ふるさと納税ワンストップ特例の申告期限切れで、確定申告することに……ならば他の控除も申請しなさい

2020年2月3日更新

サラリーマンであれば、「確定申告」をしたことがないという人も多いだろう。毎月の給与から源泉徴収されていて、年末調整でいくばくかの還付を受けるだけ。つまり、確定申告の知識は不要なのがサラリーマンだ。ところが、最近はそうも言っていられない局面もあるようで…。創立17年のお金の学校「ファイナンシャルアカデミー」の講師・山本麗子先生がサラリーマンの確定申告について解説する。

ふるさと納税のワンストップ特例の申告期限に間に合わなかった!

読者代表:吉田正史さん(仮名・53歳)
新卒で入った中小企業で営業として勤続31年。高校生の長女と中学生の長男を育てる2児の父。年収は650万円で、マイホームは35歳の時に35年ローンで購入し絶賛返済中だ。目下の不安は退職後のお金のやりくりだが、お金に関する知識はやや不足気味。山本先生の教えでNISAやふるさと納税にチャレンジ中だ。
吉田さん:山本先生、年末、かけこみでふるさと納税をやってみたんですよ。ふるさと納税のサイトを覗いて、シミュレーションしたんですよね。
山本先生:年収を入れて、寄付金控除になる上限金額を調べたわけですね。
吉田さん:はい、ざっくり言うと私は650万円の年収で、配偶者子どもありでシミュレーションしまして、6万円が寄付の上限でした。
山本先生:源泉徴収票をもとに入力すると正確にシミュレーションできますよ。6万円分だと、2万円の寄付が3回分できますね。何を選んだんですか?
吉田さん:カニと、山形牛と米です! 昨日ちょうどカニが届きました。
山本先生:必ず消費するものと贅沢食品の組合わせですね。年末ボーナスの少なさを嘆いていらっしゃったけど、ふるさと納税でちょっと豪遊気分を味わえたんじゃないですか?
吉田さん:はい、返礼品を選ぶのはけっこう楽しかったです。でも、困ったことになって今日はそのご相談です。
山本先生:どうしました?
吉田さん:確定申告はめんどうなので、ワンストップ特例制度を使おうと思ったんですよね。
山本先生:はいはい。ワンストップ特例は確定申告をする必要がない人で、かつ、寄付先が5自治体以下と条件が決まっています。吉田さんは、副業などの収入はありませんか?
吉田さん:ありませんよ〜。そうか、副業をしている人は確定申告もするんですね。
山本先生:給与以外で年間20万円を超える収入がある場合は確定申告が必要です。源泉徴収されていれば不要なんですけどね。それで、なにが問題なんですか?
吉田さん:ふるさと納税の申込みを12月31日のギリギリにしたんですよ。それはよかったんですけど、自治体から、ワンストップ特例申し込み用紙が送られてくるのを待ってたら……。
山本先生:あぁっ!わかりました。ワンストップ特例申込み期限に間に合わなかったんですね!
吉田さん:そうなんですよ〜〜。ワンストップ特例申込みが1月10日で締め切りなんて知らなかったんですよ。それで、ぼーっとしてたら、1月10日を過ぎてしまいまして。
山本先生:ふるさと納税ポータルサイトでは、ふるさと納税の申込み期限以外に、ワンストップ特例制度の提出期限も丁寧に注意喚起をしてましたよ。
吉田さん:年末年始は役所が休みだから、作業が年明けなんですね。今年は6日ぐらいから仕事はじめだったでしょう。10日なんて間に合わないですよ。でも、ふるさと納税を大晦日に駆け込みでやる人はぜったい多いと思うんですよ!

山本先生:怒っても後の祭りですね。
吉田さん:ワンストップ特例の締め切りを過ぎてしまったら、確定申告しなきゃだめですかね…。
山本先生:だめではありませんけど、確定申告をしないと明らかに損をしますね。確定申告をすれば、税金の控除を受けられますので実質負担額は2,000円ですみます。でも、ワンストップ特例も使わず、確定申告もしなければ、寄付した60,000円が自腹ということに…。住民税の場合、詳しい計算式はこんな感じです。
[1] 住民税からの控除(基本分) = (ふるさと納税の寄附金額 - 2,000円)× 10%
寄附上限額から実質負担額の2,000円を差し引いた5万8,000円を寄附すると、住民税から5,800円が控除されます。
[2] 住民税からの控除(特例分)※1 = (ふるさと納税の寄附金額 - 2,000円)×(90%-所得税率×1.021)※2
住民税からの控除特例分が住民税所得割額の2割を超えない場合は上記の計算式です。
[1]と同様に実質負担額の2,000円を差し引いた5万8,000円を寄附すると、住民税から約4万6,200円が控除されます。
吉田さん:ええっ! ただ高い肉やカニを買った人になっちゃいますね。。。
山本先生:その地域に寄付したいという純粋な気持ちだったら、損ではないですが、返礼品目だけが当てだったとしたら、残念ですよね。2,000円でカニ・高級和牛・米が買えたらすごくお得ですが、60,000円で買ったかと思うと、ちょっと…。
吉田さん:確定申告します!

