家計における医療費支出は少ないほうが望ましいものの、多くかかってしまう年もあります。そんなときは確定申告で医療費控除の手続きをし、所得税の還付金をもらいましょう。
医療に関係するものであれば何でも医療費控除の対象になると思われがちですが、医療機関へ支払った費用であっても対象外となる場合もあります。
意外と知られていない医療費控除の対象・対象外ポイントについてご紹介します。
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そもそも「医療控除」とは?
「医療費控除」とは、年間にかかった医療費から保険会社支給の保険金等と10万円(総所得金額200万円未満の人であれば総所得金額の5%)を引いて残った金額に所得税率をかけた、金額が戻ってくる仕組みのことです。
所得税の税率は所得金額によって異なり、例えば所得金額600万円の人であれば20%。年間にかかった医療費合計が20万円で保険金の補填がなかったケースの場合、(20万円―10万円)×20%=2万円となり、2万円の還付金を受け取れます。
【目の治療】眼鏡やコンタクトレンズは対象外だが、レーシックは対象
医療費控除の対象となるものは、原則として治療にかかわるものに限られます。そのため、医師の治療を必要としていない人の近視や乱視のための眼鏡・コンタクトレンズ費用は医療費控除の対象外です。ただし白内障や緑内障などの治療のために必要と医師が認めた場合の眼鏡(約2,000円~)の費用は対象となります。
一方、健康保険適用外のレーシック手術費用(約15万円~)は比較的高額であることが知られていますが、眼の機能そのものを医学的に回復させる手段であるため医療費控除の対象です。
このように健康保険の適用・適用外と、医療費控除の対象・対象外は別と考えましょう。
【定期検診】人間ドッグや健康診断費用は、検査結果によって変わる
インフルエンザ予防接種や乗り物酔い止め薬など、予防目的の医療費は医療費控除対象外です。そのため人間ドッグ(約4万円~)や健康診断(約1万円~)の費用も対象外と思われがちですが、実はその後の検査結果によって変わります。
検査結果が良好あるいは経過観察程度であれば医療費控除の対象とはなりません。しかし、検査の結果で治療が必要となり治療を開始した場合には対象となるのです。
【歯の治療】自由診療であっても、一般的な水準を超えないものは対象
歯の治療時、保険適用の銀歯(約3,000円~)にするかセラミック(約3万円~)や金歯(約3万円~)にするかを選択するケースがあります。セラミックや金歯は一般的に使用される材質であり一般的な支出水準を著しく超えない金額と判断されているため医療費控除の対象です。
見た目を綺麗に整えるための歯科矯正費用は対象外ですが、子供の成長阻害が心配される不正咬合を治すための矯正費用(約30万円~)などは対象となっています
【リラクゼーション】治療目的であれば、アーユルヴェーダや鍼灸も対象
美容や癒しを目的としたアロマトリートメントやアーユルヴェーダは医療費控除対象外ですが、クリニック医師の診断で行われる治療目的のアーユルヴェーダは対象です。
疲れを癒やしたり体調を整えたりするための鍼灸やマッサージは対象外となる一方、国家資格を有している鍼灸師による腰痛治療などを目的とした保険適用施術であれば対象となります。ただし、自費施術の医療費も治療の一環であれば控除の対象になります。領収証は「保険分・保険外分」として分けて発行されていますが、医療費控除の申請は合算の金額で申請してください。
しかし、必ずしも自費施術が控除の対象になるとは限りません。法外な金額であれば税務署で尋ねられ、患者が「気持ちいいから」等と回答すれば控除の対象から外れます。
【交通費】治療目的や、「公共交通機関が使えない」などの理由があれば認められる
治療目的で病院へかかる際の交通費は医療費控除の対象です。ただし、自家用車利用時のガソリン代や高速代は対象外となる点に注意しましょう。
また、「公共交通機関が使えない」などの理由がある場合はタクシー代も認められます。忘れずに領収書をとっておきましょう。
最後に、平成29年分の確定申告から医療費控除を受ける際の手続きが簡略化されました。「医療費控除の明細書」の提出により医療費領収書の提示が不要となったのです(ただし5年間の保管義務はあります)。
対象となるものをしっかり知っておけば、医療費控除手続きによる所得税の還付金を漏れなく受け取れます。今回お知らせした内容を次の確定申告の際に役立ててみてください。