海外で病院に行っても高額療養費が適応される!?

2019年5月15日

海外で病気になっても日本の健康保険が使えないことは知っている人も多いでしょう。もしも海外旅行中に病気やケガで病院に行くことになれば医療費の全額を支払うことになりますが、実は後からお金を戻してもらうこともできることは知らない人が多いかもしれません。もしもに備えて出発前に必要条件などを確認しておきましょう。

日本の健康保険のすごい制度!高額療養費

あとからお金を戻してくれる健康保険の制度といえば、「高額療養費」という制度があります。
日本の健康保険制度では、年齢や所得などによって1カ月当たりの医療費の「自己負担限度額」が決められています。病気やケガで診療を受けたり、入院したりで1カ月間(1日から月末まで)に実際に医療機関で支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合、その超えた分を後日払い戻してくれます。
たとえば自己負担限度額が57,600円の人のケースでみてみましょう。
仮に病院窓口で8万円の医療費を請求されて払っても、後日健康保険から払い過ぎの22,400円を払い戻してくれるというものです。どんなに医療費を払っても、1カ月当たりの最大自己負担は57,600円で済むというのは金銭的にとても安心ですね。
ただし、高額医療費は健康保険が適用になる診療・治療にしか払い戻しされません。たとえば入院時の差額ベッド代や先進医療費用など、健康保険の対象にならない費用に対しては払い戻しはされないことは知っておきましょう。

健康保険が使えない海外での治療はどうなる?

では、日本の健康保険が使えない海外で医療費を払った場合はどうなるのか気になりますね。
結論から言うと、海外で病気やケガで病院に行き医療費を支払った場合でも、後日、日本の健康保険から高額療養費が払い戻されることになっています。
ただし、そもそも海外では日本の健康保険証は使えませんから、病院の窓口で医療費を払う段階から高額療養費を払い戻してもらうまでのステップは日本の場合と異なります。ステップ順に説明するので参考にしてください。

海外の病院で:原則として全額自己負担

日本のように病院窓口で健康保険証を提示して3割だけ払うというようなことはできません。現地の医療費基準に従い、提示された金額を全額自分で払うことになります。
現地の医療費は国や地域によっても異なりますが、元々の医療費基準が日本の場合とは異なるのが通常です。国によっては日本に比べて桁違いに高いところもあります。

帰国後:海外療養費を申請

日本に戻ったらすぐに「海外療養費」の申請をしましょう。
海外で受けた医療行為でも、それが日本国内で保険診療として認められているものであれば海外療養費の支給対象になります。
日本で病院にかかった場合に3割自己負担して、残りの7割は健康保険が払ってくれますね。海外療養費とは、その7割分に相当するものです。
ただし、計算基準はあくまで日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)です。仮に医療費の高い国で、仮に盲腸の手術を受けて200万円相当を払っても、仮に日本での盲腸手術および入院にかかる医療費が40万円だとしたら、海外療養費の計算基準も40万円で計算されます。
計算式で表すと、40万円×70%=28万円
つまり、28万円が海外療養費として払い戻しされるという仕組みです。なお、治療目的で敢えて海外に行った場合には海外療養費の対象になりません。

帰国後:高額療養費を申請

海外療養費と同様に、日本国内で保険診療として認められているものであれば高額療養費の払い戻し対象になります。
計算基準も同様で、日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)です。
上記の盲腸手術・入院の例でいうと、日本で本来自己負担すべき金額は3割の12万円という計算になります。
自己負担限度額が57,600円の人のケースなら、12万円は払い過ぎになります。
計算式で表すと、120,000円-57,600円=62,400円
つまり、62,400円が高額療養費として払い戻される仕組みです。

出発前に準備しておこう

・申請書類
海外療養費も高額療養費も、申請する際には海外で診療を受けた医療機関に記載してもらった所定の診療内容証明書や領収証明書を提出することになっています。
これらの書類は協会けんぽや自治体のウェブサイトなどからダウンロードし、印刷して使用できますが、旅行先でプリントアウトするのは容易ではない場合がほとんどです。あらかじめプリントアウトして持参しておくといいでしょう。
なお、現地で支払った領収証の原本も必要です。忘れずにもらうようにしてください。
・海外旅行保険
海外療養費や高額療養費が出るとは言っても、海外と日本の医療事情の違いから場合によっては自分持ちとなる金額が大きくなる可能性もあります。
また、後日戻ってくるとしても、一旦は自分で立替えしておかなければなりません。民間の海外旅行保険によっては、提携先医療機関で治療を受ければ自分で立替える必要がない場合もあります。
一時的にでも大きな負担がかかるリスクを考えれば、出発前に加入しておくことも検討してみましょう。海外旅行保険の補償については「海外旅行保険、加入しなくても大丈夫?」の記事も参考にしてみてください。
せっかくの海外旅行に出発前からリスクを考え緊張するのは避けたいですが、もしもの場合の対処法を知り、準備をしておくことでもしもの時の安心感が大きく違います。外務省のHPにある「世界の医療事情」などで現地の医療事情をチェックしながら、必要に応じた準備をしていってくださいね。
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この記事のライター

續恵美子

ァイナンシャルプランナー(CFP®)
夢や希望を持ちながらも、一歩を踏み出せない――お金の知識を教えることで、そんな女性が一歩踏み出す支援をしたいという想いとともに、ファイナンシャルプランナーとして活動。
プライベートでは南仏移住して10年以上。仕事・家庭・自分の人生を活き活き送る、多くのフランス人女性から学んだことを日々の活動に実践している。

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