子どもが医学部進学を志した場合、必ず論点となるのが「進学先は国公立か、私立か」です。なぜなら、国立大学の医学部に進学できれば初年度納入金は817,800円で済むのに対し、私立だと最も安くても4,600,000円と、5倍以上のお金がかかるからです(奨学生を除く)。
しかし、近年ここに新たな選択肢が加わりました。「ハンガリー国立大学医学部」です。1期生が帰国後、初めて日本の医師国家試験に合格したのは2014年、平成31年の試験では、帰国生25名中17名が合格し、日本での医師免許を取得したというのです。
ハンガリーは、ノーベル賞受賞者の人口における割合が世界一という教育水準の高い国。ハンガリーで医学部を卒業するのは、日本の場合とどれくらい違うのでしょうか。
日本の国公立大学医学部の学費は?
国立大学医学部の学費は、下図の通り、公立大学医学部とほぼ同額です(非住民の場合、公立大学の入学金はかなり高くなることも)。学費が更に安い防衛医科大学校という選択もありますが、それも含めても国公立医学部は国内に50しかありません。現在、これらの半数は、東大理Ⅰより偏差値が高くなっています。
河合塾「医進塾」の資料を基に作表
日本の私立大学医学部の学費は?
一口に私立と言っても、私立大学の医学部の学費には大きな開きがあります。私立医学部31校のうち、初年度費用において最高額、最低額を示した2校を、下表で比べてみました。すると、6年間の総費用は2倍以上の開きがありました。ここに合格までの予備校代も加わるため、「私立医学部には開業医の子でないと入れない」といわれるのも納得です。
一方で、国際医療福祉大学のように成績優秀者への給付金制度を設ける私立医学部も多くあります。慶応義塾大学も、一般入学試験の上位者10名程に4年間で計800万円を給付しています。
河合塾「医進塾」の資料を基に作表
ハンガリー国立大学医学部の学費は?
では、ハンガリー国立大学医学部への進学は、いくらかかるのでしょうか。
日本人の場合、大抵「予備コース」という、本科生に合格するために1年以上英語と自然科学を学ぶコースに入学します。もちろん、英検準一級ほどの英語力と自然科学の高い学力があれば、本科生になれる場合もあります。
本科生になっても、学費は生活費と合算で年間300万円程度。これは私立医学部の年間の学費より明らかに安いのです。
ハンガリー国立大学医学部ホームページの資料を基に作表
気になるのは「日本で医師になれるのか」でしょう。まず、ハンガリーの医師の免許は、EU28か国で自動的に認定され、他国では以下のように認定されます。
冒頭で紹介したように、帰国生の国家試験合格者は増えています。つまり、日本で医師免許を取れたら、彼らは日本・EU・イスラエル、ギリシャ、インド等で国際医師として活躍できるのです。
ただ、6年間で卒業できるのは半数程度だという事実には触れておきます。予備コースから留学生として入るのは容易ですが、進級や卒業はとても厳しいのです。授業はすべて英語で、試験がとにかく多く、週末も返上で毎日12時間以上勉強する学生もいるほどです。
また、予備コースと帰国後の国家試験合格までを合わせると、日本で医師免許を取るまで最短でも8年はかかります。
しかし、子どもの資質や経済的条件からよく検討する必要がありますが、これが医師になるための最適の道である場合もあるでしょう。
参照:河合塾「医進塾」
ハンガリー国立大学医学部「募集要項」
医学部受験マニュアル「ペーチ大学医学部」
東洋経済オンライン「医師を志す若者がハンガリーに進学する理由」
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