【特別掲載】2022年までに起こる産業革命に備えておくべき資産運用のあり方とは? 〜定年後設計フォーラム講演録:渋谷 豊氏 前編〜

2018年6月11日

2018年3月4日(日)に開催された「定年後設計フォーラム2018」。定年が見え始める50代が、定年後の人生を豊かで自分らしい生活が送れるよう、50代のうちから定年後の備えを始めることを提唱し、その必要性を多くの50代が気づくキッカケとなったフォーラムとなりました。
今回、大好評の内に幕を閉じた定年後設計フォーラムの講演を特別にシリーズとして数回に渡ってお届けします。
第三回はファイナンシャルアカデミー総合研究所の代表でもある渋谷豊氏の講演です。
定年後東京オリンピック開催2年後の世界、2022年。これからの5年間で日本の経済、世界の情勢はどうなっているでしょうか?
資産運用のエキスパートが、伸びる産業と企業、日本経済の未来を読み解き、50代向けの資産運用、投資信託との付き合い方をお話しいただきました。
========(以下、渋谷豊氏講演)========
皆さん、こんにちは。ファイナンシャルアカデミー総研の渋谷です。私は20数年間金融機関で働いており、資産運用の世界に携わっていました。いわゆる相場を見るような仕事だったのですが、20数年間で色々なことが起こりました。
95〜96年には、山一証券や北拓銀行が破綻し、その後、ITバブルと言ってアメリカのYahooという株が1年半で200倍になるような経験もしました。その後はITバブルの崩壊で大きく株価が下がることも経験しましたし、その後、金融証券化商品がすごく普及し、その後アメリカからお金が入って、2003年から2007年にかけて相場が上昇し、小泉政権の郵政改革でも大きく相場が上がる経験をしました。
2008年以降はリーマンショックがあり、すごく株価が下がることも経験しましたし、その後は欧州危機というイタリア・スペイン・ギリシャが破綻するような話もでました。その都度必ずテーマがあり、そのテーマに動揺して株価は大きく動きます。日経平均という日本を代表する255社の株価の平均は、下が7,000円、上が24,000円まで約3.2〜3.3倍動きました。
今日の話は、それぞれの小さなテーマというより、根幹の大事な流れを皆さんに知っていただき、それを資産運用に活かして欲しいと思い「2022年までの資産運用のあり方」というテーマにしました。是非楽しんでいただければと思っております。

経験だけでは測れない時代が到来

将来を豊かに過ごすために、皆さんはどういうことをされていますか?
例えば住宅ローンを早く返したり、お子さんを大学に行かせて大学資金を提供したりということもあるでしょう。中でも「教育」は大事だと多くの皆さんは考えられているかと思いますし、「経験」も同様だと思います。例えば海外留学や職業訓練のような教育や経験です。今日は、こういった傾向が変わってきていて、教育と経験だけでは測れない時代が来ていることについてお話したいと思います。
1つの例としてオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士という方が、2014年に発表した「未来の雇用」というレポートがあるのですが、2024年のアメリカにおいて、2014年にある職業のうち、47%が無くなっている可能性があると書いてありました。バーテンダーという職業がなくなる、とこのレポートに書いてあります。
お寿司屋さんなど、人にさらされて会話したり粋な振る舞いをしたりする「さらしの商売」という職業は、未来も変わらずあると考えられていましたが、このレポートによると失われるとありました。今までの経験や教育で考えていたように、コミュニケーションを取ればいい、というだけではない違う世界があるのではと言われ始めたキッカケが、このレポートでした。
 
もう1つ、「ワーク・シフト」という本があります。ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授が発表したものです。彼女も同じようにこの10年間で働き方が大きく変わりますと書いています。その根本になるテーマが次の5つです。
1つ目は、テクノロジーの進化です。テクノロジーが大きく進化することによって、働き方を変えないといけないと言う事が1つ目です。
2つ目は、グローバル化の進展です。グローバル化はすごい勢いで進展しているのはご存知と思いますし、この週末(2018/3/4)の1番のニュースは、トランプ大統領が関税を25%かける発表でしたが、貿易戦争でそういったことが起こります。これだけグローバル化が進んでいるのですが、そういうことを仕掛ける時代なのですね。これはグローバル化がどんどんして進展している逆の現れかと思います。
3つ目は、人口構成の変化と長寿化です。2060年、世界の人口は、90億、100億人近くまで増えていきます。今、1年間で1億円以上人口が増えている状態です。日本は2050年には9700人まで人口が減っていきますが、世界的には人口はすごく増えていく、そういった構造が、やはり10年間で働き方を変えるきっかけだと言われています。
4つ目は社会の変化、5つ目はエネルギー・環境問題の深刻化です。世界の人口増加のうち多くはアフリカやアジアの人たちです。彼らから見ると、先進国の私たちは好きなだけ車に乗って良い生活をしたのに、これから新興国の人たちは排ガスの問題で車に乗ってはいけないと言われるような社会の変化があり、エネルギーの問題も出ています。90億人が生活することになると、エネルギーは必ず奪い合いになると言われています。
こういった5つのことが影響して、これからの私たちの働き方は変わっていくと書かれています。

