50代は区切りとなり得るライフイベントがいろいろと続きます。仕事においては、別会社への転籍や役職定年など、今までには無い厳しい現実が待っている時期であるともいえるでしょう。
人生100年時代において、50代がこれからの50年を豊かにしていくためには、どういうことを心がけていけばよいのでしょうか。松尾一也著『50代から実る人、枯れる人』 より、残りの人生を自分らしく実らせていくためのポイントをご紹介します。
人間関係を整える
ある意味50代は最も「孤独」に耐えないといけない時期かも知れません。パートナーとも結婚して20年以上が経過していて、よく言えば「空気」のような関係になり会話も希薄になるケースが多いです。子どもたちも成長して、精神的に親離れをしていて、親密な対話もほとんどなくなってしまいます。〜中略〜 そんな時だからこそ、それぞれの家族と丁寧に付き合わないと今後の人生で悔い残すこととなります。<36・37ページより引用>
稀代のリーダーたちと交わり、長年、人間教育の分野に携わってきた著者は、50代を境に、実っていった人と枯れていった人には、いろいろな違いがあると語っています。
考え方によっては、50代は人生のマネジメント次第で今まで育ててきた果実を手にしていくことができる、一番愉快な時期。そのためには、今だからこそ人間関係を整えておく大事さを著者はあげています。
ことに一番身近にいる家族との人間関係は、何かとおろそかにしがちです。その関係性を温めるコツは、改めて丁寧に話を聞き届けることが大切なのだとか。パートナー、息子や娘、両親、それぞれの本心を聴いてあげることが、お互いの関係性を温めることになるといいます。そして、家族に限らず、人間関係のスタートラインは「笑顔で挨拶」することであると著者はいいます。
50歳を超えると、一般的に表情が乏しくなりがち。ミドルシニアこそ、爽やかに、誰にでも自分から笑顔で挨拶やちょっとした声かけをしていくことが枯れないポイントなのだとか。50代は生きることが苦しい時代かもしれませんが、家族や身近な人との人間関係を丁寧に整えて、明るい言葉がけをしていくことで、次の10年を豊かに実らせることができるようです。
目に見えない報酬を稼ぐ
50歳からは仕事の中で目に見えない報酬に目を向けてみるといいものです。目に見えない報酬とは、まずはその「仕事自体」が報酬ということです。その仕事に出遭えた喜び、その仕事自体が報酬という感動を味わいましょう。次の仕事があるということは実にありがたいものです。<113ページより引用>
報酬というと、お金とダイレクトにつながっている印象を受けますが、50代は目に見えない報酬を大切にしていくことを著者は語っています。まず、仕事があること自体が報酬であり、長年培ってきた能力自体も報酬の一部であるといえるでしょう。そのうえで、仕事を通じて得た「人間的成長」がいちばんの報酬であると著者はいいます。
近年、シニア世代の起業が多くなってきていますが、目に見えない報酬をしっかりと受け取っている人こそが、次のステップに踏み出していけるのかもしれません。目に見えない報酬は、やがて目に見えるお金や評価にも自然につながっていくといえるでしょう。
さらに著者は、「御用達」の精神の大切さを語っています。50歳を過ぎて心がけるべきは「この会社・このお店・この人だからお願いする」と言ってもらえる人になることが生き残る術なのだとか。人生も後半戦になると、若い頃のようにバリバリと量はこなせないものですが、経験と技量で相手にいかに喜んでいただけるかに集中していくことが実る人になるコツといえそうです。
長持ちしている人の流儀に学ぶ
歌舞伎役者の坂東玉三郎さんは「遠くを見ない、明日だけを見つめる」という言葉を語っているのだとか。長年、芸を磨き、大役を演じ続けている人物ならではの珠玉のメッセージといえるでしょう。
仕事をしていると、中期・長期計画の重要性をよく耳にします。しかし、先の心配ばかりしていたら、前に進めなくなってしまうこともよくある話です。明日の準備を怠らず、シンプルなルーティーンの繰り返しを大切に。目の前の人間関係を整えて、丁寧に仕事に向き合っていくことで、気がつけば実りある人生を手に入れることができるのかもしれません。
タイトル:50代から実る人、枯れる人
著者:松尾一也
発行:海竜社
定価:1,188円(税込)