国民年金の被保険者にはいくつかの区分があります。その中のひとつに専業主婦(主夫)の年金、いわゆる第3号被保険者というものがあります。
第3号被保険者は、法律上、国民年金保険料を支払わなくてよいことになっています。しかし、年の差夫婦の中には専業主婦(主夫)が60歳になる前に3号の権利がなくなってしまうケースもあるのです。3号の権利がなくなれば当然保険料の支払いも発生します。
どうしてそのようになってしまうのか? 本文で解説いたします。
まずは第3号被保険者のおさらいをしてみましょう
「20歳になったら国民年金」のようなフレーズを耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。日本の公的年金制度では原則として20歳以上60歳未満の全国民が加入する国民年金がベースにあり、原則として第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に分類されることになっています。
ざっくり言うと、会社員や公務員の方は第2号被保険者、第2号の方に扶養されている配偶者は第3号被保険者になります。
なお、第3号被保険者の方は国民年金保険料の納付は必要ありません。現在の法律でそう決まっているからです。仮に20歳から60歳まで第3号被保険者でありつづけた場合、国民年金保険料を1円たりとも支払わずに、65歳から老齢年金(老齢基礎年金)が77万9300円もらえることになります(平成29年度の金額)。
また、よくあるご質問で「ずっと前から専業主婦だったのに、なぜ1986年(昭和61年)4月からしか3号の期間が入ってないの? 記録が間違っているんじゃないの? 」というものがあります。
実はこちらも法律がからんでいます。第3号被保険者制度が始まったのは1986年4月1日からです。ですので、1986年4月より前から専業主婦(主夫)だった場合でも、そもそも第3号被保険者というものがなかった時代なので、3号の記録が入っていないのです。
第3号被保険者の権利がなくなる? 3号制度の落とし穴
お話しをわかりやすくするために、夫は年上の会社員、妻は年下の専業主婦とします。
夫の年齢と生年月日 55歳 1962年11月3日生まれ
妻の年齢と生年月日 48歳 1969年7月10日生まれ
とします。
このパターンだと、妻が第3号被保険者でいられるのは最長でも58歳と3カ月目までなのです。どうしてなのでしょうか? ちょっと複雑ですが理由は以下のようになります。
第3号被保険者は第2号被保険者に扶養されている配偶者です。そして、こちらはあまり知られていませんが、第2号被保険者は65歳までの会社員や公務員の方なのです。
つまり、夫が65歳以降も会社員や公務員であったとしても、国民年金の第2号被保険者から制度上外れてしまうのです(厚生年金保険料や健康保険料の支払いは続きます)。
結果、妻は第2号被保険者から外れた夫の扶養者になるので、国民年金の第3号被保険者から外れてしまいます。第3号被保険者から外れた60歳未満の妻は、第1号被保険者の切り替えの手続きと60歳になるまで国民年金保険料の支払いが必要になってしまいます。
※補足)原則、第2号被保険者になれるのは最長でも65歳の誕生日の前日の前月まで。上記の夫の例でいうと、65歳の誕生日の前日は2027年11月2日。その前月は2027年10月。つまり、妻が第3号被保険者でいられるのは最長でも2027年10月までとなる(夫が受給資格期間を満たしている場合)。
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第1号の切り替えの手続きや支払いは忘れずにしましょう
第3号被保険者から第1号被保険者に切り替える手続きや相談は、配偶者の65歳の誕生日を迎えた後で問題ありません。手続きや相談は、市区町村役場の年金課または住所地の年金事務所の国民年金課になります。手続きや相談に行く前には必ず電話で必要なものを確認するようにしましょう。身分証明書は写真がないものは2点必要だったり、本人以外の方が手続きや相談に行くと委任状が必要だったりします。
電話では以下のように言うとよいでしょう。「もうすぐ夫の私が65歳になります。妻は60歳前なので、国民年金の第3号から第1号の切り替えの手続きが必要だと聞きました。手続きや相談の際に必要なものを教えてください。当日は夫婦で行くつもりです」など。
なお、仮に配偶者の第1号被保険者の手続きをすっかり忘れていた場合でも、日本年金機構から通知(勧奨状)が届くことになっています。今回のお話しのように、年の差夫婦の中には将来国民年金保険料を支払うことになってしまうケースが見受けられます。平成29年度の国民年金保険料は月額1万6490円と決して安くはない金額です。実際の相談現場でも「えっ? 支払いが発生してしまう? この年で出費がかさむのは大変だなぁ…」と言われることが多いです。
年の差夫婦中には、将来思いもよらない出費が発生してしまうこともある、ということを知っておいていただきたいと思います。
なお、国民年金保険料はまとめて先に支払うことで割引になる制度があります。次回、国民年金保険料をお得に納付する方法をご紹介する予定です。