経験だけに頼らずに2022年をイメージ。先を見通す資産運用を。

このように、今までの経験だけでは、うまくいかなくなることが増えるため、先を見通さなければ、資産運用の世界においてもダメなのだろうと考えられます。ということで本日は、2022年をイメージして、そこまでの5年間に身につけるべき経験についてお伝えし、2022年以降のこれからの人生100歳までの間、どう活かして欲しいかを話したいと思います。
なぜ2022年なのでしょうか。カタールのワールドカップとか、北京の冬期オリンピックがある時期ですが、そういうことではなくテーマを「2022年までの資産運用のあり方」としたのは、2015年から2022年に、世の中が大きく変わるためです。「第4次産業革命」と言われるAI、IoTが中心となって、世の中が大きく変わる時代に入っていることを知っておいてください。
これからAI、IoTの時代が来るとは言っていません。もうすでに2〜3年経っていて、2022年までに新しい時代が訪れます。第4次産業革命とかAIとかIoTがどんなものなのか、そしてそれらが与える影響を知っていただきたいと思います。

2022年の世界とは

  
  
この4つの写真を見てください。
左はロボットから何かを勧められて笑顔で話している女性です。右はドローンタクシーと言って、今年からドバイで実際にスタートする乗り物です。ドローンというのは物を運ぶものとしてご存知かと思いますが、無人のドローンに乗って人が移動するような感じです。私は以前仕事でドバイに行ったことがありますが、ドバイは40°Cを超えるような場所で、こういう乗り物が必要になってくるのだろうと思います。
左下は、自動運転です。座席が向かい合っていますが、新幹線の席のようなイメージで、一応、左にハンドルがあります。このハンドルがある時点で、レベル3ぐらいの車かなというのが分かりますが、ある程度までを機械が運転してくれものです。
そして右下はAIです。これはよく映画などで見ますが、こういう画面に、向かって操作すると思い通りの世界ができるというイメージです。人間の頭脳に取って代わるようなものが出来上がって、人工知能が席巻する時代がやってくると言われています。

GDPが大きく成長する”技術革新”の「ど真ん中」にいる今

実際に起こるかどうかは別にして、今のような技術革新は、資産運用にとっては必ず必要で、一番大きなチャンスなのです。ヨーゼフ・シュンペーターという経済学者は「GDPという国の成長力を表すものが一番大きく成長する瞬間は、技術革新の他に無い」と言っています。今年2018年は、2015年から2022年における大きな技術革新の「ど真ん中」にいるということを、是非覚えておいてください。つまり今、チャンスがゴロゴロあるということです。
新しい時代は、7年周期だと言われています。「dog year(ドッグイヤー)」という言葉があり、人間の7歳と犬の1歳が同じなのでそのように言いますが、時代はすべて「ドッグイヤー」で転換するとアメリカの論文で言われています。実は2000年から7年周期で時代が変わっています。
・金融技術(工学)時代  Financial Innovation /2000-2007年
・新テクノロジー時代  New Technology/2007.6.29-2015年
・AI・IoT時代 Fourth Industrial/2015-2022年
まず2000年から2007年は、金融技術(工学)時代(ファイナンシャル・イノベーション時代)がありました。これは金融の証券化という言葉が進み、アメリカの住宅ローンなど、一般の方に手が届きやすい状況が作られ、そのおかげで住宅の価格が大きく高騰し、所得も大きく高騰して、世界中が潤った時代が2007年までありました。
次に2007年の6月29日のiPhone発売です。その時から携帯電話がスマートフォンに置き換わり、世の中が大きく変わりました。その時代が2015年まで続き、2015年から2022年に向かっている今、何が起こっているかというと、AI、IoT時代に入っています。技術革新、技術の進化はこのように進んでいます。
以下は、アメリカの家庭への普及が10%から90%使われるようになった年数を示したものです。
・固定電話:73年(1903-1976年)
・PC:33年超(1985-現在)
・携帯電話:14年(1993-2007年)
・液晶テレビ:7年(2004-2011年)
・スマートフォン:7年(2007-2014年)
・AI、自動運転:7年?(2015-2022年)
固定電話は、1903年に登場してから普及まで何と73年かかりました。パソコンは33年、携帯電話はぐっと縮まり14年間です。その後の液晶テレビは7年、スマートフォンも7年で普及しています。ということは、今スタートしているAIや自動運転は7年で普及すると考えてもいいと思います。前述の4つの写真を見て、そんなこと起こるのかなと思った方も多いと思いますが、実は7年で実現可能だということになります。

