまり納めなくてもよくなり、しかも未納状態にならない、というメリットがあります。
学特の申請は、住所地の市区町村役場の年金課や年金事務所の国民年金課の窓口でするか、申請書を郵送することでもできます。
親御さんが代わりに支払った場合、税金の還付が受けられることも
学特が承認されると毎月の国民年金保険料は支払わなくてよくなります。
しかし、将来もらえる国民年金(老齢基礎年金)は1円も増えません。そのため、学特を利用せず、お子さんの国民年金保険料を親御さんが代わりに支払うというご家庭もあります。国民年金保険料を1か月分支払うと、将来の老齢基礎年金は年額約1,700円増えます。仮にお子さんが社会人になるまでの2年間国民年金保険料を支払ったとすると、約1,700円×24カ月=約40,800円の年金が増えることになります。
なお、国民年金保険料は全額が社会保険料控除の対象になります。社会保険料控除の対象になるということは、年末調整や確定申告をすることによって税金の還付が受けられることがある、ということです。税金還付の金額は収入などによりまちまちなのですが、
例えば年収600万円の会社員の親御さんが1年間分の国民年金保険料を支払った場合、29,000円くらいの還付が受けられるものと思われます。年末調整でも確定申告でも支払った国民年金保険料の証明書の添付が必要になります。
証明書は、納付書で支払った際にもらえる「領収証書」または日本年金機構から郵送される「国民年金保険料控除証明書」のどちらかになります。国民年金保険料控除証明書は、原則11月上旬頃にお子さん宛てに発送されます。親御さんがお子さんの代わりに国民年金保険料を支払うと、お子さんの老齢基礎年金は増えますし、親御さんは税金の還付が受けられることでしょう。可能であれば親御さんが代わりに支払ったほうがよいと言えるかもしれませんね。
学特の期間の保険料は、さかのぼって支払うことも可能
親御さんがお子さんの代わりに国民年金保険料を支払う一方、次のようなご意見を持つご家庭もあります。「もう成人なんだから親があれこれしてあげる必要はない。本人が何とかすべき。親が代わりに支払う必要はない」もちろん、そのようなご意見も決して間違いではありません。考え方、価値観はご家庭によって様々あるからです。
そのようなご家庭は学特を利用することになると思われます。では、学特を利用したら将来の老齢基礎年金は増やすことができないのでしょうか? 実はそんなことはありません。学特の承認を受けた期間の保険料は、10年以内であれば後から支払うこともできます。これを追納と言います。
追納をすることで将来もらえる老齢基礎年金を増やすことができます。お子さんが社会人になり、お金を稼ぐこともできるようになった。学特の期間の保険料をさかのぼって支払い、将来の老齢基礎年金を増やしたい。そのようなニーズに応えるような制度と言えそうですね。
※追納の手続きは最寄りの年金事務所の国民年金課ですることができます
※追納の保険料も全額社会保険料控除の対象になります
まとめ
学生のお子さんの国民年金保険料は親が代わりに支払ったほうがよいのか? これについては「払ってあげた方がよい」や「払う必要はない。学特で十分」など意見が分かれるところです。どちらが正解なの? と迷ってしまう方も多いかもしれません。結局は「よそはよそ、うちはうち」と言うことで、その答えはご家庭ごとに異なるということになります。我が家はどうしていきたいのか? 親子で話し合って決めてみるとよいでしょう。