統計学の基本を学ぼう② 母集団の「分散」とは?

2019年11月16日

再びテストの点数を例として考えましょう。
ケース1 50、55、60、65、70
ケース2 20、40、60、80、100
計算は省略しますが、両ケースとも平均は60となります。平均が同じだとしても、この2つのケースは同じ特性と言えるでしょうか。ケース1では点数の散らばりが小さいですし、ケース2では散らばりが大きくなっています。

分散

ここで「分散」という指標が必要となります。分散とはデータの散らばりの程度を表す指標で、「(データの値-平均)^2の平均」として計算されます。
では、さきほどのテストの点数でそれぞれ分散を計算してみると、
ケース1の場合、
((50-60)^2+(55-60)^2+(60-60)^2+(65-60)^2+(70-60)^2)÷5
=((-10)^2+(-5)^2+0^2+5^2+10^2)÷5
=(100+25+0+25+100)÷5
=250÷5=50
ケース2の場合、
((20-60)^2+(40-60)^2+(60-60)^2+(80-60)^2+(100-60)^2)÷5
=((-40)^2+(-20)^2+0^2+20^2+40^2)÷5
=(1600+400+0+400+1600)÷5
=4000÷5=800
となります。ケース2の方が散らばりは大きいことから、分散も大きくなるわけです。
分散は「(データ-平均)^2の平均」と、2乗したものの平均をとっていることから、元のデータ、今回の例ではテストの点数とは単位の違うものとなってしまいます。そこで「標準偏差」というものがあります。標準偏差は分散の平方根をとったものと定義され、それにより、標準偏差はデータが平均よりどの程度離れているかを表すものとなります。
先ほどのテストの点数の例ですと、それぞれの標準偏差は、
ケース1の場合、
√50≒7.1
ケース2の場合、
√800≒28.3
となります。テストの平均である60から、それぞれ平均的に7.1、28.3離れていると考えることができます。
では、資産運用の分野においては分散はどのように活用されるのでしょうか。ここでは、2種類の資産の過去5年間の運用利回りが以下のとおり与えられているとします。

それぞれ運用利回りの平均を求めると、
資産Aの場合、
(1.0+0.9+1.1+0.8+1.2)÷5=5.0÷5=1.0
資産Bの場合
(1.0+(-2.0)+4.0+(-4.0)+6.0)÷5=5.0÷5=1.0
と、同じ1.0%となります。
一方、分散は、
資産Aの場合、
((1.0-1.0)^2+(0.9-1.0)^2+(1.1-1.0)^2+(0.8-1.0)^2+(1.2-1.0)^2)÷5
=(0^2+(-0.1)^2+0.1^2+(-0.2)^2+0.2^2)÷5
=(0+0.01+0.01+0.04+0.04)÷5
=0.1÷5=0.02
資産Bの場合、
((1.0-1.0)^2+(-2.0-1.0)^2+(4.0-1.0)^2+(-4.0-1.0)^2+(6.0-1.0)^2)÷5
=(0^2+(-3.0)^2+3.0^2+(-5.0)^2+5.0^2)÷5
=(0+9.0+9.0+25.0+25.0)÷5
=68÷5=13.6
となります。(ここでは、分散はパーセント単位で算出しています。)
資産Bの方が運用利回りに年度間の差があるため分散も大きくなるわけです。では、このような平均、分散がわかっている場合、資産A、資産Bのどちらを選ぶでしょうか。
同じ平均の場合、より分散が小さい資産を選ぶ、という考え方が投資の世界では一般的です。同じ期待運用利回り(運用利回りの平均)であれば、わざわざリスクをとりにいかないためです。
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この記事のライター

添田享

日本アクチュアリー会正会員、日本証券アナリスト協会検定会員。1級DCプランナー。アクチュアリー・ゼミナール講師。大学、大学院で数学を専攻し、大学院修了後、アクチュアリー候補生として信託銀行に入行。その後、証券会社、生命保険会社などで一貫してアクチュアリー業務に従事。
アクチュアリーの中でも、生保アクチュアリー、年金アクチュアリー双方で業務経験が豊富である数少ないアクチュアリー。現在は、アクチュアリーの業務経験を活かして、アクチュアリー試験などの金融関連資格の講師、数学の講師など幅広い分野で活躍。

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