世界トップクラスの科学者たちが考える2100年

アメリカの理論物理学者でミチヲ・カクという方がいます。この方は2100年までに起こると予想した「2100年の科学ライフ」という本を出しました。全世界のトップと言われている屈指の科学者たちにヒアリングをしてまとめたものです。そこに書かれている内容は、当時は「えー!?」という感じだったのですが、よく見るとそうでもない内容が書いてあります。
例えば2030年までに、インターネットメガネ、インターネットコンタクトレンズの登場とあります。
つまり、正面を見て目を動かすと画面がスクロールする、クリックも、瞬きすればクリックできる時代が、2030年までにくると言っています。無人運転車両もほとんど2020年に可能になるとあります。GMが2018年年末に自動運転をスタートしますし、2019年には空飛ぶ飛行機が発売になります。
推定の値段が1億4千万円なのでちょっと高いのですが、いずれ空飛ぶ世界がやってくると言われています。「バーチャルな世界へ行く(架空の世界に行って体験)」というものがありますが、VRと言うメガネをかけて体験するものは実現しています。
DNAチップを体の中に埋め込んで、癌細胞が危ない状態になっているかを教えてくれるバイオマーカーなどの素材は、もうできる寸前と言われています。そしてその癌細胞を壊していくことができる「血管の中を走るナノマシン」も、なんと2030年までにやってくると書かれています。

2030年から70年になると、どんな世界が待っているか。「ペットのようなロボット」が登場するそうです。これはaibo(アイボ)ができたので実現すると思いますが、「意識を持ったロボット(自己認識をして目標と未来を自らシミュレーション)」も登場すると書かれています。言われたことだけではなく、自分の好きなことをやると言われています。あとは「人工的な脳」「脳の全ての機能や構造が解明」「遺伝子治療」「癌との共存」もあります。
50代の皆さんは、あと50年、頑張って頂ければ癌が無くなる時代を経験できるかもしれません。最後に「デザイナー・チャイルド」という、自分好みの子供ができると書かれています。これが良いかどうかはコメントしませんが、DNAをうまく掛け合わせ、駆けっこが速い子だったり、頭のいい子だったり、身長が高い子だったりできる時代が来ると書かれています。
2070年〜2100年には、「夢の録画」や「心で機・物を動かす」「脳のスキャン」「老化を遅らせる、寿命を大幅に伸ばす」「絶滅動物の復活」が書かれています。

未来予想は戯れ言ではない!?

 
こういうことを聞くとそんなことにはならないと思う方が多いと思いますが、実は私はそうは思っていません。なぜかと言うと「20世紀の戯れ言」という報知新聞が1901年1月2日〜3日に掲載した内容が面白い参考例として紹介できます。1901年に書かれたものですので、100年後、つまり2001年にこういうことが起こっていると書かれた「未来予想」が、かなり実現できているのです。
1901年の段階では「そんなことあるの?」と思った内容ばかりです。「無線電話で海外の友達と話が出来る」と書いてあります。これは携帯電話での国際通話にあたり実現しています。「いながらにして遠距離のカラー写真が手に入る」も、メールに添付して写真を送ることで実現できています。「7日で世界一周」というのもありますが、もちろん実現できています。
「電気の力で野菜が成長」や、「機械で温度を調整した空気を送り出す」というエアコンにあたる予想もあります。「葉巻型の列車が東京-神戸間を2時間半で走る」という予想もあります。「写真電話で買い物ができる」というものもありますが、Amazonや楽天などのインターネットショッピングで実現していますね。「馬車がなくなり自動車と自転車が普及」というのもありますが、実現しています。1901年には、「戯言」と言われていたことが実現できているということは、さきほどのDNAチップ等の話も、実際に起こりうると考えられます。