確定申告をしなければいけない人・したほうがお得な人

吉田さん:サラリーマンでも、確定申告したほうがいい人ってほかにどんな人がいるんですか?
山本先生:そうですね、まずはサラリーマンでも「確定申告しなければならない人」について整理しましょうね。
吉田さん:副業や投資で儲けてる人ですよね。
山本先生:そうですね、給与所得以外の「所得」が年間20万円を超える人は確定申告して納税しなければいけません。でも、株式投資の取引口座が「特定口座・源泉徴収あり」であれば、20万円を超える利益が出ていても確定申告しなくても大丈夫です。脱税になってしまいますからね。まとめると、サラリーマンでも確定申告しなければならない人はこんな人です。
・給与収入が2,000万円を超える人
・給与所得以外の所得が20万円を超える人
・2箇所以上から給与の支払いを受けている人で、主たる給与以外の合計所得金額が20万円を超える人
吉田さん:私関係ないですね。お金に縁がないんですね〜…。
山本先生:では、次は「確定申告をしたほうがいい人」についてまとめますね。確定申告をしたほうがいい人は、つまり、「税金を払いすぎている人」とも言えます。
・医療費が10万円を越える人(家族分を含む)
・年末調整で保険料控除の申請を忘れた
・書籍代・スーツ代などの支出が家計を圧迫している
・住宅ローン控除を受けたい(1年目のみ申請が必要)
・ふるさと納税でワンストップ特例制度を使っていない
・株・投資信託・FXのすべての取引口座で「損」を出した
・株・投資信託・FXの一部の取引口座で「損」を出した
・株・投資信託・FXの一部の取引口座で「損」を過去に確定申告した

医療費控除では、インフルエンザ予防接種は対象外!


吉田さん:医療費控除って、病院代とかですか?
山本先生:そうです。1/1〜12/31までの1年間で医療費が10万円を超えてかかった場合は確定申告をすれば、控除がうけられます。上限は200万円とされています。本人だけでなく家族の分も合算できまよ。市販のお薬もOKです。
吉田さん:じゃあ、薬局で買った冷えピタもいけますか?
山本先生:大丈夫です。でも、マスクは微妙かな〜。
吉田さん:えぇ?なぜですか?
山本先生:うーん、基本的に予防のためはだめなんですよね。サプリなんかもそうですね。「体壊してお金かかってかわいそうだったね」ということだと理解していただければわかりやすいでしょうか。マスクは、厳密にいうと、予防のためだと対象外ですが、治療のためならOKです。
吉田さん:ということは、人間ドックも? インフルエンザ予防接種もだめですか?
山本先生:インフルエンザ予防接種は対象外です。人間ドックで疾病がみつかって治療に入った場合は控除対象ですが、なにもみつからなければ予防となるため対象外です。
吉田さん:なるほど〜。
山本先生:あとは、治療費の他に通院のための交通費も対象です。たとえば、タクシーを使ったとしたらレシートをとっておいてください。でも、ガソリン代と駐車料代はだめなんですよ〜。
吉田さん:ちなみに加入している医療保険などで、給付金が出た場合はどうなります?
山本先生:給付金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きます。引ききれなかったとしても、他の医療費からは差し引きません。
吉田さん:どうせ確定申告しなきゃいけないなら、医療費控除もやってみますよ。

確定申告の準備は11月が理想の理由

吉田さん:上に書いてある「書籍代・スーツ代」も申告するとお得なんですか?
山本先生:これは、ざっくりいうと、仕事に必要な資格取得費用や書籍代、セミナー代、スーツ代、交通費などを自己負担している場合で、目安は所得の20%ぐらいになってしまったら、と考えてください。
吉田さん:さすがにそこまで勉強熱心じゃないですね…!
山本先生:あとは、投資で損をした場合。株式取引口座を仮設したときに「特定口座・源泉徴収あり」という口座を選択した人は源泉徴収されていますから、基本的に申告義務はありません。
吉田さん:確定申告をしなくていいのは、楽ですね。
山本先生:そうですね。ただし、損をした場合は確定申告をした方がお得ですよ!
吉田さん:でも、書類や手続きがめんどくさそうですね〜
山本先生:e-taxといって、窓口にわざわざ行かなくてもオンライン申告できるんですよ。
吉田さん:うーん、ひとりでできるかな。少し自信がないのですが…。
山本先生:税務署は納税者にはすごく優しいんですよ。無料のセミナーもありますし、電話でも丁寧に答えてくれますし、直接窓口にいけば、なお確実です。
吉田さん:そうですね、とりあえず、オンラインでやってみます。
山本先生:確定申告をするのなら、本来は11月に準備するのがよいですよ。1月から12月までの申告なので、12月に駆け込み調整ができるんです。例えば、あと少しで医療費控除が受けられる!とか、ちょっとした調整ができるじゃないですか。
吉田さん:お金が貯まる人はマメですね!
〈今月の学び〉
・ワンストップ特例の申告期限を過ぎたら確定申告をしよう
・10万円以上医療費がかかっていたら、医療費控除も申請しよう
・確定申告の準備は11月に
ゼロから分かる確定申告セミナー
ファイナンシャルアカデミー
お金の教養を身につけるための総合マネースクールとして2002年に創立。東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて17年間で延べ約50万人が、貯蓄や家計管理といった身近なお金から、資産運用などを学んでいます。投資やマネープランニングのエッセンスが学べる無料セミナー「お金の教養Plus」を随時開催中のほか、確定申告セミナーもオンライン受講できる。

この記事のライター

山本麗子

ファイナンシャルアカデミー認定講師・ファイナンシャルプランナー・企業年金総合プランナー。FP事務所に勤務後、より多くの人に「お金の教養」の大切さを伝えるためファイナンシャルアカデミーに入社。講師として、企業・個人・女性向けなど様々な講演を行うほか、幅広い層に対する家計コンサルも行う家計改善、金融経済教育のプロフェッショナル。

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