「老後は2,000万円必要」金融庁報告書の波紋を新聞記者が解説

2019年6月13日

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ新聞記者、はるちゃんです。

金融庁がまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」に批判が相次ぎました。この報告書は、かみ砕いて一言で言えば、「老後に向けてもっと自助努力し、貯金や資産運用しましょう」という内容です。ごくごく当たり前の指摘ですが、報告書案には「年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい」などという記述もあり、ネットで炎上しました。

報告書は、最初に「まさに『人生100年時代』を迎えようとしていることが統計からも確認できる」などと日本の長寿化を指摘しています。さらに、単身世帯の増加や認知症の人の増加など日本の高齢社会の現状を列挙した上で、就労や退職金支給など「収入・支出の状況」をまとめています。

これらの現状分析の結果、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる」と試算。この不足額を補うため、NISAiDeCoで資産運用するなど自助努力を図りましょう、というのがざっくりとした報告書の概要です。

年金給付水準「今までと同等を期待するのは難しい」

概要だけを見れば、ごくごく当たり前の提言とも言えますが、5月に発表された報告書案は年金給付水準について、「今までと同等のものであると期待することは難しい」などと記載しており、大きな批判をわき起こりました。

年金制度が揺らいでいるのは、将来を見越した対応を取れなかった国の責任です。その責任を無視して、この言いぐさはありませんよね。一生懸命働いて年金を納めている人(私自身もその一人です)からすれば、「わかっちゃいるけど、あなた(国)には言われたくない」と思うのは当然です。批判的な声を受け、金融庁は「難しい」と記載した当該部分を削除し、成案としました。報道によると、金融庁は「今回は年金制度を議論してきたわけでない」などと説明しているようです。

まるで人ごとの文面残る 全省庁で年金制度の立て直しを

しかし、成案には、まるで人ごとのような文面も残っています。「公的年金の水準については、中長期的に実質的な低下が見込まれているとともに、税・保険料の負担も年々増加しており、少子高齢化を踏まえると、今後もこの傾向は一層強まることが見込まれる」。年金の水準が低下するならば、年金行政を司る厚生労働省だけでなく、全省庁一丸となって年金制度の立て直しを図ってほしいと、誰しも思うでしょう。

日銀の資金循環統計よると、2018年末時点の個人(家計)が保有する金融資産の残高は1,830兆円。株式や投資信託の時価評価額が目減りし、2008年以来10年ぶりに前年末を下回りました。このうち984兆円の現預金は増加し続けています。つまり、多くの国民は、国に言われなくても、一生懸命に貯金イコール将来不安への対策をしている状況なのです。

1,000兆円を超える国の借金も、「個人の金融資産があるから大丈夫」という楽観論もあります。仮に大丈夫だったとしても、国が借金を積み上げた責任はどうなるのでしょうか。今回の報告書も同じです。最終的な負担や責任を一人一人の国民に押しつける、無責任な役所の体質を如実に表しているように思います。

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この記事のライター

はるちゃん

ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格を持つ新聞記者。暮らしや投資のほか、教育やデジタル関係にも精通している。

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