未来投資戦略 2017-Society 5.0に見る、これから伸びる産業

「未来投資戦略2017-Society 5.0」というものが、去年の2017年6月に閣議決定し、戦略の全体像を示すレポートが内閣府から出ましたが、ここに投資のヒントがあるので、何度も見てください。このSociety 5.0とは何かと言うと、1.0は狩猟民族、狩猟時代、2.0が農耕時代、3.0が工業化時代、4.0が情報化社会です。そしてSociety 5.0が今の時代で、超スマートシティ、スマート世界と書かれています。いろんな物がスマートに繋がる時代が来ると言うのがこの5.0です。
内容をまとめてみました。

区分のところのB to Cというのは、Bが会社、Cが個人です。Bの法人からCの個人に行くものです。法人から法人のものというのがありますが、日本は安倍政権を含めてこの方向で世の中を良くしようということです。その方向に国が向かうということは、その産業は大きく伸びると思ってください。
「健康寿命の延伸」は、AIや遠隔支援診療が入ってきます。そういうニュースがあった時、関わっている企業や産業は有望だという風に考えましょう。
「移動革命の実現」は、隊列走行ドローンというのができます。隊列走行というのは、1つのトラックが先行して走ると、残り3つぐらいが無人運転で後を追ってくるものです。つまり1人で4台運転できということです。ドローンは、いわゆる山の中に住んでいるような薬を届けられないような場合にドローンで送り続けたり、定期的に送るとことができたりすると言われています。
「ロボット革命」は、足腰が弱った時にサポートしてくれるロボットであったり、工業的なロボットであったりと、全てを含めてかなり変わってくると言われています。
「FinTech(フィンテック)の推進」は、決済が今までのように送金ではなく、お金の伴わない決済が進みます。自分の口座から引かれて向こうの口座から引かれるようなものや、金融テクノロジーが進むと言われているものです。
「サプライチェーンの次世代化」はすごく簡単に言いますと、ネットで買うような洋服が、ちょっと長すぎて裾が余っちゃったので切りたいという時に、自身で切ったりお直しに出したりするようなことも全てインターネットでできるような、物の供給が劇的にスムーズになることをサプライチェーンの次世代化と考えています。
「シェアリングエコノミー」は、私も個人的に注目しています。例えばマンションがA〜C棟まであったとして、住人が各棟100世帯、300世帯ある場合、その300世帯がそれぞれ車を持つと300台必要ですが、シェアリングエコノミーで共有名義で車50台をシェアするという具合です。スマートフォンで、日曜の朝7時から10時までスーパーに行くため予約と言うと、B棟の前に車がきて、買い物から帰ってきたら車が勝手に車庫に入るというような時代が来ると言われています。
「快適なインフラ〜i-Construction(アイコンストラクション)」は、例えば、遊休地を開発する場合、今までは測量は棒を立てて人が測っていましたが、ドローンで上から測量することで測量時間が1/3以下になります。そしてそれをシャベルカーのカーナビに入れて自動で整地をします。
それができた後に、今度はドローンで作った設計図を基に、PC工法といって、コンクリートを工場で全部作って現地に行って積み上げるだけ、ということができます。実際に中央道東名で行われている工事のほとんどがこの方法で行われていて、工期は2/3から半分以下になってきました。この他「データ活用基盤の構築」や「規制のサンドボックスの創設」があります。この9個はすごく有望だと覚えていただければと思います。

これはマッキンゼーという世界で一番有名なコンサルティング会社が出した、2025年の世界がこうなるというレポートで市場規模を表したものです。株式投資などは、規模の小さいものに投資をしても残念ながら成果がでづらいです。誤解を恐れずに言うと、食感の新しいチョコレートが出たらすごく楽しいですが、経済規模は数億円レベルです。新しく素敵な発明ですが、やはり規模が大きいものに委ねないと、なかなか成果が出ないことがありますので、こういう順番で経済規模があることを覚えてください。
一番上が「モバイル・インターネット」です。
これは皆さんが持っている携帯電話とかそういったものの規模です。なんと累計ではなく、2025年で1,000兆円です。日本のGDPの1.5倍、中国のGDPとほぼ同じくらいになると言われています。
あとAIが670兆円、そしてIoTが620兆円、クラウドテクノロジーから始まってこのように多くのテクノロジーを集めていくとなんと2,000兆円を軽く超える規模のことが、変革として起こっている、今はその真ん中にいるのです。ですので、AIとかIoTという言葉がよく分からないと思わずに、是非知っていただきたいと思います。
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この記事のライター

マネラボ編集部

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