「家のローンがまだ残っている」「蓄えが少ないので年金だけでは暮らせない」など、退職後も再就職を考えている人がいる一方、「退職金をもらって悠々自適に過ごしたい」という羨ましい方もいます。
でも、金と暇があるからこそハマる罠もあるのです。このコラムでは、“そんなアナタに仕掛けられた罠”と、ハマらないように“今後どう備えていけば良いのか”について、私の経験を含め解説していきます。
退職金をもらった金と暇のある人は、証券会社の恰好のターゲット
少し前の話になりますが、ある大手証券会社のマネーセミナーの情報をネットで見つけました(テーマ:日本経済の今後の見通しと有望な日本株)。
そのセミナーは平日の昼間開催のものでしたが、たまたま会社の休みが取れたので申し込んでみることにしました。
当日、会場に入ってまず驚いたのが高齢の方が多いこと。65歳以上はもちろん、70代以上と思える方も結構いらっしゃるのですね。
この手のセミナーは、講演者から一通りのスピーチが終わると、証券会社の口座開設の説明があり、その後質問タイムになるのですが、参加者の一人が発した質問にホント耳を疑いました。
その質問とは「退職してこれから株を始めようと思うのですが、窓口に行くと、上がる株を教えてくれるのですか?」というものでした。
証券会社の方もさすがに「上がる株を教えます。」とは言いませんが、「お客様のご意向に沿って適した株を提案させていただきます。」という教科書的な回答をされていました。
その時、心の中で思ったことは、「その年から株を始めるの?窓口で相談しても手数料目当てに、たくさん売買させられるだけだよ・・・」と。
そう、退職金をもらって金と暇のある人は証券会社の恰好のターゲットなのです。
これからの余命とリスク許容度は“比例”と考える
間違えてもらって困るのは、株式投資自身が悪い訳ではないということです。
ただ、リスク資産への向き合い方は、これからの余命をしっかり考えて行う必要があります。
ある程度若い人なら、これから多くの時間があるので、積立投資を実践することにより、リスクを減らすことができます。長い時間の中で安値になる時期が訪れても、逆に買い場にもなりますものね。
一方、これからの余命が限られる方は、いくら将来値上がりしても、生きている間に安値が続けば利益を受けることができません。また、安値のときに蓄えを取り崩す必要が生じると、安定した生活を脅かすことにもなりかねません。
ヒヤヒヤしながら過ごさないといけないなんて本末転倒そのものですね。老後は穏やかな気持ちでゆったりと過ごしたいものです。
株式投資を行うなら準備を怠りなく
老後、株式投資を行う上で大切なことが2つあります。
まず一つ目は「年金を含め、生活できるお金はしっかりと確保して余裕資金で行うこと」。
もう一つが、「退職前からしっかりと勉強をして備えること」です。
この2点を守れば、マンネリになりがちな老後を、頭を使ってアレコレ考える株式投資は、経済を始め世の中の動きが分かり、脳の活性化にも最適です。
退職までまだ時間に猶予がある方は、リスク資産をどう扱えばよいのかの基礎をしっかりと勉強しておくことを強くオススメします。
そして、退職後にマネーセミナーに行くことがあれば、証券会社の罠も見抜け、逆に自分の投資シナリオをベースにした意味のある質問ができると思います。
「窓口で上がる株の相談に乗ってくれるのですか?」これは禁句です。