国は少子化対策として、児童手当や学費の無償化制度などを実施し、子育て費用の軽減を推し進めていますが、それぞれの制度には所得制限があるもの、ないものさまざまです。そこで、所得制限があるものについて、ボーダーラインとなる年収を確認しておきましょう。
児童手当の所得制限
児童手当は中学校卒業までの児童を養育している人に支給されます。
支給額は3歳未満は一律1万5,000円、3歳以上小学生までは1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学生は一律1万円となっています。
児童手当は2012年6月から所得制限が設けられました。
扶養親族等の数によって、所得制限となる限度額が変わります。扶養親族等とは、税法上の同一生計配偶者と扶養親族のことを指し、たとえば、専業主婦と子供2人の場合は、扶養親族は3人となります。
出典:児童手当制度のご案内: 子ども・子育て本部 – 内閣府
扶養親族が3人の場合は年収960万円がボーダーラインとなります。
ただし、この所得制限限度額を超えた場合でも、特例給付として児童1人につき一律5,000円が支給されます。
児童手当の次にやってくるのが、幼児教育・保育の無償化(3~5歳児)ですが、こちらは所得制限はありません。(0~2歳児については、住民税非課税世帯のみ無償化の対象となります)
高校授業料無償化の所得制限
2010年に始まった高校授業料無償化は2014年に所得制限が加わり、名称も「高等学校等就学支援金制度」となりました。
公立高校、私立高校を問わず、高等学校等に通う所得要件を満たす世帯に就学支援金を支給する制度です。たとえば公立高校(全日制)に通う生徒の場合、月額9,900円、年間で11万8,800円が支給され、これによって授業料が不徴収となります。
所得要件は、モデル世帯として、両親のうちどちらか一方が働き、高校生一人(16歳以上)、中学生一人の子供がいる世帯で、年収約910万円未満であれば支給されます。
正確には、保護者の市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額が50万7,000円未満の世帯が対象となります。
この市町村民税所得割額や道府県民税所得割額は毎年6月に発行される市民税・県民税納税通知書で確認できます。会社員の方は勤務先から配付される住民税の決定通知書で確認ができます。
この就学支援金は、さらに一定所得以下(※)の世帯には加算支給があります。
※市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額が25万7,500円未満の世帯
私立高校の場合は授業料が高いため、それを補うためです。
年収の目安としては、350万円~590万円程度の世帯は1.5倍の加算となり年額17万8,200円、270万円~350万円程度の世帯は2倍の加算となり年額23万7,600円、270万円未満の世帯(非課税世帯)は2.5倍の加算となり年額29万7,000円が支給されます。
それでも、東京都の場合、私立高校の授業料の平均は44万9,000円となっており、授業料無償化とはなりません。
そこで、各都道府県ごとに、授業料軽減助成金などを出すことで、無償化を実現しています。
出典:都道府県別私立高校生への授業料等支援制度|文部科学省
この都道府県による支援は、東京都の場合、所得要件が年収目安で760万円未満が対象となっています。この760万円のボーダーラインはとても大きく、超えるか超えないかで33万円ほど差がつきます。
大学無償化の所得制限
2020年4月から高等教育の修学支援新制度が始まります。対象となるのは住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生となっています。
今までは、子供を養育する人に支給されましたが、この制度は高等教育を受ける本人に支給されます。
出典:高等教育の修学支援新制度について|文部科学省
年収の目安は非課税世帯が約270万円以下となり、給付型奨学金と授業料等減免を満額受けられるとすると、約270万円~300万円世帯が満額の2/3、約300万円~380万円世帯が満額の1/3となります。
この他に、資産基準もあります。資産(※)の合計が2,000万円未満(生計維持者が2人いる世帯)、あるいは1,250万円未満(生計維持者が1人の世帯)が対象となります。
※資産とは現金およびこれに準ずるものとされ、預貯金や有価証券などが該当し、不動産は含みません。
高等教育の修学支援新制度は低所得世帯を対象としているため、当てはならない場合の方が多いでしょう。
まとめ
子育て費用や教育費は年々増えているのが現状です。国は子どもの養育に関わる支援制度を創設したり、改正するなどして策を講じていますが、子育て世帯すべてを支援対象とはしていません。一部の高所得世帯が外れるのは当然だとしても、所得制限となるボーダーライン付近の層は決して余裕があるわけではないと思います。特に高等学校等就学支援金制度のボーダーラインとなる年収は、層も厚く、どちらに転ぶかで数十万円の支援の差となる場合があるので、気が気ではないでしょう。
教育費にかける割合は年収が上がるほど高くなる傾向があります。教育格差が広がらないためにも、低所得者層に対する支援を厚くするのは当然のことですが、全般的に見ても子供を持つ世帯の負担は重くなっています。中間所得層が割を食うことがないような支援策を期待したいものです。